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「思い切りが大事!」ビジネス書や起業系YouTubeを参考にした結果、モチベは上がるが、業績は下がった実業家のリアル失敗談

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「街中スナック」を展開する実業家・たなかるいさんは、起業関係の動画で「借金は会社の信用につながる」と自己資金ゼロで借金経営に乗り出し、一時資金難に陥ったことがあるといいます。その時の失敗と教訓について教えてもらいました。

たなかるい氏

実業家のたなかるいさんは「街づくり」「仲間づくり」をコンセプトにし、「カラオケなし・禁煙・色恋なし・営業は22時まで」というクリーンな地域貢献型スナック、「街中スナック」を東京都荒川区から全国に向けて展開中です。しかし、6年前にその前身となった店舗をスタートさせるとき、お金にまつわる大きな失敗を2つ経験しました。1つは「借金」。もう1つは「経費」でした。

資金なし、志だけで起業するのはNGなのか

起業するなら借金をした方がいい!?

専門学校卒業後にジーンズメイト、凸版印刷、xymax、リクルート、カカクコムなどに勤務して優秀な成績を残した後、28歳で独立したたなかさん。

荒川区に新たな店舗をオープンするにあたって、ビジネス書を読んだり、YouTubeで起業関係の動画を見たりしたそうです。

そのときに強調されていたのが「起業は思い切りが大事」「借金は会社の信用につながる」といった言葉でした。

黒字にして返済しないと借金は増えていくだけ

そこで、最初に「生活広場」という雑貨の店をオープンする際には自己資金ゼロで、思い切ってすべてを借金でまかないました。

また、それに加えてコワーキングスペースやカフェの店を開く際にも借金をしました。それが「良いこと」だと思っていたのです。

しかし、実際に借金してわかった当たり前のことがあります。「黒字にして返済しないと、借金は増えていくだけ」ということです。どんな事業もスタートしてから軌道に乗るまである程度の時間がかかります。

「多少なりとも自己資金を用意するべきだった」

たなかさんは店舗とは別にコンサルタントとしての仕事で得た収入で、店舗の売上の不足分を穴埋めし、当初の苦境を乗り切りました。

「経費=自由に使えるお金」ではない

経費については、従業員の問題でした。

店舗運営に正社員やアルバイトを雇っていましたが、経費についての意識が徹底されておらず、あたかも「経費=自由に使えるお金」のように気軽にタクシーを使うなどの無駄遣いが多かったのです。

経費問題に気づいてから、たなかさんは従業員に対しても細かく指摘するようになったと言います。

「この備品は1日の利益のどれだけに当たるかわかる?」

「経費は店の売上から出ているんだよ?」

経営者にとってもっとも大切なことは「お金」です。

たとえ「街づくり」「仲間づくり」という意義あるコンセプトを持った店舗であっても、きちんと収益を上げ、借金を返していけるようでなければ営業を継続できません。

店舗をオープンした当初、そのもっとも大切なことに対して意識も知識も足りなかった、とたなかさんは言います。

「経営のことやお金のことについて相談できる『良い大人(年長者)』と出会えていなかったなと思います。勉強も足りなかったですし、いまならかつての自分に『商売を舐めたらいかんよ』と説教してやりたいです(笑)」

取材・文/オザワ部長

大切なのは財務について知識と関心を持つこと

「借金経営」のメリットデメリット

たなかさんは自己資金ゼロから借り入れをして事業を回していく「借金経営」を選択し、大変苦労された経験を教訓に、新たな事業を展開し、成功されています。

たなかさんの「失敗」から「借金経営はありかなしか」について考えてみましょう。

「金融機関から常に借り入れをしている会社」は、社会的に信用力が高くなる」というのは、起業家の中の通説ではありますが、「借金経営」にも「無借金経営」にもそれぞれメリットとデメリットがあります。

「無借金経営」のメリットデメリット3つ

メリット1:チャンスを逃さず企業を成長させられる

開業資金が少ない人でも事業の成長に対して投資することができ、ビジネスチャンスを逃さずに企業の成長スピードを早めることができることかもしれません。

メリット2:モチベーションが上がる人もいる

「借金があるから」という理由で、緊張感が高まり、返済し、さらに売り上げ増大していくという企業努力やモチベーションのアップにつながっていく人もいるでしょう。

メリット3:いざという時にお金が借りやすい

無借金経営だと返済実績がないため金融機関からの信頼が薄く、いざという時に融資が受けにくいということがあります。

デメリット1:売り上げが落ちると返済資金の工面に追われる

売り上げが落ち込んだり、経営が悪化したりした際は毎月の返済に追われることになります。

デメリット2:モチベーションが上がらない人もいる

ただ、毎月の返済に追われ、利息を支払いながら事業を展開していくことにやる気を奪われる人、不安に押しつぶされそうになる人もいます。

デメリット3:現金が増えるため経費を使い過ぎてしまう

融資を受けると銀行残高が増えるため、経費をどんどん使ってしまう人がいます。

こうしてみると、借金をすることはメリットもあればデメリットもあると言えそうですが、自分自身の性格や仕事のスタイル、事業の規模、事業内容によっても、選択は変わってきそうです。

小さな企業は「無借金経営」も多い

一方、金融機関からの融資を一切受けていない「無借金経営」をしている企業も少なくありません。

東京商工リサーチが実施した「2023年全国『無借金企業』調査」(参照:東京商工リサーチ|全国の「無借金企業」8万4,000社調査)によると、全国の無借金企業率は21.6%。国内では借金を全くしていない経営者は経営者5人に1人ということになります。さらに、72.3%が売上高5億円未満の企業ですから、スモールビジネスを運営する起業家は、「借金経営がいいらしい」という声に飛びつかない方が賢明かもしれません。

大切なのは自分の会社の財務に関心を持つこと

たなかるいさんは、事業が軌道に乗るまでの間、コンサルタントとしての仕事で得た収入で、店舗の売上の不足分を穴埋めすることで苦境を乗り越えたわけですが、「黒字にして返済しないと、借金は増えていくだけ」とも語っていました。さらに「経営やお金について相談できる大人がいなかった」「勉強が足りなかった」とも。

問題は、事業資金を借りるか、借りないか、という話ではなく、起業しようと思ったらまず、「経営と財務に関心を持つこと」と言えるかもしれません。

自社に必要な資金や借金、預金が見えてくると、無駄な借入をすることもなくなります。

経費についても、「税金を減らすためにとにかく使う」のではなく、キャッシュフローを意識して「賢く使う」ことできるようになれば、事業や社員に還元していくことができるでしょう。

文/Iam編集部

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この記事を書いた人

オザワ部長
オザワ部長
世界にただ一人の吹奏楽作家。早稲田大学第一文学部在学中に小説家を目指す。フリーランス歴は26年。初めはフリーライターとして活動。中学時代吹奏楽部だったことから、オザワ部長のペンネームを起用して『みんなのあるある吹奏楽部 』を出版。吹奏楽作家に。最新刊『空とラッパと小倉トースト』好評発売中。

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