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高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデル#11 誰かの困りごとにビジネスチャンスが秘められている

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「アイデアなんてなかなか思いつかない… ましてやビジネスになりうるようなスゴイアイデアなんて… 」という人のために運任せではなく「ロジックでイノベーションを起こす考え方」をご紹介します。何気ないニーズや不満を課題にし、解決策を捻り出せれば、それが立派なビジネスアイデアになります。

プロフィール

プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎

プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。

「こうだったらいいのに…」こそが立派なビジネスアイデア

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以前の連載で紹介した書籍「イノベーションのジレンマ」の著者クリステンセン氏のもとに、

『イノベーションで「イノベーションのジレンマ」があることはわかったが、肝心のイノベーションの起こし方が分からない…』という声が寄せられたそうです。
そこで、クリステンセン氏が「イノベーションの起こし方」の解として発表したのが書籍「ジョブ理論」です。

購買理由にこそ顧客の課題がある

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あなたは、自分がなぜ商品やサービスを購入しお金を払っているのか、考えたことはありますか?

もちろん「必要だから」「欲しかったから」なのですが、より解像度を上げて考える方法論が「ジョブ理論」です。

「ジョブ理論」とは、我々が商品を買ったり、サービスを利用することについて、なにか自分がやりたいこと、やらなくてはいけないことなど、ジョブ(用事や仕事)を片付けるために、我々が商品とかサービスを買って『雇用している』とする考え方です。

「顧客はジョブの片付けを求めて苦労している」ということを理解して、ジョブを片付ける解決策や体験を構築することが、「新規事業、イノベーション」となります。

この「ジョブ理論」の考え方を応用すると、顧客の「何気ないニーズや不安」から課題を設定して、それに対する解決策(ビジネスアイデア)を考えることができます。
まさに、運任せではなく、ロジックでビジネスアイデアを考える方法と言えます。

同じ商品でも購入時間が異なれば、ニーズも変わる

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では具体的に「ジョブ」とはどういうものでしょうか?

書籍「ジョブ理論」に記載されている「ミルクシェイク」の例を見てみましょう。

あるカフェで観察調査をしたところ、朝9時前の一人客にミルクシェイクがよく売れていることが分かりました。
購入理由を尋ねたところ、彼らは「仕事先まで、長く退屈な運転をしなければならない」という状況が共通していることが判明。
顧客は「車を運転している間、空腹を紛らわせたい。ランチまでの間を持たせたい」というジョブを抱えていました。
そこで、バナナでもドーナツでもなく、ジョブを解決するのに最適な、腹持ちのよく、片手で扱えるミルクシェイクを「雇用した」ということです。

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「ミルクシェイク」は他の時間帯にも買われていますが、その場合は、例えば夕方に一息つくために甘いものを飲みたいなど、全く違うジョブのために雇用されている可能性があります。

つまり、同じミルクシェイクが売れるという現象であっても、「何を求めてお客さんがミルクシェイクを買っているか」という理由は朝夕で異なる、という話が紹介されています。

コロナが変えた「ウーバーイーツ」に求める消費行動

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もう一つ、「ウーバーイーツ」をはじめとしたフードデリバリーサービスを例に「ジョブ」の変化について考えていきましょう。

「ウーバーイーツ」そのものは、プラットフォームを提供するビジネスであり、サービスを利用するのは「デリバリーの担い手」や「飲食店」が含まれますが、ここでは「料理を注文する人」に着目して「ジョブ」を考えていきます。

つい数年前まで、出前やケータリングなど、フードデリバリーサービスのメニューの選択肢はピザ、寿司やうどんそば、丼物などの和食、ラーメンやチャーハンなどの中華という風に、限定的なものでした。
限られたメニューであることを前提に、「自宅で食べたい」というジョブに対して、雇用されてきたものでした。

ところが、コロナにより事情は一変しました。
感染リスクの低減や自宅で食事をする機会が圧倒的に増えたことを理由に、例えば「外食は自粛するが、好きなお店の料理を食べたい」「食事の手間を減らしたい(買い物に行きたくない、料理をしたくない)」など、これまでと異なる顧客の「ジョブ」が発生しました。

そのため、そのジョブを解決する、上記の限られたメニュー以外の、例えば高級料理店のディナーセットのようなデリバリーメニューが現われ、デリバリーサービスの利用者は急激に増加しました。

このように、同じ商品やサービスであっても、どんな「ジョブ」に対する解決策なのかは異なり、また顧客を取り巻く状況の変化に応じて変わっていくものだと言えます。

顧客の課題こそ新規事業、イノベーションのタネとなる

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「ジョブ」という考え方は、世の中のあらゆる商品・サービスで使える考え方です。

商品・サービスについて、「どんな顧客のどんなジョブのために」購入・利用されているのかという視点で考えると、「代替となるサービス」を考えやすくなるかもしれません。
そして、それが新規事業のタネになることも、十分にあり得ます。

身の回りにある商品やサービスを購入した動機を探してみる

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今回のコラムでは、あらゆる商品やサービスは顧客の「ジョブ」を解決するために「雇用される」ものだということをご紹介してきました。

ぜひ、ご自身が最近買ったものや利用したサービスについて「私はAを買う/利用することでどんなジョブを解決しようと思ったのか」「Aの代わりの選択肢(Aの競合)を挙げるなら、何だろうか」と考えてみてください。

商品やサービスが存在するのは、それが誰かの何かしらの「ジョブ」を解決するからです。
これまで述べてきた通り、その「ジョブ」が何なのか、正解は一つではありません。
ぜひ、楽しみながらビジネスについて考えるきっかけとしてみてください。

この記事を書いた人

高森厚太郎
高森厚太郎プレセアコンサルティング株式会社 代表取締役パートナーCFO
プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。

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