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自分でできるマーケティング入門ファンを大事にできない人の3つの共通点とは?

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「売上げのためには新規顧客の獲得が必要」は本当か?顧客管理の専門家・室橋健が教える、たった1枚のメモからはじめる「魔法の顧客管理術」。

プロフィール

外資系IT企業のデジタルマーケティングマネージャー室橋健

顧客関係管理の外資系IT企業でマーケティングマネージャー。

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一番大事なファンを大事にできない3つの理由

「最も重要なファンについて教えてください」という質問に答えられない理由は意外とシンプルです。

第1:顧客情報をそもそも管理できていない

2022年2月に発表された「日本の営業に関する意識・実態調査2022」(HubSpotJapan株式会社調べ)によれば、日本の企業のうち34.8%しか顧客関係管理のためのシステムを導入していません。言い換えれば日本の企業のうち約3社に2社は、どんな顧客が何をしているかわからないままビジネスをしているということです。同調査では米国では従業員10名以上の企業の91%が導入していると記載があるため、日本のビジネスにおける大きな課題であると言えます。

第2:新規顧客の獲得が売上増と思い込んでいる

人口が増加を続けていた日本において、新規顧客獲得は相性が良い取り組みだったと言えます。

しかし、2004年12月に日本の人口は1億2,784万人でピークを迎え、2040年には1億1,092人にまで減少。2050年代には1億人を下回ることが予想されているのです。

この「超人口減少時代」において新規顧客獲得は熾烈なお客様の奪い合いになるため、豊富な資金をもつ大企業以外の中小企業ビジネスにおいて、今までのように新規顧客獲得に重きを置いたビジネス推進は通用しなくなるでしょう。

第3:顧客には平等という幻想を捨てられない。

「お客様は神様です」という標語に代表されるように、お客さん全員に全身全霊を尽くすというのが日本の美徳になっていることはであることは自明だと思います。

しかし、中国と英国という「不平等」が当たり前な2カ国に留学した著者は、ファンやお金を支払う顧客に対しての手厚いサービスとえこひいきをこれでもかと思い知りました。

例えば日本の新幹線は自由席、普通席、グリーン車の3段階ですべて「それなりに快適」なクラス分けしかありません。しかし中国は、お金を支払えばフルフラットになる商務座(ビジネスクラス)の新幹線から、スピードが時速120km程度しか出ない古びた電車の硬座(インズオ)と呼ばれるスプリング無しの硬い椅子にギュウギュウになって我慢して十数時間乗り続ける最低のクラスまであり、えこひいきのレベルが違います。

そして、今後この「不平等 = えこひいき」は加速します。日本でも高田靖久氏の著書『お客様は「えこひいき」しなさい!』には、東京ディズニーランドやNTTドコモ、百貨店など「えこひいき」をするビジネスがうまくいく法則を、豊富な事例と共に紹介されています。

「えこひいき」の文字だけ見ると感じが悪いですが、もし皆さんが総額100万円を利用したことのある大好きなサービス・製品のブランドの企業に、1万円しか支払っていないお客と同じ扱いをされたら「えっ…」と思うのは当然ではないでしょうか。

「一番大切なお客様」を放置している方へ

自身のビジネスをする上で「一番大切なお客様=最重要な1人のファン」を放置することは、既にすでに持っているダイヤモンドの原石を磨くことをせずに、ダイヤが埋まっているかわからない場所をやみくもに掘ることに等しい行為です。

漫画と対談でファンベースの実践ポイントを解説している『ファンベースなひとたち』でも、これからは「ファンを大切にする時代」であると断言。

今、頻繁に買ってくださっている方に注目してもっと喜んでいただくことでLTV (顧客生涯価値) がアップし、売上が上がり、類友に宣伝し新規顧客を読んできてくれることを強調されています。

この連載では、今日からできる顧客管理の具体的なメソッドをお伝えしたいと思います。

プライベートで一番大切な人に関して3つのステップでメモをとり、そして同じ手法をビジネスに当てはめて1人の最重要顧客 (皆さんのファン) について知る実践方法をお伝えします。

この手法により、「一番大切なお客様」の重要性を再認識し、皆さんの売上が増え、ビジネスの成長が加速するヒントになれば幸いです。

「魔法の顧客管理」まとめ

大事なファンをスルーしてしまう原因はコレ。

顧客情報をそもそも管理できていない

新規顧客の獲得が売上増と思い込んでいる

顧客には平等という幻想を捨てられない

次号に続く。

写真/shutterstock

この記事を書いた人

室橋健
室橋健
顧客関係管理の外資系IT企業でマーケティングマネージャー。慶応義塾大学卒業後、リクルートとベンチャー企業でデジタルマーケティングの仕事の従事。2011年から1年間、中国・北京の清華大学に留学。ホテル暮らしで日本全国を移動しながらフルリモート勤務を続けていたが、2022年春より京都の町家に定住。顧客管理のメモ理論を実践している。

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