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絶対に失敗するカフェの作り方カフェ開業の極意。小さなカフェを運営するならサイドメニューを絶対におろそかにしてはいけない。

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憧れのカフェ開業。小さなカフェ経営に必要なことは、ドリンクとフードの相互関係?珈琲文明の店主赤澤智さんが「ドリンクを頼みたくなる」「原材料を使い回す」サイドメニューを伝えます。

プロフィール

珈琲文明店主赤澤智

(あかざわ・さとる)昭和42年生まれ。メジャーデビューを目指しバンド活動をしながら12年間塾講師としても活動。大手学習塾の教室長及びエリアマネージャーとして4年半正社員として働いた後、2007年40歳の時に横浜市白楽にカフェ「珈琲文明」を開店。創業開始から今日に至るまでの16年以上(コロナ期間も含め)1度も赤字になったことがなく、黒字で長く続けられる経営を心掛けている。著書に「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えを見つけた(祥伝社)」がある。

カフェ開業・フードメニューの条件

これまで、カフェ経営が「絶対失敗する」要因の一つに「モーニングやランチをやること」と、お伝えしてきました。

が!しかし!

「フードを出してはいけない」というわけではないのです。

「ドリンク中心のお店で、提供までのオペレーションが簡易であればフードは有り、いや単価アップのためにもむしろ出すべし」というのが私の考えです。https://iam-iam.jp/23004/

ただしドリンク中心のお店である以上、ドリンクを注文したくて仕方がなくなるようなフードを選ぶことが重要です。さらに、ドリンク側もフード側も相互にその味を高め合う絶妙な相性のものであるべきです。つまり、ドリンクなしでも完結してしまうフードはメニューには据えない姿勢が重要だということです。

ドリンクがあくまでもメインであることが大事(写真/Canva)

例えば、「お寿司」だと食事として完結する可能性がありますが、「お刺身」だけだとお酒がないと拷問になるみたいな感覚です。
そう、お米があるとなんとなく「食事っぽい印象」になりますよね。

「いかにドリンクを頼んでもらうか」死ぬ気で考える

ちなみに私のお店のメニューには、カレーパンがあります。壷型のパンがそのまま器になっていてその中にアツアツトロトロのカレーが入っています。このカレーはいわゆるカレーライスにかかっているカレーです。

今までお客さんに「このカレーでライスを食べたい」と言われたことは数知れず。でも、「カレーライス」というメニューにした瞬間に飲み物は水でよくなる。だから、ここはコーヒーを頼みたくなるカレーパンであることが重要なんです。

そして、「カレーライス」というメニューはあまりに普通すぎるんです。

カレー屋や食堂であればもちろんいいのですが、ドリンクメインのお店にしようと決めたのであれば、「いかにしてドリンクを頼んでもらうか」ということを真剣に考えるべきなのです。もう、本当に、死ぬ気で考えるべきポイントです。

珈琲文明で提供しているカレーパン(写真/珈琲文明)

フードがメインメニューより目立ってはいけない

それと同時にサイドメニューがメインメニューより目立ってはいけないのです。
既に述べています通り私のお店(珈琲文明)の三大コンセプトは

  • スペシャルティコーヒーをサイフォンのまま提供
  • 天井劇場がある
  • 坪型カレーパンを提供

しかしこれら3つは全くもって同列ではないのです。
ついつい野球で例えてしまいますが、4番バッターはあくまでも①のコーヒーであり、②は必ず出塁(来店)する1番バッターであり、③は必ず次の塁に進む(単価アップ)ための送りバントが上手い2番バッターのような性質を持っています。

だからといって②や③を軽んじていいわけではありません。どれも、しっかりと作り込み、クオリティにもこだわりましょう。

ドリンクセットを驚きの値引き率にする理由

それでいて価格が安いと思われるような、お客様から見たコスパの良さを大切にします。

サイドメニューそのものだけであればたいして利益にはならないけれどドリンクが出た以降はもう単価がプラスにしかならないという状態であればサイドメニューそのものは薄利でもよいと思っています。

大事なことは、このサイドメニューだけを単品で注文して、それだけで終わってしまう状態は避けるということ。単品価格とドリンクセット価格の二つを用意して単品価格はかなり高めに設定し、ドリンクとセットにすると値引き率が激しくなるようにするのです。

私のお店の場合、スイーツやカレーパンをドリンクセットにすると100円引きになりますが、コーヒーゼリーをドリンクセットにするとなんと270円引きになります。

ええ!と驚いてくださった方、ありがとうございます。そう、このくらいの驚きの値引き率で、「ドリンク頼まなきゃ損だし、そもそも、このフード食べるならもう一杯ドリンク頼みたいしな」を目指すんです。

どうしてもドリンクが頼みたくなるフードを提供しよう(写真/Canva)

単体でも成立するフードの料金設定は強気で

「スイーツ」や「カレーパン」を頼むと、どうしても、ドリンクも頼まずにいられない状態になるのに対し、コーヒーゼリーの場合は単品で成立しドリンクも不要になるような気分になるため、単品価格をコーヒーと同じにしてその代わりセットにすると合計金額はスイーツやカレーパンのセットよりも遥かに安くなるように設定しています。

同じ材料を使い回してメニューを提供する

さて、そろそろ気になってくるのがサイドメニューをどうやって決めるのか、というところなのではないでしょうか。

ここで、サイドメニュー考案の際のポイントを2つお伝えします。

  • 同じ原材料でいくつかのメニューを作る
  • キラーメニューを生み出す

今回はこの2つのうちの①、「同じ原材料でいくつかのメニューを作る」についてお伝えしていきます。どういうことかというと、原材料の範囲内で作れるメニューをいくつか考えるのです。

いくつか実例を紹介します!

原材料:スパイス
提供するメニュー:カレーパン/スパイシーミルクティ

私のお店では、カレーでいくつも使用するスパイスを使って、「スパイシーミルクティ」というメニューを出すことにしました。「チャイ」のようなものなのですが、煮出したミルクティと一緒に、カレーでも使用するカルダモンやブラックペッパーをホールのまま入れたすり鉢とすりこぎをつけて、お客様自身ですり潰して入れて飲んでもらうという形態のものでした。

原材料:ココアパウダー
提供するメニュー:チョコレートケーキ/ココア

次に、チョコレートケーキで使用するココアパウダーです。

私のお店では、100%ピュアカカオ使用のオランダの某有名ココアパウダーを使用していましたので、そのココアパウダーを使ってココアも提供していました。

よくあるカフェや喫茶店でのココアはチョコレートシロップをお湯でといているだけだったりパウダーを使っているにしてもその原材料を見てみると多くの添加物や保存料も含まれていたりしますが、100%ピュアカカオのみで作られたココアは、非常にボディが強く美味しくて「ココアって確かにこういう味だよな」というものに仕上がり、お客様にも大変好評でした。

メニューの考案は廃棄ロスとコスト削減に直結

このように、元々あるメニューに使用するためにあった原材料がそのまま他に使えるメニューがあるならば廃棄ロスも減らせます。近年は食品ロスの問題が取り沙汰されています。
農林水産省が発表しているデータ(農林水産省/「食品ロスの現状について」)を見ても、平成18年度の食品関連会社からの廃棄ロス率は11%ですから見逃せる数字ではありませんね。さらに、大量ロットで仕入れられるのでコスト削減にもなります。

ちなみに、珈琲文明では、2020年にケーキの自家製をやめたので、それに伴ってココアパウダーを仕入れるのを止め、同時にメニューからもココアが消えました。

このように、カフェ開業を成功させるなら、「使い回し」を真剣にやること。「使いまわし」でありながら使用する原材料は最高グレードのものにすることが大切です。そうすることで、クオリティの高い、良いメニューが出来上がり、お客様にも喜ばれます!


メソッドを2020年に初の著書として出版。「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えをみつけた

さて、サイドメニュー考案のもう一つのポイントである、「キラーメニュー」。これこそがあなたのお店が話題になってブレイクする可能性がある最強のメニューです。

このキラーメニューの重要性と、生み出し方についてのヒントは、次回しっかりいたしますので首を長くしてお待ちくださいね!

珈琲文明店主、赤澤智でした。

この記事を書いた人

赤澤智
赤澤智珈琲文明店主
脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」

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