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自分でできるマーケティング入門いちばん大事な顧客に対して「安売りしてはいけない」理由とは? ファンの心理を理解する。

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「売上げのためには新規顧客の獲得が必要」は本当か?顧客管理の専門家・室橋健が教える、たった1枚のメモからはじめる「魔法の顧客管理術」。

プロフィール

外資系IT企業のデジタルマーケティングマネージャー室橋健

顧客関係管理の外資系IT企業でマーケティングマネージャー。

99%の場合「お客様はひとりもいない」ということはない。

しかい、意外と目の前のお客様=ファンを素通りしてしまう人は多い。

なぜ、ファンを大事にできないのか? を考えてみたい。

前回の記事はこちら

江戸の商人は火事が起きたら真っ先に……

皆さんは江戸時代の商人は「顧客メモ」を活用していたことをご存知でしょうか?

この顧客メモは「大福帳(だいふくちょう)」と呼ばれ、顧客の名前や購入した商品、いつ何を買ったかなど事細かに記載されていました。

写真/shutterstock

そして火事が多かった江戸の商人は、火事が起きた際は命からがら逃げる際に、井戸に大福帳という顧客メモを投げ捨てて逃げていたと言われています。

火事の後に、井戸から顧客メモを救出すれば、ビジネスを立て直せるということです。

つまり商いをするにあたって、顧客メモさえ失わなければ、家を火事で失ってもビジネスを復活できると江戸の商人は考えていたのです。

連載の中で、「プライベート知人メモ」を先程作成していただきました。

今度は同じことを、ビジネスの顧客でも実施して「現代の大福帳」をつくってみましょう。

顧客リストの作り方

皆さんの商品・サービスを購入してくれた方の

・名前

・電話番号

・メールアドレス

・購入した日時

・金額

・回数

・商品

こういった情報をかき集めてリスト化します。既に何らかの予約やネット通販、決済サービスを利用されていれば、そのサービスにある「注文データの出力」や「CSVダウンロード」といった機能を活用して簡単にリストを作成することができます。

個人商店方式で手書き管理しているという場合は、直近1ヶ月〜3ヶ月の顧客にしぼり、リスト化してみましょう。

大切なことは書き出して可視化することであって、必ずしもエクセル等でまとめる必要はありません。ノートでも良いので、まずは書き出してみましょう。

最も大事な「いくら使ってくれたか?」

写真/shutterstock

顧客リストができましたら、次は

・顧客のデモグラフィックデータ(性別、年齢、住んでいる地域、会社名、職業など)

・購入商品

・累計の購入総額

を記録しましょう。

例えば佐藤愛さんという方が10回も4,980円の商品を買ってくれている場合、毎回の売上を足し合わせた

「累計の購入総額 = 10回×4,980円 = 49,800円」

をしっかりと記載します。

ちなみに前章でご紹介した『お客様は「えこひいき」しなさい!』では、何回仕入れてもらったかは関係ない。あくまで基準は「取引高」であると言い切っています。

かならず累計の購入総額という軸を記載しましょう。

購入総額順で一番大切なファンを見つける

ここまでリストを作成できたら、最後に累計の購入総額順に並べ替えてみましょう。

ビジネスに貢献している重要顧客

大切なファン

累計の購入総額が大きいファン達こそ、皆さんのビジネスの宝といえます。

「なぜこんなリストを作成する手間をかけるのか?」と疑問におもう方もいらっしゃるかと推測します。

習慣の力』の著者チャールズ・デュヒッグは自著『あなたの生産性を上げる8つのアイディア』でこう書いてます。

新しい情報に出会い、そこから何かを学びたかったら、その情報を用いて何かをする必要があるのだ。浴室で体重を量ると自動的にスマホのアプリに記録される、というだけではだめなのだ。もし痩せたかったら、面倒でもそれをグラフ用紙に書き込めば、ランチにハンバーガーではなくサラダを食べるように為る。(中略) 意味を理解しない限り、情報は役に立たない。

この顧客リストを自分の手で情報を追加し、並べ替えて動かすことで「意味を理解する」ことが可能になります。

一番大切なファンが喜ぶプレゼントを考える

最後は累計の購入総額が最も高い1人だけを抽出します。

ビジネスに貢献している重要顧客

大切なファン

この「いちばん大切なファン」に何をプレゼントしたら良いか考えてみましょう。

ファンに対する「安売り」は絶対してはいけない

ここで注意してほしいのは、値下げやクーポンを配るのはNGだということです。

なぜならこれらのファンは皆さんの製品やサービスが好きでお金を使ってくれる方であり、値下げやクーポンなどの「商売っ気」が香るメッセージを受け取ったら「別に好きだから、普通に買うのにな…」と思われかねないためです。

もしレストランで普段アルコールを飲まない人のファンがいれば、特別に仕入れた甘くない上質なノンアルコールワインをそっと無料でプレゼントする、またはお帰りの際にお持ち帰りのお土産をプレゼントするといったことができます。

こういった「サプライズ」に喜んでくれます。そして、帰り際に「また、いらしてくださいね」とさり気なく一言を添えられるか。ここですべてが決まります。 もしコロナ等でお店にいらっしゃらないのであれば、感謝の気持ちとして郵送でご自宅にプレゼントをお送りするのもよいでしょう。

次号に続く。

写真/shutterstock

この記事を書いた人

室橋健
室橋健
顧客関係管理の外資系IT企業でマーケティングマネージャー。慶応義塾大学卒業後、リクルートとベンチャー企業でデジタルマーケティングの仕事の従事。2011年から1年間、中国・北京の清華大学に留学。ホテル暮らしで日本全国を移動しながらフルリモート勤務を続けていたが、2022年春より京都の町家に定住。顧客管理のメモ理論を実践している。

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