絶対に失敗するカフェの作り方小さな個人店やカフェで、値引きやクーポンが命取りになる理由とは?
行列ができる横浜の喫茶店、珈琲文明の店長赤澤智が、小さなカフェを立ち上げる方法、黒字でい続ける方法について本気で語ります。今回は、「値下げ」が絶対タブーなその理由です。
目次
割引は小さなカフェを廃業に追い込む罠
「個人店が価格競争に巻き込まれるとチェーン店に勝ち目はない」などということはここでわざわざ声を大にして言うまでもないと思いますが、暇な人は「ランチェスター戦略」で検索などしてみると良いかもしれません。
暇じゃない人でこれから個人店を開業しようと思っている方は、とにかく「安売りや値引きは絶対しない」ということを今この瞬間から決定してしまってください。
はい、揺るぎない決意でお願いします
ここでいう「値引き」や「安売り」とは例えば「雨の日割引」「クーポン割引」「ハッピーアワー」全てを対象とし、それら全てを止めるということです。
創業時の「オープニングセール」や「○周年記念感謝セール」「ジャイアンツ優勝記念セール」はい、全て一切止めてください。
高価格設定は何がなんでも死守しなくてはならない
実は今この考えを受け入れたとしても実際にご自身が開業し、集客も芳しくなく、店主のエネルギーも持て余している状態になると「少し安くしてでも売ってしまおう」という悪魔の囁きが聞こえてくるものなのです。
さらに「少しでも売上を上げたほうがいいしそれに来てくれた人が今後リピーターになってくれるかもしれないし」や「廃棄ロスは環境問題もあるし何より損でしかないから少しでも利益を出すために」などと言った天使のお面を被った「自己弁護の囁き」も始まります。
この時大事になってくるのはまず「高価格帯にビビらない」ということです。
高価格設定はもちろん怖いですし、ドキドキします。
お店にお客さんが一人もいない時は特に焦ります。
でももしも、「客単価○○○円以上のお店にしないと必ず潰れる」と言われたら、その値引きに手を出せますか? 出せませんよね?
高価格設定は何がなんでも死守しなくてはならないんです。
その理由をこれからお話ししますね。
業種は違えど「高価格帯」で値引きをせずに結果を出す挑戦
さて、高価格設定を死守する理由をお伝えするために、突然ですが、私の前職時代の話に遡らせてください。
私の前職は全国展開をしている某学習塾の教室長でした。
入社後、研修勤務したあとに私が任された場所は人口2万人ちょっとの山梨県大月市でした。全国展開する塾だったので、東京都内であろうが、私が配属された「山梨の大月」であろうが月謝及び全ての諸経費は同一金額でした。
東京都内の塾の価格設定のまま、田舎で塾生を集める……
これがどれほど厳しい戦いか、お分かりでしょうか。
「もし自分がこの塾の会社の社長なら授業料は地域変動制にするのになぁ」などと愚痴ってみたところで、現実はただの雇われ教室長。システムを換えられる立場にはいません。
そう、計らずして「高価格帯を維持したまま、利益を出す」という挑戦をすることになったわけです。
大切なのは「価格はそのまま」で高い価値を生み出すこと
このどうにもならない状況をどうにかしない限り、教室長の私に未来はありません。
考えに考えた結果、私がまず行ったのはトイレ改革でした(笑)。
何の変哲もないごく一般的なトイレを大改造したんです。
まず、蛍光灯の電気を取り外して暖色系白熱球でほのかに明るくさせ、壁には小さい絵画を掛けそこに局所照明を当て、市販の消臭剤ではなく天然のアロマキャンドル(火ではなく電気による)を設置し、どこぞのホテルのトイレに大変身。
その他教室内のデコレーションも季節ごとに(ハロウィーンやクリスマスはもちろんその他の季節感もその都度存分に押し出して)バリエーション出していきました。
環境整備だけではなく、接客の仕方も変えました。
地方の土着的な塾の代表というのは、良い意味でも悪い意味でもなんというか「上から」の指導で泥臭くガンガン行く「あたり強めの」人が多いと感じていたので、私は、真逆の接客をすることにしました。
はい。リッツカールトンホテルのサービスなどを参考にしながら、まるで、コンシェルジュのようなスタンスで保護者の方に対応しました(笑)。
結果的に私は、自分の教室が全国表彰されたことより「東京23区の教室よりも生徒数も単価も売上も全て上回った」という、なんとも言えない痛快な思い出を手にしました。
同時にこの時の教訓から「値段を下げずにどうにかして価値を上げる」ことをお店をやる際にも常に考えるようになりました。
これが、値下げをして塾生を集めていたなら、うまくいっていたかどうか、自信はありませんし、値下げをせずクオリティを上げて全国表彰される方が圧倒的に気持ちがいいのは確かです。
何が言いたいのかといいますと与えられた動かせない状況下でどうにかするということを知恵を絞って考えることが重要だということです。
りんごを1個千円で売るのは机上の空論ではない
「りんごを1個千円で売らなければならないならあなたならどうする?」みたいなビジネス書もありますが、机上の空論ではなく真剣に考えてみること。
ここからが始まりです。
では、小さなワンオペのカフェが「高価格帯を守りながら価値を出す方法」ってどんなものでしょうか。
私のお店(珈琲文明)のメニューで具体例を出してお伝えしますね。
1)カフェオレのテンションが上がる演出
例えばカフェオレをお客様の前でポットで左右から注ぐ実演提供しています。
2)ソフトドリンクの出し方
ソフトドリンクのジュースは氷もジュースで作っているので絶対に薄まりません。
3)よもぎ草餅は客席から見えるように炙る
よもぎ草餅は七輪風電熱器で客席から見えるところで炙ってから出します。
4)量の多いサイフォンコーヒー
最もメインであるコーヒーは一杯ずつサイフォンで抽出し、フラスコに入ったまま提供しお客様ご自身で注いでいただきます(約1.5杯分入っています)。
創業前はカフェオレを持って行く時にトレーではなくワゴンに積んでガラガラガラと物々しく運んでいこうとも思っていましたが、中二階席が生まれたことにより取りやめました。
とにかく、色々演出や価値を考えて今に至ります。
値引きや安売りはただの「逃げ」であると心得よ
だから、どうか皆さんの店舗でも、いかに「『ただの』コーヒー、『ただの』カフェオレ『ただの』、ジュース」にしないかということを脳内フル回転させ考えてみてください。
キツイ言い方をしてしまえば、安売りや値引きというのはそういう脳内フル回転で考えるという行為からの「逃げ」です。
安売りクーポン券を駅前で配ったりする労力やエネルギーがあるならその分脳に存分に汗をかいてください。
あなたのお店が「黒字で長く続くお店」でかつ「繁盛店よりも『名店』を目指す」のであれば、ぜひとも「価格競争」に巻き込まれたりせず、歯を食いしばって安売りは阻止してください。
今回はとにかく「安売りはするな」としつこく言ってきましたが、例外はあります。
「ケーキセット」のようにドリンクがしっかり出た上でそこにスイーツ等純粋に単価が上がるだけの状態の「セット料金」は有りですがこれも「割引」という発想よりも例えばスイーツ単品で注文した場合はかなり高額になるような設定にして、むしろセット料金が正規料金というようなイメージの値付けにします(値付けや価格設定方法の詳細は次回早速説明します)。
そして、高価格商品を売ればいいのかといいますともちろんそんなわけはなく、価格帯や値付け方法にはしっかりと私なりのノウハウがありますのでそれは次回を待っていただくことにしましょう。
珈琲文明店主・赤澤智でした。
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この記事を書いた人
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脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」