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集客できない人のための「魔法の顧客管理」最高の顧客体験は、顧客情報をメモすることで叶えられる―HUGEグループ、めがね舎ストライク、スナックミー(snaq.me)の事例―

「売上げのためには新規顧客の獲得が必要」は本当か?顧客管理の専門家・室橋健が教える、たった1枚のメモからはじめる「魔法の顧客管理術」。

プロフィール

外資系IT企業のデジタルマーケティングマネージャー室橋健

顧客関係管理の外資系IT企業でマーケティングマネージャー。

99%の場合「お客様はひとりもいない」ということはない。

しかい、意外と目の前のお客様=ファンを素通りしてしまう人は多い。

なぜ、ファンを大事にできないのか? を考えてみたい。

前回の記事はこちら

今回は、ファンの顧客を「メモ」して成功している企業の事例を3つご紹介します。

初めての客をメモすることで、ファンに無駄な手間をかけさせない!

事例のひとつめは株式会社HUGEグループをご紹介します。

HUGEグループは、「その街の、鼓動が集まるレストラン」をコンセプトに、「DAZZLE」「RIGOLETTO」「MODERN MEXICANO」などオリジナルブランドの複数のレストラン店舗を運営しています。東京の丸の内や銀座、横浜を中心に京都・沖縄など国内に29店舗を展開。どのブランドも、おしゃれな内装で、手ごろなお値段でしかも美味しいと評判です。最近では、2022年7月7日から楽天市場にて、化学調味料不使用で、しかもレストラン品質の食事を提供するサービスを開始するなど、新しい事業に果敢に取り組んでいます。

HUGEグループHP(https://www.huge.co.jp/

このグループのレストランは店舗ごとの立地やコンセプトはバラバラですが、グループ全体で1つのシステムを用いて顧客管理をしています。そのため、1度予約すると、グループ内のレストランならばどこでも、2度目の予約の電話からは、着信番号を元に顧客情報が予約受け付けスタッフの画面上に表示される仕組みになっています。スタッフは、表示された名前や現在の予約状況などを見ながら電話対応することになります。

写真/shutterstock

例えば私がグループ内のレストランに2回目以降の予約で電話をすると「もしもし」ではなく「こんにちは室橋さま!」から始まり、日程確認だけでスムーズに予約ができます。「名前は〜で、電話番号は〜」という無駄なやり取りを何度もしなくて済むのです。

写真/shutterstock

また、一人ひとりの顧客情報が記録されているため、アレルギーや嫌いな食材を何度も伝える必要はありません。すべて、顧客メモによって管理されています。

さらに「THE HUGE CLUB」という会員になれば、会員優先のワインテイスティング会や会員限定の試食会へのご招待までついてきます。ファンになればなるほどお得な特典がついてくるのです。

リピート客にとって便利な予約サービスや、豊富な会員特典によって、外食をするならばHUGEグループのレストランにしようとリピートしてもらえる仕組みが整っているのです。

参考:BIZTEL モバイル 導入事例

感動体験で心をわしづかみ!手厚い保障で9年もファンを放さない

事例のふたつめは、MADE IN KOBEの唯一無二のビスポークメガネを提案するめがね舎ストライクをご紹介します。

めがね舎ストライク(https://meganeya-strike.com/)

国内でメガネといえばJINSやZoffなどの低コストで画一的な商品を提供するメガネチェーンが有名ですが、めがね舎ストライクはファンとのつながりを重要視するビスポーク(テーラーメイド*)メガネ屋です。ビスポークメガネを提供するメガネ屋は日本ではかなり少なく、国内でも貴重なメガネチェーンです。*オーダーメイドは和製英語のため、本記事では正しい英語のテーラーメイドの表記としております。

下記のYouTube動画をご覧いただければわかりますが、めがね舎ストライクでは通常のメガネチェーンとは全く違う形でメガネを作ります。

まずは「対話」で顧客のリクエストをヒアリングし、次に「提案」でその人にあったメガネを何種類も提案して試します。その後、まとまったデザインと顧客の顔の写真をベースにデザイナーがサイズ・ディテールを調整する「デザイン・製造」を1〜3ヶ月かけて行い、最後に「フィッティング」で最終調整を行います。

私も2021年に神戸で実際に作成しましたが、自身の「鼻が痛くならない、シンプルだけど知的に見える毎日使えるメガネ」という希望を伝えて顔の輪郭を見てもらった上で「左右のサイズが若干違う」&「長時間かけても鼻が痛くならない」理想の眼鏡を提案いただきました。左右のサイズが違うのは、その方が眼鏡をした際の目の位置が綺麗に見えるからとのこと。このメガネが完成したときはチェーン店の画一的なメガネとのフィット感の違いに感動を覚えました。この感動体験が、ただの顧客からファンに転換する瞬間でした。

写真/本人提供 筆者がオーダーしたメガネ

顧客の顔はデータベースにメモされるため、最適なメガネを2本目、3本目と提供できる仕組みがあります。大手メガネチェーンは度数などしかデータに残らないため他社との差別化になっています。

さらにこちらのお店ではメガネを購入した「ファン」には9年保証がつき、基本的には無料でメガネの調整や修理保証などの手厚いケアを受けることができます。私自身、1、2ヶ月に一度、神戸または京都店に立ち寄ってクリーニングやフレームの位置の微調整等のメンテナンスしてもらっています。単価が5万円以上と高額なため、長く使う方が多く、担当者と対話しながらケアしていく仕組みが整っているのです。

こうしてメガネの調整のために、定期的に客が店舗に訪れることで、ブランド・担当者とのつながりが深まります。細やかなケアによって他ブランドにリプレイスすることも防げます。 神戸、京都、福岡など、西日本中心に店舗展開をしているめがね舎ストライクもファン顧客を「メモ」してつながりを少なくとも9年持てる仕組みができているのです。

写真/本人提供 メガネに付属する保証

メモしたファンへの「えこひいき」で売り上げ向上!

「おやつ体験BOX」をサブスクリプションで届けてくれるサービスのスナックミー(snaq.me)は、100種類ある中から、パーソナライズしたおやつ定期便を送ってくれます。
おやつ定期便では、人工甘味料や着色料などは使わず、素材を活かしたおやつを提供。また、環境負荷の少ない原材料や包材(バイオ素材など)を積極的に利用しています。

わたしの会社の同僚が「最近ハマっている」ということで、実際におすそ分けしてもらっておやつを食べました。パッケージや味の美味しさ、素材のこだわり等が素晴らしかったのですが、それよりもファンを喜ばせる仕組みに驚きます。

スナックミー(snaq.me) HP https://snaq.me/

例えば、スナックミーを一定期間継続することや、マイページでおやつの評価をすることに対して、マイルとしての「どんぐり」が貯まる仕組みがあります。「どんぐり」を貯めれば貯めるほど、「えこひいき」が増えていき「特別な限定商品をリクエストできる」ことや「サプライズBOX」が不定期で送られてくるなど、値引きやクーポンといった短絡的でないファンを喜ばせる仕組みが仕掛けられています。

写真/shutterstock

ちなみにハーバード・ビジネス・レビューの記事によれば、優れたロイヤルティプログラム(ポイントやランク等の仕組みで「優良顧客」に対し企業が特典を提供する仕組み)を実施している企業は、競合他社の2.5倍のペースで収益を伸ばすと記載されています。

スナックミーは、DIAMOND SIGNALの記事によると、2016年3月のサービス開始から月次で5%~10%成長を続けています。2020年9月時点で、過去1年間で売上規模は約2倍に増加したとのこと。

やはりビジネスにおいても「えこひいき = 優良顧客への価値提供」は売上向上に繋がるのです。

世の中には、顧客のことを知らずに放置してしまう企業が多々あります。だからこそ、顧客体験を最大化するための努力をすることで差別化ができ、ビジネスは加速します。是非今回の3つの例を参考にしながら、お客さまのことをもっと知るためにメモや記録をしっかり手元に残して、次回来訪時の顧客体験を最大化する思索を考えて打ち続けてみてください。

「魔法の顧客管理」まとめ

・初めてのお客さんの情報はメモすべし!次から手厚いサービスをしてファンになってもらおう!
・感動体験で心をわしづかみ!手厚い保障で9年もファンの心を話さない
・ファンへの「えこひいき」で売り上げ向上!

参考書籍: 『マーケティングの新しい基本

写真/shutterstock、本人提供

次号に続く

この記事を書いた人

室橋健
室橋健
顧客関係管理の外資系IT企業でマーケティングマネージャー。慶応義塾大学卒業後、リクルートとベンチャー企業でデジタルマーケティングの仕事の従事。2011年から1年間、中国・北京の清華大学に留学。ホテル暮らしで日本全国を移動しながらフルリモート勤務を続けていたが、2022年春より京都の町家に定住。顧客管理のメモ理論を実践している。
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