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セルフブランディング

価格競争に巻き込まれないための、起業家1年目の「やってはいけないブランディング」「やるべきブランディング」

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フリーランスや個人事業主を含む「ひとり社長」こそ、ブランディングが必要。お客様を増やし、単価を適正に上げられるなど、そのメリットははかり知れません。ブランディングのはじめの一歩ですべきことを、コンサルタント、小澤歩さんにうかがいました。

起業、独立してから気づく失敗に「ブランディング」があります。起業前、独立前は資金やサービス内容のことで手一杯という人は多い。事業や売り上げに直結しないように思えるブランディングまで気が回らないのは仕方のないことですが、これがあとあと命取りになると、ブランディングコンサルタントの小澤歩さんは語ります。そんな小澤歩さん自身、かつてデザイナーとして独立した時に価格競争に巻き込まれて悩む日々だったそうです。打開策として、「向こうから選んでくれるブランディングづくり」を研究。これによって優良な顧客が集まり、単価を10倍以上にすることに成功したといいます。現在では企業へのブランディングや販促のコンサルタントとして、『単価を上げても選ばれ続ける ひとり社長ブランディング』(日本実業出版社)も出版。そんな小澤さんに、起業1年目でやるべきブランディングについて聞きました。

【写真】『単価を上げても選ばれ続ける ひとり社長ブランディング』(小澤歩)

何はなくとも最初に「理念」を掲げる

― ひとり社長として起業してから、ブランディングとして最初にすべきことは何でしょうか?

自分がその仕事をしている「理由」が、自分が動くためのエネルギーになります。その理由は、ほかの人にも納得しもらえるのが大事です。なぜなら、「儲かるからやっているでしょ」「ノリで独立しちゃったんじゃないの」というふうに見られると、軽んじられる可能性が大きいからです。だから、最初に外部に見せる「理念」をつくってください。

大きな企業だと、企業理念があって、ミッション、ビジョン、バリューとかありますが、そこまで大掛かりに考える必要はありません。ひとり社長としてあなたの理念が、1つあれば大丈夫です。例えば、「デザインで多くの人に幸せを届けたいと」いったシンプルなもので構いません。

「○○を売ります」から「○○ができるようになります」

― 理念をつくった後、ブランディングのセカンドステップとして何をすべきでしょうか?

あなたが、お客様に何を提供できるのかを決めてください。提供すると言っても、商品とかサービスではありません。自社の商品とかサービスを利用したら、お客様にとってどんないいことがあるかということを、まず考えます。

分かりやすい例を挙げましょう。あなたが運営するのが整体院であれば、「施術を提供します」となるでしょう。ですが、前面に出すのは「施術」そのものではなくて、「コリがとれて快適な生活ができます」「痛みが引いて孫を抱っこできます」というふうにします。お金を払って、商品・サービスをいただいて、その結果として得られることを提供すると意識を変えていく必要があります。そして、そのことをお客様にアピールしなくてはいけません。

デザイン会社のひとり社長であった頃の私の例ですと、「デザインを売ります」から転じて、「会社の売り上げが上がります」「社員の意識が高まります」「企業価値が向上します」と伝えるようにしました。効果を明確にするのもブランディングです。

人は、モノを欲しいわけではないのです。なのに、モノを売ってしまうと、別にそれが欲しいわけではないお客様は、「安かったら買うか…」という心理になりやすいのですね。価格競争になる理由の多くはここにあります。

SNSは「この人だから頼む」と思わせる

― ひとり社長にとって、SNSの活用は必須と思いますが、秘訣はあるでしょうか。

SNSは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略語ですが、ソーシャル=社会で、必ず受け手がいるという意識を持ってください。

価値を提供するのが大事と言っても、何もない段階からいきなりお客様に価値を感じてもらうのは難しいです。そこでSNSの出番となります。自分のことをよく知ってもらう、ひとまず交流するのが最初の段階になります。お客様になる前の関係性を作っていくために、SNSは活用できます。

では、SNSでどのような投稿をしたらいいかですが、一つには、親しみを持たれるような内容を心がけます。そして、信頼しているフォロワーさんたちに引用できる投稿を目指しましょう。自分は、どのような仕事をしているかというPR的なことも、継続的に投稿し続けます。

お客様目線では、ひとり社長が大企業と違うのは、「この人だから頼む」という意識が大きいのです。1人でやっている強みはそこです。だから、どんな体験をしたかも発信しましょう。それは、何を読んだとか、どこへ行ったといったものでかまいません。私の場合、食べ歩き体験も発信しています。お客様に、ざっくばらんに話せる人との印象を持ってほしいなら、これもありなのです。もちろん、それだけだとプライベートすぎるSNSアカウントになってしまいますので、何回かに1度の適度な割合にとどめます。

発信を習慣づけると、「こういう困ったことを解決してくれる人といえば、誰々さん」という、認識が深まっていきます。こうして新規のお客様が増えていきます。

NGなのは、誰かを批判するといったネガティブな内容の投稿です。SNSをビジネスの場として活用するからには、ネガティブな投稿はすべきではありません。

現在や将来のお客様が、フォロワーになってくれるのは当然ながら大事です。ですが、購入してくれるわけではない、同業の人がフォロワーになるのが、無意味というわけではありません。

やはり情報交換なども必要になってくるので、そうした方々がフォロワーになってくれるのは好ましいことです。同業でもビジネス・スタイルが全く違う人を見て、「こういう仕事のやり方があるんだ」といった気づきを得られます。また、同業でない人たちが自分のフォロワーを見ることで、「このような仕事の人なのかな」と認識されるメリットもあります。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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