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絶対に失敗するカフェの作り方いつか自分のカフェを持ちたい人必読! 潰れない店の立ち上げ方の3つのポイント!

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横浜で土日の行列の絶えない喫茶店「珈琲文明」のマスターがお伝えする、小さなカフェの立ち上げ方と長く続ける方法。今回は、個人店のライバル店となるのはどんな店なのか、どうすれば長く黒字を出し続けられる店になるのか、個人店を運営する醍醐味など、盛りだくさんの内容でお伝えします。

個人店やマスター1人の小さなカフェを、長く続けていく方法を珈琲文明の店主赤澤智がお伝えしていく連載。驚くほど具体的に、かつ「絶対に失敗する方法」をお伝えしながら、逆張りをすることで成功へと導くメソッドを公開しています。連載の終わりも見えてきた49話は、「潰れない店の立ち上げ方」についてお伝えします。

珈琲文明店主・赤澤智がお伝えします(写真:珈琲文明提供)

1年を通じて説いてきた「絶対に失敗する方法」の逆張りをすることで「長く続くカフェを立ち上げる」というこの連載ですが、伝えたいことは未だ尽きません。しかしながら、今回を入れて後2回で終了する連載ですから、中でもこれは注意しなければならないことだなぁと日頃よく私が思っていることをお話します。

Point1 すぐに潰れるカフェこそが最大のライバルだと理解する

この世界には経営度外視した個人店が存在する

ズバリ、個人オーナーのカフェにとって最大の「敵」は、大手フランチャイズ店ではありません。実は、ライバルになるのは自社の利益を度外視してお客様を集めようとしている、経営というものが全くわかっていない「利他の精神」に満ちたお店です。

そして、こういうお店を営む人は概して善良な人です。あくまで私見ではありますが、ガツガツ稼ごうという人でもなく、ホスピタリティ精神に満ちた優しい人が多い気がします。
例えば、コーヒー店であればゲイシャ種やカップオブエクセレンス受賞豆を400円で出してるミステリアスな店(それが「客寄せ目玉商品(フロントエンド商品)」というわけではなく)などです。

そして、私は、今からとても乱暴な意見を述べます。

こういう悪気もない善良かつ顧客満足度抜群に高いお店の存在が「健全に長く続けていこうとするカフェの『弊害』もっとハッキリ言うと『敵』になっている」ことがあるのです。

はい、誤解のないようにぜひ最後まで読んでくださいね。

経営度外視した個人店はそのうち廃業する

結局こうした善良な「利他カフェ」はせいぜい数年でほぼ100%店を畳むことになります。理由はそう、私が1年間お伝えしてきた「絶対に失敗するカフェづくり」だからです。
利益が出ないだけならまだしも赤字になるため、続けられなくなります。

これらは、「お客様が幸せになるカフェを〜」と夢みがちに立ち上げた結果で、お客さんに長く愛されて続く人気のあるカフェを立ち上げる方法としては大失敗です。
でもそうしたお店が閉店すると、不思議と今度は他所でまた同じような「全力利他カフェ」がオープンします。そうするとまた喜び勇んでそこに目ざといお客さんが集まります。

「利他カフェ」こそが最大のライバル

先ほど私はそうしたお店は「敵」だと言いましたが、そのお店単体が敵なのではないのです。なぜかというと、必ず潰れますから。

それよりも、そういうお店が潰れてはまた新たに別のそういうお店が生まれる、という「コスパ最強店舗がゾンビのように常時出現するというループ」があなたのお店にとっては脅威となることを覚えておいてほしいのです。

「黒字で長く(最低10年以上)続くお店作り」をしようと真剣に考えている人に向けて1年間この記事を書いてきましたので、読者の方がこれから開業するお店がよもやこのような「ゾンビカフェ」にはならないと思いますが、そういうカフェ(のループ)が強力なライバルであることは忘れないでください。

我々「長く続くカフェを立ち上げて運営する人」にとっては、このライバルとの戦いは、延々と続く戦いです。気合を入れていきましょう。

珈琲文明の店内(写真:珈琲文明提供)

Point2 自分が店を出したエリアでのNo.1を目指す

次にネット、メディア、グルメサイトでの宣伝広告ばかりして販促活動を行ってる店舗は即効性や短期的売上成果はあるかもしれませんが、「黒字で長く続ける」にはこういういわば「空中戦」は不向きです。
それは自ら手を汚さず華麗に戦っているような気になっているだけです。
かつてここの連載の中で「お金を一銭もかけずにメディア媒体に取り上げられる方法」にも触れてきましたがそれはあくまでも副次的要素です。

大手チェーン店ならともかく、ワンオペ個人店経営とは華々しいものではなく地味で泥臭い「地上戦運営」の中にこそカフェの神は宿ります。

あなたのお店は「全国のカフェベスト100」に入ることではなく、「そこの地域でNo.1」になることが大事なのです。
そこに住む人たちやそこの慣習、文化をあなたが愛することで地域密着に繋がり、またそれなくして地域No.1はあり得ません。

「地域No.1になる方法」を知りたいという方はぜひ、この連載をNo.1から読み直してみてください。

Point3 ストレスゼロで日々幸せな個人店経営こそが理想の経営

「個人経営」は、実はストレスから解放された幸せな世界

さて、この連載には、なんだかカフェ経営というものが「そんなに甘いもんじゃねぇからやめときな!」という内容が散見されるかもしれません。

ですが、「シビアなことを書いているけれど、なんだか、当の本人実際の生活はなんだか楽しそうだし嬉々として話してない?」って思われるかもしれませんが全くその通りであります(笑)。

はい。現在、自分のお店にいながらにしてどういった精神状態で日々営業しているのかといいますと、ズバリ、ストレスが皆無なのです。

もちろん完全にゼロではないのだと思いますが、いかんせん、過去の音楽事務所生活や学習塾社員生活で多大なストレスを感じていたのでそれに比べたらもうゼロと言っても過言ではないと思います。

「人間関係、時間(※ここ一番の自由時間がとれるという意味で)、生きがい、家族」といった幸福の構成要因が全て満点に近いほどに恵まれているのです(あ、お金以外ですが(笑))。

小さなカフェが居心地がいいのはトップ対応だから

他にも会社員ではあり得ない個人店の醍醐味というものがあります。
まず、ワンオペ個人店は代表が常に現場にいる状態です。
大きな会社ですと、社員が何か大きなヘマをしてしまって問題になると上司が鎮静化を図り、またクレームにしても肩書きある社員が対応することでお客様側も溜飲を下げるといったことがよくあります。

ワンオペ個人店の場合、そこにいる店員がその店の「最高執行責任者(COO)」でもあり「最高経営責任者(CEO)」でもある、全てがいきなりトップ対応なのです。
そう、全てをわかっている人間が、直接お客様に接しているわけです。

メニューの原料、素材のことや店内にある家具や調度品に至るまで即答で返すことが出来て、クレームにも回りくどい対応ではなくいきなり代表が対面して誠意を尽くして謝罪し、場合によっては陳謝をせず厳しい態度で臨みます。

いずれにしてもお客様にしてみれば常に目の前にはそのお店の「ラスボス」がいるというのはどちらかというと望まれていることだと思います。
またそういう状態を好ましく感じる人が、店主がオーナーである個人店に足を運ぶのだとも思います。私もそういうお店を好んで選びます。

もちろん、小さなカフェを立ち上げようとしている人は、これからお店の代表として様々な問い合わせ等に理路整然と淀みなく話し対応していく必要があります。
これをあまり不安に思わないでください。
店舗を作る際から運営までの日々のあらゆる工程にあなた自身が噛んでいるわけですから結果的にあらゆることに対応出来てしまいますから、どうか心配なさらずに。

いちいち決済を上に委ねる必要のない経営は最高

もう1つ、オーナー個人店のメリットがありまして、それは「即断即決即時処理」です。

先日こんなことがありました。

アジア系外国人留学生と思われる女性が帰り際レジで、「ここのコーヒーカップはどこで買えますか? 日本の思い出にこのカップを買って帰りたいんです」と上手な日本語で言って来たことがあり、私はなんだか日の丸を背負った気分になりました(笑)。
「ちょっとお待ちくださいね」と言い、「ここのコーヒーカップは岐阜県から仕入れていて、しかも一般の店舗ではなく業務用に卸しているものなので買うのは難しい(この表現でどれだけ日本語が伝わったかわかりませんが)のでよかったらこれ新品じゃなく使い古しですがこれ持って帰ってくださいプレゼントフォーユー!」と言って洗浄済みのカップ&ソーサーとスプーンを箱に入れて差し上げました。
これが、いちいち上に許諾を得る必要があったらこうはいきませんよね。

彼女は涙を流して喜んだ後でこちらに向けられた最高の笑顔はこっちにとっても最高のギフトでした。
こんな時に私は思います「個人店オーナー最高!」と。

決断や判断をすることを恐れず全力でやり切る

カフェの店主は、日々の営業の中で、様々な「決断や判断」をしています。

これからカフェ運営をしよう、個人店を開こうという人はもちろん、今経営をしているという人も、接客の他に、仕入れ、備品購入及び何かの導入などそれら一切の決断や判断、それら全てに、「これまで生きてきた自分の人生の結果」を注ぎ込んでみてください。

自身の積み上げてきた過去なり思考なり、つまりは現在の自分の人間性を総動員するのです。
「普通にこれまで会社員をしてきただけなので」
という方もいらっしゃいますが、この「普通」は全然普通ではありません。それはこれまで生きてきた日々の暮らしや仕事の中で得た考え方や物事、響いた言葉などがひとそれぞれ、それこそ人の数だけあるはずです。

当時の判断そのものは結果的に失敗だったこともあるかもしれません。
でもそれはそれとして、自分自身で人生をかけたジャッジを積み重ねていくという行為以外に果たして何が出来るでしょう。

自分の中にブレない軸を持つことが成功の鍵

個人的には「これまでにかなり精一杯生きてきた人」、「何らかの成功体験のある人」、逆に「手痛い失敗をし、絶望を味わった人」などは有効なジャッジができそうな気はしますが、そうじゃない場合も多々あります。

しかしながら、自分の中に軸がないまま経営をして失敗するのと、自分の中に確固たる方針があり、そこに向かって決断を重ねてきたとしたら、それは、「やり切った」と言えますし、成功する確率は格段に上がります。

だからこそ、私も、自身の経験談を含めて「絶対に失敗する方法」をお伝えし、その逆張りをすることで「限りなく成功する確率を上げる」という連載をしてきたわけです。
自営業とは、文字通り「自ら営む」ことです。
この「自ら」の軸がブレたり、ましてや他力でもし上手くいかなかった場合、それこそなんのために開業するのでしょう。

考えてみるとカフェの仕事は、そこで「注文を受け」「作り」「運び」「提供し」「対価を得る」という、メーカー、流通、小売、がそこに凝縮されているとっても原始的かつ総合的な職です。ある意味これまでやってきたどんな仕事も役立ちます。

もちろん、企業に比べるとあまりにもちっぽけなスケールではありますが、全工程を把握することが出来て、そのそれぞれに自分の意思や意志を反映させることが出来るのです。
煩雑多岐に渡りますが、やはり「曇っていない」すなわち晴れやかでスッキリした心持ちで毎日を過ごすことが出来ます。

これは「幸せ」と言って良いと思います。

私が自分のお店をやろうと思った動機を今一度書き記しておきます。

「人生は一度。だからもっと思い切って、
直接的に物事の全工程に関与し、全責任を負い、
己の意志を貫き通して人生を終えたいなという思い」

あなたのお店が黒字で長く続きますように。
あなたのお店が繁盛店ではなく名店と呼ばれますように。

次週、ついに最終回です!
珈琲文明店主・赤澤智でした。

この記事を書いた人

赤澤智
赤澤智珈琲文明店主
脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」

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