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年収100万円以下がほとんど? 女性起業家が「学芸会ビジネス」から抜け出す方法とは?

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自己実現はできても収益化ができないひとり起業家が、稼げる体質へと脱皮するための方法を「脱学芸会ビジネス」を提唱する人気のWebマーケティングコンサルタントの増田恵美さんにうかがいました。

最近、女性が講師、ハンドメイドなど好きや得意を活かして起業するケースが増えてきています。しかしスモールビジネスを立ち上げた人の多くは、収益が伸び悩んでいます。稼げる体質へと脱皮するためには、どうすればいいのでしょうか。人気Webマーケティングコンサルタントで『ひとりビジネス・スモールビジネスのマーケティングと集客の教科書』(自由国民社)の著書でもある増田恵美さんに話を聞きました。

顧客ターゲット層の中で1人の「ペルソナ」を想定する

起業する女性が増えていますが、大半は年収が100万円に満たない現状が続いています。似た境遇にある起業家のコミュニティ内で買い合う「学芸会ビジネス」となってしまう例も珍しくありません。そうなってしまう原因の多くは、ビジネスの基本的な知識・実践が不足している点にあると、増田さんは指摘します。

― 皆さん商品作りから始めてしまいます。商品ありきで、「私はこれを売りたいです」から始まって、それを買ってくれそうな人を想定します。

でも、それではうまくいかないのです。

まず、想定するのは「ペルソナ」です。ペルソナとは、顧客ターゲット層の中にいる、現実性のある架空の1人のことです。その人が欲しい商品を作らないと売れないのです。

ペルソナが、お金を払ってまで解決したいものを提供しないと、ビジネスにはなりません。

それもフワッとしたものではなくて、「本当に、今困っていることがあります。お金を出してでも、それを解決したいんです」という人に、自分の知識や技術で助けてあげられるかどうか。

そうした切実なニーズのある方をペルソナにします。ぼんやりとした商品イメージはあってもいいのですが、ペルソナによって、その商品は若干変わってくるはずなんですね。

ペルソナを決めることで誰に売るべきかが明確になる

― では、なぜペルソナを設定するのかといえば、その人の行動や心理状態を想像できるようにするためです。

仮に、1人で整体院を経営しているとしましょう。慢性的に身体の不調に悩む高齢者もいれば、部活でぎっくり腰を患った高校生もいますね。

もし、整体院が夕方5時に終わるなら、部活帰りの高校生は来院できないかもしれない。そうすると、ペルソナは高校生ではなくなるでしょう。逆に定年後で仕事をもたない高齢者であれば、そう無理せず来院できますね。

私の相談者さんでも、「ペルソナは会社勤めの女性社員です」と言う方がいましたが、お店は平日の日中しかやってないということがありました。平日の昼間に来店できる人はどんな人なのかを考えましょう。パートや交代でお休みをとれる職業なら大丈夫という話になります。

「SNSの発信は何時がいいですか?」「メルマガは何時に送ったらいいですか?」という質問もよく受けますが、これもペルソナ次第です。お子さんのいる主婦が相手だと、朝や夕方は子どもの世話や家事で忙しくって読んでもらえない。かといって夜10時だと、子どもの寝かしつけをしながら自分も寝てしまうこともあるので、その時間帯にSNSやメルマガは読んでもらえないですよね。

もし、フルタイムで働いている女性がペルソナなら、通勤時間帯やお昼休みにスマートフォンを見る時間が取れると想像できるのではないでしょうか。

ペルソナなしに商品を先に作ると、それを買ってくれる人を無理やり設定して、すごく小さなパイを狙うようになってしまいがち。

だから、ペルソナ設定が大事です。

その人が、朝何時に起きて、どんな生活しているかまで事細かに想像する。

こうしてペルソナが決まったら、SNSやホームページに書く内容で、どんな言葉が響くかなど、迷わなくなります。くれぐれも、自分の商品を買ってくれそうな無理矢理なペルソナを作らないのが重要です。

価格を上げることを恐れない

増田さんは、WEBマーケティングコンサルタントとして開業する前は、子どもを育てながらハンドメイド作家をしていました。価格帯は1つ数千円で、売れたら売れたで家事をするいとまもないほど制作が忙しくなり、かつ利益はほとんど残らない状況だったそうです。こうした、収益がなかなか得られない悩みをもつ起業家は、少なくありません。その課題を、どうやって打開できるのでしょうか?

― 私がハンドメイドを作っていた頃は、安く売りすぎていたのですね。「安ければ喜ばれるだろう。いずれ収益につながるだろう」と思いこんでいました。

かつての私のように、趣味の延長でなくちゃんと稼ぎたい。けれども、稼げないという方はとても多いのです。大半は、価格を上げることを恐れているのが根っこにあります。安売り合戦になってしまって、ハンドメイド業界を衰退させる一因にしています。

まず、「私の技術はこんなに安売りできるものではない」という意識を持たないといけないです。

自分の人件費はゼロではありません。商品を作るのに1時間かかったのであれば、自分の時給1時間を価格に乗せなくてはいけません。

まず考え方を変える必要があります。自分が月にいくら稼ぎたいのか。駆け出し当初は、欲しい金額が、例えば10万円程度でいいと思います。でも、10万円を稼ごうと思っていたら、10万円を稼げないのですよ。30万円を稼ごうと思って10万円がやっとで、50万円稼ごうと思って30万円がやっとのことが多いです。なので、自分が稼ぎたい金額をきちんと設定をして、私の時給はいくらかという計算をして、それをきちんと価格に反映させていくことが大事です。

オンリーワンの商品・サービスを生み出す

価格設定について、こうしたアドバイスをしても、「高かったら売れないではないか。みんなもっと安く売ってるから」と言われることがあります。

そこで、商品のデザインが優れているとか、他にはないオリジナリティがあるといった差別ポイントが必要になってくるのです。

みんなと同じものを並べてるから、安くしか売れないのです。例えば、Aさんしか作ってないオリジナリティのあるものだったら、高くてもAさんから買うしかなくなります。

なので、何を頑張るかと言えば、他の人が作れない、真似できないオンリーワンの商品やサービスを開発することです。やはり、数多く売れている人は、他の人が作ってないようなものを作って、みんながそれ欲しいという気持ちになるから、高くても売れるのですね。

ハンドメイドであれば、定型的な製品をキレイにきちんと作る「職人」ではなく、「アーティスト」になる。目指すのはその境地です。その意識がないと、安い請負い的な仕事から抜け出すのは難しくなります。

まったく別の才能・素質にも目配りをしておく

もう1つ大事な視点は、路線変更の可能性に心を開いておくことです。

お花教室の集客対策でコンサルを受けに来た方が、結果的にはファイナンシャルプランナーとなった例があります。お花教室は世の中にかなりあって、教えたい人はいっぱいます。でも、習いたい人はそんなにいないのです。需要と供給が合っていない分野なんですね。

そこで頑張って集客しようとしていたのですが、何かオリジナリティがあるものをもっと作れませんかという話をしました。彼女は、花にちなんだ新たな商品づくりのため、近所の工場に依頼するなど頑張ったのですが、思うようにいかない。知り合いは買ってくれるけど、なかなかそれ以上に広がりませんでした。

ただその方は、ファイナンシャルプランナーとしての知識・素質に恵まれていました。そこで私は、ファイナンシャルプランナーを仕事にしたらどうかと話しました。彼女はそれに納得して、仕事をそちらに切り替えたところ、まさに適性を発揮して活躍できるようになりました。私自身もそうでしたが、ハンドメイドで起業したいと思っていても、それとは別の方面で人の役に立てるところが見つかることは少なくありません。うまくいかなかったら、あまり凝り固まらず、柔軟に考えることも必要です。

参考までに、今ある不満や不具合ではなく、転ばぬ先の杖的な商品は難しいです。「私が子育て中に、こんなことで困ったからそうならないサービス」や「更年期のときはこんなに大変だったから、更年期に入る前におすすめの商品」みたいなことを考える方は多いです。ですがそうしたものは、本当に意識が高い、ほんの一握りの人しか購入意欲をもたないのです。

一例を挙げましょう。虫歯予防で定期的に歯科検診に来るよう歯医者さんは言いますが、それで行く人は少数派。詰め物が取れたり、虫歯が痛くなってはじめて、歯医者さん行くのが大半。歯科検診のような一部の人向けのスモールビジネスは難しい面があります。


増田恵美

株式会社オフィス凛 代表取締役、WEBマーケティングコンサルタント。

企業研修講師など人と接する仕事での経歴を重ねた後、結婚を機に退職。子育て中に学校のICT支援員として社会復帰し、2012年にハンドメイド作家として起業。マーケティングを学び、2017年よりコンサルティングを始める。2021年2月株式会社オフィス凜を設立。「学芸会で終わらないビジネスを作る」をモットーに、友人同士やコミュニティ内での経済圏にとどまらないビジネスとしての成長啓発を計4,000人以上に行っている。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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