絶対に失敗するカフェの作り方小さなカフェ開業を成功させるために必要な内装の作り方のポイント3つ。重要なのは、プロ任せにせずに自分で決めること。
カフェ開業をしたい人が絶対にやってはいけないことは、内装をプロ任せにすることだった? 珈琲文明の店主赤澤智さんが語ります。
プロフィール
珈琲文明店主赤澤智
目次
カフェの内装は絶対に「自分で決める」
前回は「店内の様子は店そのものだから内装には徹底的に力を入れ、かつその店内の様子が外から一望に出来るくらいの作りにすることが、お店の前を通りかかる人に向けての最高の宣伝広告である」という話をしました。
今回は内装設計、業者選び等もう少し深く切り込みます。
まずどんな内装にするのかということは「こういう風にしたい」というビジョンが現時点でぜひともあってほしいといいますか、これがない状況で物件を選んだり、業者に任せたりするなんて個人的には信じられません。
これから長きにわたり自分の城、主戦場、娯楽場、になるのです。ここで「おまかせ」にすると、何のために自分のカフェを立ち上げるのか、そもそもの理由が見えなくなります。
カフェの内装を考えるときに行うことを3つにまとめると、
STEP1 こういうお店にするという内装のイメージを固める
STEP2 縮尺設計図に落とし込む
STEP3 必要な席数を確保するために、カウンター及び大人数席を用意する
となります。今日はこの3つについて解説していきます。
STEP1 こういうお店にするという内装のイメージを固める
カフェ内装は「予算」よりも「こうしたい」が先
まずは「こういうお店にしたい」を決めてください。
その際にまずは予算のことなど一切考えずに思い描いて見てください。
このとき大事なのは、他人の意見も一切無視して考えてみることです。
もちろん、坪数などのキャパはあらかじめ踏まえて検討する必要はありますが、予算のことは後から考えるのです。先に予算のことを考えると、良い内装にはなりません。
決めましたか?
あ、まだですか?
決まってない人はゆっくりじっくり決めてください。
先ほど、「他人の意見なんかも一切無視して」と言いましたが、これから私がお伝えすることは、今「こういうお店にしたい」と考えている人にとっては、他ならぬ「聞いてはいけない他人の意見」ですので、自分なりに「こうしたい」が決まった人だけ読み進めてください。
カフェの内装は理想と現実のせめぎ合い
既にビジョンがある、または前文を読んでから考えに考え、見つかって、もう一度、ここに来てくださった方!
改めまして、こんにちは! 珈琲文明店主・赤澤です。
それでは、ビジョンを手にした方々に向けて、具体的な話を進めますね。
理想とする内装イメージがある程度固まった人が次にすべきこと、それは理想と現実の「せめぎあい」からの「おとしまえ」です。
意味がわかりませんよね。ちゃんと説明しますのでお待ちください。
前の項で、「予算や他人の意見は無視するも、キャパは踏まえる」とお伝えしました。
これまでに述べている「ワンオペ個人店の適正坪面積」をおさらいすると、
- 10~15坪
- 席数は坪数の倍の20~30席
です。
ちなみに、ドリンク中心のカフェの席数は坪数×2というのも覚えやすいので覚えてください。
自分の理想とする内装を追求すると、往々にして、その理想に対して面積が「狭すぎる」、席数が「少なすぎる(もっと多く確保しなければならない)」という現実が見えてきます。
それもそのはず! と、いうのもだいたい10坪とはつまり20畳、お金持ちの人が暮らす人の家ならリビングだけでも20畳あったりしますし、また一般的な2DKの住まいにしましても、バス、トイレ全ての合計だと20畳くらいにすぐなります。
店舗の場合、この規模に「厨房、客席、トイレ、ストックルーム」それら全てを含めるわけですからいかに狭いかは想像がつくでしょう。
家族であれば3~4人かもしれませんが、20~30人を収容する必要があるのがカフェ店舗なのです。
ここにきて、ほとんどのカフェ開業者は頭を抱えます。
「理想」と「現実」のせめぎ合いですね。
STEP2 縮尺設計図に落とし込む
小さなカフェの内装は「間取り図」で確認するに限る
これらの現実から目を逸らさないためにぜひやってもらいたいことが、「縮尺設計図」の作成です。わかりやすくいうと、間取り図です。この手の作業に私ほど向いてない人もいないくらいこういうのは苦手ですが、歯を食いしばってやってみました。
どうやるか。方眼紙を買ってきて思い描くレイアウトを実際に落とし込んでみるのです。
店舗内装の平面図はどんなに下手くそでもいいのですが、寸法(縮尺率)だけは正確にしてみてくだい。やってみればわかりますが理想よりも全てにおいて驚くほど狭いことに気づくはずです。
小さなカフェのデザインはプロに頼むべからず
でもここで、「デザイナーや設計士に頼むからそういうのはいいんだよ」とは、絶対に、言わないでください。
デザイナーや設計士というのはそういう職業、仕事としてやっている人なのであって、あなたのイメージの細部に至るまでの深い部分まで意思統一が成り立つものと考えないほうがいいです。
こちらが素人で頼る気持ちも多いことから、グイグイ引っ張ってくれる人がありがたいという施主の気持ちもわかりますが、向こうはやはり仕事でやっているので、先例に無いものや規格外のことは煙たがられます。
でもこの「先例に無いものや規格外のこと」こそが、あなたのお店の圧倒的オリジナリティを出す部分だったりするのです。
「こういうカフェを作りたい」
その初期衝動を消さないように努めるのはオーナーであるあなたの使命です。
なぜカフェを立ち上げるのか、運営するのか、その思いを消してはいけません。
とはいえ、「縮尺平面図」で「狭い。このままだと席数確保が難しい」となるのは必至です。
ここからが頑張り時なので、いくつか打開策を述べておきますね!
STEP3 必要な席数を確保するために、カウンター及び大人数席を用意する
打開策1)小さなカフェにはカウンター席が必須
テーブル席だけではなく、カウンター席というものを必ず設けるようにしましょう。
4人がけのテーブル席が5つあってカウンター席のないお店は、席数は確かに20となりますが、おひとりさまが別々に5人きたら満席になります。
これは店側の都合もそうなのですが、同時におひとりでいらしたお客様の心理的にも影響します。一人で4人がけに座っていたおひとりさまのお客様がいらしたとして、徐々に店が混んできて、あとから3~4組の人が入店してくると「自分がいるためにその人たちが入れない」と、気まずくなって、居心地が悪くなるのです。
居心地が悪い、というのはカフェにとって致命的。
ですから店&客の両側面からもカウンターの存在は超重要なのです。
打開策2)小さなカフェのカウンター席は居心地の良さを追求
さらに、そうなってくると、大切なのはそのカウンター席の居心地の良さです。テーブル席以上の満足感が得られるような設計を心がけることをおすすめします。
「ああ、カウンター嫌だなあ、狭いし」と思わせないこと。
具体的には、「カウンターの奥行きは30cm以上にする」ことです。
ちなみに、珈琲文明のカウンターは奥行きが53cmです。
これには理由があります。仮に丸テーブル席の直径が60cmとした場合、2人で向かい合わせに座った場合に自分の場所として使えるのは30cmです。それと同じくらいのゆとりが必要です。30cm以上にすることによってカウンターという席がゴージャスなものになります。
打開策3)小さなカフェのテーブルは「四角ではなく丸」にする
また、テーブル席は、「丸テーブル」がおすすめです。
角というものは一辺に一人という着席が決定づけられてしまいますが、丸だと、コーナーがない分人数対応に柔軟性が生まれます。
さらに、何かイベント等でテーブルの配置を変える必要が出てきた時に、四角いテーブルではレイアウト的におかしくなったりデッドスペースが生まれたりもします。
打開策4)大テーブル席を作る
席数確保のためにカウンターの他に、5~6人収容可能の大テーブルの存在も重要です。
その際の椅子は単独の椅子というよりもベンチシートのような、これまた人数への柔軟な対応が出来る椅子が望ましいです。なぜかというと、単体の椅子だと、小さなお子様であっても、一脚は一脚として使用されるからです。
ついでに言うとベンチシートにした場合、そのベンチの下にモノが収納出来るような作りのベンチにすると後々大変便利です。
打開策5)大テーブルはおひとり様でも使いやすくする
もう一つ、大テーブルの案があります。
珈琲文明ではやっていませんが、大きな丸いテーブルを使用して、中心部には花などを飾ることによって向かいの人の顔が見えないようにするというパターンです。
こういう作りであれば、お客さんも、「相席」に対して嫌な気持ちになりにくく、自分のスペースを保ってゆったり過ごすことができます。
さて、このままテーブルの高さや人がすれ違えるスペースの話等まで細かく話もしていきたいのですが、今回は、第一段階である、
1)こういうお店にするという内装のイメージを固める
2)縮尺設計図に落とし込む
3)必要な席数を確保するために、カウンター及び大人数席を用意する
についてお伝えしました。
ところで、飲食店のスケールの中でもこの「10~15坪クラス」の内装費が最も割高になるということも覚悟してください。10坪も20坪も厨房その他一連の設備関係の費用はそんなに変わりません。
極端なことを言ってしまうと、20坪のハコは10坪のハコがすべきことにプラス10坪分の床板を張るだけの作業とも言え(わかってます、言い過ぎです)、でもまぁそれくらいに小さいお店の個人店は何かと工事費は割高であるということです。
それでもやるんです。
ワンオペでカフェを立ち上げるというのはそういうことなんです。
ここで、気合と根性と勢いと執念とある程度の知識と情報を含めた自分の全精力を総動員した内装は、「ザ・広告宣伝作品」となって、やがてあなたの店舗を勝手に広めてくれるようなお店になります。開業後はこちらから一切の宣伝広告をすることなく、各種媒体に取り上げられたりするハコに化けてくれることになってくれるかもしれません。
誰もが、放っておくことが出来ず、誰かに話したくてしょうがなくなるような理想のカフェですよ。
珈琲文明店主・赤澤智でした。
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この記事を書いた人
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脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」