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自分でできるマーケティング入門自分のビジネスに最も大切なファンとのコミュニケーション。コミュニケーションとは何か?

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「売上げのためには新規顧客の獲得が必要」は本当か?顧客管理の専門家・室橋健が教える、たった1枚のメモからはじめる「魔法の顧客管理術」。

プロフィール

外資系IT企業のデジタルマーケティングマネージャー室橋健

顧客関係管理の外資系IT企業でマーケティングマネージャー。

99%の場合「お客様はひとりもいない」ということはない。

しかい、意外と目の前のお客様=ファンを素通りしてしまう人は多い。

なぜ、ファンを大事にできないのか? を考えてみたい。

前回の記事はこちら

カットの後、髪質に合ったシャンプーを「クロスセル」

最も重要な1人の顧客は、皆さんの製品・サービスが好きでしょうがない方々です。

そのような貴重なファンの方々にとって「支払い金額は増えてしまうが、こちらの提案の方がファンのメリットになる!」と心から判断できる場合、勇気を持って下記に示す2つの提案をしてみましょう。

ひとつめは「クロスセル」です。

これは購入する製品と別の製品を合わせて購入を検討してもらうことです。

美容室であれば、ヘアカットとカラーリングをした後に“ファンの髪質”に最適な美容室限定の厳選シャンプー¥2,480やワックス¥1,980を会計時に一緒にお買い上げいただくことがクロスセルの事例になります。

カットにカラーをプラスしてグレードを高める「アップセル」

ふたつめは「アップセル」です。

これは購入を検討している商品よりも高額で上位なモデルに乗り換えてもらうことです。

たとえば美容室でいつも¥3,980のカットをされているお客様が「新しい髪型にチャレンジしてみたい」と美容師さんにリクエストした際に、カット+カラーで¥9,980のコースを提案して、より高い金額を選択してもらうことはアップセルと言えるでしょう。

ファンの皆さんにもっと好きになってもらうために、「こちらの方がメリットになる!」と感じたらこの「クロスセル」と「アップセル」を提案します。

安直な値下げやクーポンよりも、「新しいメリットのあるご提案」の方がファンの皆さんには喜ばれるのです。

その「結果」として、皆さんのビジネスの売上も向上するような施策を考えましょう。

徹底して「ファンの役に立つ」

新規顧客の獲得ではなく、皆さんの製品・サービスが好きな「たった1人のファン」の方を見つめ直す。

最も大切なことは、まずは顧客、とくに最重要顧客の1人に役に立つ、という利他の精神です。安直なクーポンやポイント配布を押し付けるのではなく「そのファンが何をしてくれたら喜んでくれるのか?」という問いの答えを、皆さんが作った顧客データから導き出してみてください。

オンラインで生鮮食品を販売しているオイシックス・ラ・大地で役員をされている奥谷孝司氏と岩井琢磨氏の共著『マーケティングの新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント』では下記のように書かれています。

「つながっている価値」のない企業は顧客の日常から消える。(中略) 顧客に向き合う企業姿勢を持ち、常時の顧客提案を行っていくことを可能にするビジネスモデルを築き、顧客とのつながりを強めなければ、顧客から選ばれ続けることは難しいということ。」

顧客データはファンを知るための魔法のメモ

写真/shutterstock

ファンの役に立つことができれば、上記の「ファンとのつながり」が切れる可能性はグッと抑えられます。コロナ渦で売上が下がってしまった所と、売上がそこまで下がらなかった/むしろ売上が向上した企業の違いは、この「ファンとのつながり」を持っていたか否かで決まったのです。

「手元に顧客データが全然ない…」と愕然とした方は、今すぐにでも顧客をノートに書き出すエクセルでリスト化してみることをおすすめします。顧客データを作るほどの顧客はいなければ、なおさらノートとペンですぐに書き出せます。

手書きでは間に合わない顧客数であれば、無料で使える顧客関係管理ツール (CRM) を利用するのもいいでしょう。

まずは顧客データの収集ができるビジネス体制の構築は、すでにファンになってくれた重要な顧客を逃さない唯一の方法です。

この「いちばん大切なファン」に何をプレゼントしたら良いか考えてみましょう。

次号に続く。

写真/shutterstock

この記事を書いた人

室橋健
室橋健
顧客関係管理の外資系IT企業でマーケティングマネージャー。慶応義塾大学卒業後、リクルートとベンチャー企業でデジタルマーケティングの仕事の従事。2011年から1年間、中国・北京の清華大学に留学。ホテル暮らしで日本全国を移動しながらフルリモート勤務を続けていたが、2022年春より京都の町家に定住。顧客管理のメモ理論を実践している。

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