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高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデル「ビジネスモデル」に欠かせない情報整理のフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」【第16回】

「ビジネスモデル」を考える際には、情報を整理して1枚の紙にまとめることができます。そのフレームワークを「ビジネスモデルキャンバス」といいます。今回は「ビジネスモデルキャンバス」をご紹介します。

プロフィール

プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎

プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。

最短で「ビジネスモデル」をつくるフレームワーク:ビジネスモデルキャンバス

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「ビジネスモデル」をつくるためには情報を整理することが必要になります。
効率よく情報を整理するためのフレームワークの一つ「ビジネスモデルキャンバス」(Business Model Canvas 略して「BMC」とも呼びます)をご紹介します。

これは2012年に書籍『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』(アレックス・オスターワルダー (著), イヴ・ピニュール (著), 小山 龍介  (翻訳) 2012年, 翔泳社)が日本で出版されたことを機に広まったもので、以来ビジネススクールや企業での新規事業企画で「新規事業」を考える際に使われるようになりました。

前回のコラムでビジネスモデルは3つの観点「戦略」「オペレーション」「収益」で考えることをお伝えしましたが、「ビジネスモデルキャンバス」(BMC)は、この3つの観点を9つの項目に分解して整理、可視化します。

この「ビジネスモデルキャンバス」(BMC)が優れている点は1枚で「ビジネスモデル」が表現できるという点です。

「ビジネスモデル」に欠かせない3つの観点すべてを一目で網羅的に考えられるので重宝出来る代物です。

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「ビジネスモデルキャンバス」を使ったビジネスモデルの作り方

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実際「ビジネスモデルキャンバス」(BMC)を使ってみましょう。

まず「ビジネスモデル」の3つの観点を具体化するために9つの項目を当てはめて考えていきます。

「ビジネスモデルキャンバス」(BMC)

戦略

3つの観点のうちの「戦略」から見ていきます。

「戦略」の中にあるの下記項目を整理していきます。

・顧客セグメント
・価値提案
・チャネル
・顧客との関係

顧客セグメント自社の商品・サービスの顧客/共通ニーズ/行動/など
価値提案性能/カスタマイズ/デザイン/ブランド/価格帯/など
チャネル小売/EC/など
顧客との関係お客さんとどのような関係を構築するか?

まず考えるべきは「顧客セグメント」です。
自社の商品・サービスの顧客は、どんな人々か、共通のニーズ、行動、態度などによって顧客をグループ化していきます。

次に、戦略とオペレーションをつなぐ、自社の商品・サービスの中核となる「価値提案」を考えていきます。
顧客に対して、自社の商品・サービスは、どんな価値を提供していくのか。
性能? カスタマイズ? デザイン? ブランド? 安さ? 使いやすさ? リスクの低減などが考えられます。

そして、「顧客セグメント」と「価値提案」を結ぶものとして「チャネル」「顧客との関係」の2つ埋めていきます。

「チャネル」は、自社の商品・サービスを、どんなチャネル(販路)で、販売・告知・提供するかということです。
伝統的な小売店販売もあれば、インターネット直販もあります。

「顧客との関係」は、顧客とどういう関係性を築くのかということになります。
売り切りなのか、商品・サービス以外のつながりや関係性を築いていくのか、もっと踏み込んでコミュニティを作って双方のやり取りを通じて商品やサービスを共創していくのかを考えます。

オペレーション

2つ目に「オペレーション」です。

「オペレーション」の中にある下記項目を整理していきます。

・主要活動
・リソース
・パートナー

主要活動製造/マーケティング・セールス/プラットフォーム/他
リソースヒト/モノ/カネ
パートナー仕入れ先/など

オペレーションでは、自社はどういうリソースで、顧客への価値を作っていくのか、を考えていきます。

「主要活動」は、自社が収益をあげるために、どんな活動を主に行うのかということです。
メーカーなら、メインは製造でしょうし、販売会社ならマーケティング・セールスがメインでしょう。メルカリのように、売買できる場を提供して、その中でマッチングをしてもらうというビジネスなら、プラットフォームが主要活動となります。

「リソース」は、ビジネスモデルの実行に必要な主要リソース(経営資源)は何か、です。
ヒトなのか(マネジメント、スタッフ)、モノなのか(工場、原材料)、カネなのか(設備資金、運転資金)、知財(特許、商標意匠)なのか、です。

「パートナー」は、仕入れ先、一緒になにか物を作っていくパートナーはどんな人たちで、その人たちとどういう形で組むのか、です。
A社(アライアンス)、B社(ジョイントベンチャー)、C社(サプライヤー)という塩梅です。

収益

そして3つ目が「収益」です。

「収益」の中にあるの下記項目を整理していきます。

・収益の流れ
・コスト構造

収益の流れ商品代/使用料/購読料/広告料/など
コスト構造広告・宣伝費/設備投資/店舗賃料/など

最後に、収支を確認しておきます。

「収益の流れ」は、お客さんに価値提案をした対価をどのようにもらうのか、商品代、使用料、購読料など継続的な課金、広告料などお客さんではないところから得るのか、です。

「コスト構造」は、ビジネスを運営するにあたって必要な主要コストです。
広告宣伝費、工場設備投資、店舗賃料などが考えられます。

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ネスカフェ、ネスプレッソの違いとは

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ビジネスモデルの違いについて、インスタントコーヒーの「ネスカフェ」と、カプセル式エスプレッソの「ネスプレッソ」を例に考えてみましょう。
ビジネスモデルキャンバスを使って、ビジネスモデルの違いを整理してみます。

ネスカフェ、ネスプレッソのBMC
ネスカフェネスプレッソ
顧客セグメントマス市場家庭・オフィス
価値提案品質の高いインスタントコーヒー高級レストランのエスプレッソを家庭で
チャネル小売店Nespresso.com
メール、電話、ブティック(専門店)
顧客との関係小売店(間接的)ネスプレッソ・クラブ(直接的)
主要活動製造・マーケティング製造、多様なマーケティング(双方向、ソーシャル、マス)
リソース製造工場、ブランドポートフォリオ流通チャネル、システムの特許、製造工場、ブランド
パートナー小売店
コーヒー農家
コーヒー機器メーカー
コーヒー農家
収益の流れ小売りを通じた粉末の販売(低利益率)カプセル(高利益率)、機器、アクセサリー

こうして整理してみると、「顧客セグメント」の違いに始まり、「価値提案」「顧客との関係」「チャネル」・・・と、全ての項目に違いがあります。

このように、ビジネスモデルキャンバスを使って、自社のビジネスモデルを考えてみるだけでなく、自社の新規事業や商品・サービスの改善のヒントを考えることもできます。

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「半径5メートルのビジネス」に最適なフレームワークとは

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ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを構成する3つの観点「戦略」「オペレーション」「収益」を一目で網羅的に検討することができ、とても重宝するフレームワークです。

もっとも、ビジネスモデルキャンバスは、リソース(経営資源)が豊富にあり、オペレーションをしっかりしていかないといけない大企業の新規事業や「すでに市場で受け入れられている商品・サービス」のような既存事業の改善には大変有効です。

逆に、個人がスモールスタートで始める「半径5メートルのビジネス」の場合、リソースやオペレーションが無いため、マッチしない場合があります。

スタートしたばかりでリソースもなく、主要活動などオペレーションも確立されていない状況では、それ以前に、顧客セグメントや価値提案など戦略をしっかり考えることが先決です。

そこで、「半径5メートルのビジネス」を考える際におすすめなのは、「リーンキャンバス」というフレームワークです。これは、ビジネスモデルキャンバスを改編したもので、「戦略」と「収益」を中心に考えるものです。

次回、「リーンキャンバス」について詳しく解説していきます。

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この記事を書いた人

高森厚太郎
高森厚太郎プレセアコンサルティング株式会社 代表取締役パートナーCFO
プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。
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