Series
連載

高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデル【ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバス】スモールビジネスにはどっちが使える? 【第17回】

ビジネスモデルは3つの観点で考える必要がありますが、「半径5メートルのビジネスモデル」でゼロからスモールビジネスをスタートするなら、特に抑えるべきは「戦略」。この観点に特にフォーカスして考えるフレームワークをご紹介します。

プロフィール

プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎

プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。

「半径5メートルのビジネス」に「リーンキャンバス」が向いているわけ

shutterstock

前回【第16回】ビジネスモデルを1枚の紙にまとめられるフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」(Business Model Canvas 略して「BMC」)をご紹介しました。

これはビジネスモデルに欠かせない3つの観点(「戦略」「オペレーション」「収益」)に必要な情報を整理し可視化できるフレームワークです。一目で網羅的に考えられるため大変重宝されるフレームワークです。

しかしこれはある程度のリソースやオペレーションが確立された事業では大変有効な一方、これから立ち上げる「半径5メートルのビジネスモデル」のようなスモールビジネスの場合は、参照しづらいフレームワークであるともお伝えしました。

記事はこちら

そこで今回ご紹介したいフレームワークが「リーンキャンバス」です。
「リーンキャンバス」はベンチャー企業やスタートアップのビジネスモデルを図解化するためのフレームワークです。
起業家で『Running Lean-実践リーンスタートアップ』の著者のアッシュ・マウリャによって考案されました。
「ビジネスモデルキャンバス」と同じフレームワークを活かし、スモールビジネスにとって使い勝手がいいように、主に4項目が異なります。
「半径5メートルのビジネス」のビジネスモデルを「ビジネスモデルキャンバス」に当てはめようとしても、立ち上げる際に以下項目がない場合がほとんとです。

「ビジネスモデルキャンバス」から派生した「リーンキャンバス」

【パートナー】どんなパートナーがいるかを考える前に、そもそもまだいない
→「①課題」へ置き換え

【主要活動】まずはカスタマーとやり取りして、思考錯誤してプロダクトを作る段階。
→「④ソリューション(解決法)」へ置き換え

【リソース】何を資産として持つか、といってもそもそも資産がない。
→「⑧主要指標」へ置き換え

【価値提案】顧客との関係性を考える以前に、そもそも初期ファンもまだいない。
→「⑤圧倒的優位性」へ置き換え

「ビジネスモデルキャンバス」には、ベンチャー企業のような、リソースやオペレーションが確立されていない段階ではまだ考えることができない、もしくはその必要がない項目が多く含まれていました。

そこで、それらを「戦略」に関連する項目に置き換え、「戦略」を手厚く考えるようにしたフレームワークが「リーンキャンバス」です。

リーンキャンバス

副業でも起業でも、「半径5メートルのビジネスモデル」のようなスタートしたばかりのスモールビジネスは無い無い尽くしの新規ビジネスです。
そこで、この「リーンキャンバス」の出番、というわけです。

ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスの違い

shutterstock

先ほどのビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスの違いを見ると、赤いバツ印を付けたのは「オペレーション」の観点の項目が多いことが分かります。

「オペレーション」とは、その会社が儲け続けるために必要なものであって、スタート間もない時に考える優先度は高くはありません。
「戦略」と「収益」、特に「戦略」の重要度の方が高いと言えます。

「リーンキャンバス」を使ったビジネスモデルの作り方

shutterstock

「リーンキャンバス」の書き方について解説します。
「リーンキャンバス」は図表の中の番号順に考えていきます。一見ランダムに見えますが、この順番にも意味があります。

「リーンキャンバス」には9つの観点があります。ひとつずつ解説します。

リーンキャンバス

課題

顧客となるターゲットの抱える、上位3つの課題 を考えてみます。

顧客セグメント

顧客を特定します。どういった人が初期の顧客・利用者となるかを明確にします。

独自性/UVP(Unique Value Proposition)

提供する商品・サービスで、どういった独自の価値を提供できるかを考えてみます。

ソリューション

顧客の抱える課題を解決できるソリューションを、現時点で想定できるもので考えてみます。

チャネル

自社の商品・サービスを、どんなチャネル(販路)で、販売・告知・提供するかを考えますが、無い無い尽くしの新規事業にて初期チャネルの選択肢は多くありません。
自分が直接話が出来る顧客をどうやって集めることができるかを特に考えてみます。

収益の流れ

お客さんに価値提案をした対価をどのようにもらうのか。
価値の対価がいくらなのかはやってみないとわからないものなので、最初はあまり意識する必要はありません。

コスト構造

ビジネスを運営するにあたって必要な主要コスト。
将来のコストを正確に計算することはできないので、現在の基準で考えればOK。

主要指標

何を成功の指標にするのかを考えます。

圧倒的優位性

自社の商品・サービスなどの競争優位性を考えるところですが、特に埋めるのが難しいので、最後に仮説レベルで考えればOKです。

連載【第15回】で紹介したケース、中堅学習塾チェーンの人事をしているゆみさんが知育玩具の製造販売を副業として立ち上げようとした場合の「リーンキャンバス」を参考としてあげておきます。

記事はこちら

「顧客」が見えないと「課題」も「解決策」も見えない

shutterstock

「リーンキャンバス」を考える際、特に大事なのは、

  1. 課題
  2. 顧客セグメント
  3. 独自性/UVP(Unique Value Proposition)

の3点です。
というのは、ビジネスの肝は「お客さんの困りごとに、どう答えるか」にあるからです。
その意味で、この3つは同時に考えることになります。(特に①②)

残る④~⑨は、ビジネスモデルのサブ的なもの。
最初は簡潔なもので構いません。商品・サービスのリリース(公開)後、コアの①~③を調整していく中で、それを踏まえて修正していくものだからです。

記事はこちら

「誰かの困りごと」を解決するのが「半径5メートルのビジネスモデル」の基本

shutterstock

「半径5メートルのビジネス」においてビジネスアイデアからビジネスモデルを考えていくには、スモールビジネス向けのフレームワーク「リーンキャンバス」がおすすめです。
ビジネスモデルの中でも、特に「戦略」の観点を中心に網羅的に整理することができます。

世の中にはあらゆる商品やサービスが溢れています。
あなた自身が考えているビジネスアイデアにもすでに同じような顧客の課題を解決できる商品やサービスを競合が発売・提供している可能性はあります。

しかし、あなたにしかできない、あなたしか提供できないモノやサービスに価値を感じる顧客はきっといるはずです。

次回は「具体的に何をどのくらいの深さで考えていけばよいのか」
事例も含めて紹介していきます。

記事はこちら
記事はこちら

この記事を書いた人

高森厚太郎
高森厚太郎プレセアコンサルティング株式会社 代表取締役パートナーCFO
プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。
この記事をシェアする
  • LINEアイコン
  • Twitterアイコン
  • Facebookアイコン