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絶対に失敗するカフェの作り方不動産屋さんに家賃の交渉をするのなら、タイミングを図って一発勝負するべき理由とは?

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ワンオペのカフェを開業するなら、大切なのは物件選びと不動産屋さんとの家賃の交渉。家賃交渉はタイミングを図って一発勝負が絶対。

プロフィール

珈琲文明店主赤澤智

(あかざわ・さとる)昭和42年生まれ。メジャーデビューを目指しバンド活動をしながら12年間塾講師としても活動。大手学習塾の教室長及びエリアマネージャーとして4年半正社員として働いた後、2007年40歳の時に横浜市白楽にカフェ「珈琲文明」を開店。創業開始から今日に至るまでの16年以上(コロナ期間も含め)1度も赤字になったことがなく、黒字で長く続けられる経営を心掛けている。著書に「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えを見つけた(祥伝社)」がある。

ローラー作戦でその街の動線や空気感をチェック

立地の重要性と狙うべきは「二等商圏の一等立地」であるとお伝えしましたね。立地の選定を終えたら、次に必要なのは、店舗となる物件探しでしょう。

店舗物件探しの方法としては、希望する街を直接歩いてテナント募集の物件を探して歩くという泥臭いローラー作戦があります。

これはその街の人の動線や空気感、またどこにどんなお店があるのかということを探索するということでもあり非常に意味があります。

人の動線や空気感、周辺の店を確認しよう(写真/Canva)

歩きながら物件探しをするべき理由

この時、大切なのは、必ず徒歩(せいぜい自転車)で、歩行者目線で回ることです。

歩行者目線でありつつも、車の侵入禁止や一通の標識には着目してください。

というのは、大きめの道路を曲がったすぐ角地にある物件(本来であれば優良立地とされる)のその曲がり角が侵入禁止だった場合、車やバイクは流れてこないからです。

原則は歩行者を顧客ターゲットにはしますが、もちろん車両組も取り込みたいのは言うまでもありません。

不動産屋さんには名刺を持っていくべき理由

さて、こうした泥臭くて原始的な物件探しと平行して、ネット利用はもちろん、やはりなんといっても不動産屋さんに相談しにいきましょう。

街の不動産屋さんに入ってまずすべきことは、変に素性を隠したりせずに「これからこれこれこういうお店をやろうとしているので情報が入ったら教えてください」と自身の名刺を置いてきましょう。

はい!開業前でも名刺は作っておいてください。

とっても、大切なことです。

不動産屋に行く時は名刺を作っておく(写真/Canva)

代表を名乗るべき理由

店名がまだ? いやいや、それは先に決めておいてください(まぁ仮でもいいですが)。

そしてその店名と共にやはり大切なのが「代表」や「オーナー」という肩書き部分です。

慣れないうちはこの肩書き、ちょっとこそばゆいものですが、やはり相手(業者)に対して与える信頼感が違うはずです。

ただし、横柄な態度は厳禁で、かつ、妙に下手に出る必要もありませんからね!

「真面目に誠意を持って良い物件を真剣に探しているんだ」ということをそのまま不動産屋さんに伝えましょう。 実際にそうなのですから。

希望条件を明確に伝えるべき理由

これまでに賃貸アパートやマンションのことで不動産屋さんを利用したことがある人はわかると思いますが、当然「希望の条件」を訊かれます。

どう伝えましょうか? わからない? 

いえ、ここは明確にこたえてください。

どう伝えるのか。はい。この連載読んでいる人には驚くほど明確に伝えておきます。

◆8~20坪までの物件(出来れば10~15坪の範囲に絞りたい)

◆急行や快速が「停まらない」ような駅でかつ乗降客数3万人以上の街(二等商圏)

◆人の流れが集中する場所(一等立地)

さらに・・・

◆ワンオペで可能な限界売上(※どんなに最高の立地であろうがこれ以上の売上はまず無理という上限)からの逆算(この件についてはまだしっかり触れていないので後日必ず述べます)による家賃の上限

これらを全て踏まえて考えると、具体的な条件が見えてきます。

※ちなみにこの手の立地の相場は1坪1万円~1万5千円(都内及び近郊の場合です。地方だともっと安くなります)くらいと考えてください。

希望は明確に伝える(写真/Canva)

「相場の範囲内で」と強調して伝えるべき理由

というわけで、もっとわかりやすくお伝えしましょう。不動産屋さんには、以下のセリフを声を大にして、いや、あくまでも自然に、スマートに、謙虚に、でも、ハッキリと不動産屋さんに言い放ちましょう。

「10坪~15坪くらいの規模で、家賃は10万円~15万円くらいの相場の範囲内で」

はい!「相場の範囲内で」という、このファジーなフレーズ(笑)が、めちゃくちゃお勧めです。

今は思いっきりものごとをシンプルに考えていただくために「1坪1万円」で計算していますが、もう少し細かいデータとしてはやはりそこの周辺にある他の店舗物件の家賃を訊いて平均的な坪単価を出してみることです。

それをやってみたとしても、やはり1坪1万円~1万5千円あたりはきっと当たらずとも遠からずのはずです。

珈琲文明の店内(写真提供:珈琲文明)

すぐに家賃を値切るべきではない理由

次に良い物件に巡り合い、ぜひここに決めたい!となった場合、すぐに家賃を値切ったりしないように気をつけましょう。

理由は「値切ったことによりダメになること」を避けたいからです。

ただし、値切るなとも言いません(笑)。

これは実際に不動産屋に勤めている私の友人(一部上場企業の重役)から聞いた話なのでものすごく説得力があるのですが、「すぐに値切ろうとしたりする人は当然のことながら大家さんにもまた交渉仲介役(つまり不動産屋さん)にも煙たがられる存在であり、人気物件の場合は向こうから切られるし、切りたくなる」のだそう。

まあ、逆の立場を想像すると理解できますよね。

家賃交渉は最後の最後に蜂の一刺しにすべき理由

しかし、もう一度言います。

赤澤は、値切るなとも言いません。

どういうことかというと、値切るタイミングというのがちゃんとあるんです。

不動産屋さんや大家さんが「しょうがないなもう値切るしかないな」と思うのは、友人曰く、以下のような場合だそうです。

「内見も済み、各種条件(保証金、家賃の他、造作可能範囲及び原状回復義務等)の説明もし終えて、さあいよいよ契約、というかなり最終の段階で一声だけ値切られるとき」

だそうです。

賃貸料設定というのは、最初から少しだけ「高め」にして値引く余地を用意してある物件が多いのも確かです。業者側にしても、ここまで話を詰めてきてここで反故にされたくない。「ここで値下げをしてクロージングが確定するのであればもうそれでいいだろう」となる心理もわかりますね。

個人的にもそして相手の立場に立った場合でも「冷やかしや駆け引きではなく、真面目に正式契約という土俵の上に立った状態で、ジャブでもボディでもなく、ただ一突きだけ渾身のストレートを放ったほうが気持ち良い結果になる」というものだと思います。

だからこそ、最初から、不動産屋さんや大家さんに対しても、こちらは真剣、切実、大真面目なのだということは全面に出しておいたほうがいいと思うのです。

「真面目」っていうのは案外武器になるものです。

そんなわけで、賃貸料値切りのタイミングは「取引交渉の最後の最後」と覚えておいてください。

賃貸料値切りのタイミングは「取引交渉の最後の最後」(写真/Canva)

焦りの気持ちに負けてはいけない理由

もうひとつ大切な話をします。

物件を探しているのに、なかなか物件が決まらないときに陥りやすい落とし穴の話です。

こういうとき、不動産屋さんの放つ必殺のストレート常套句、「人気のある物件なのですぐに決まってしまいます、早い者勝ちです」をやり過ごすのが非常に難しい心理状態に陥ります。不動産屋の友人曰く「特になかなか決まらなくてもはや背水の陣になっている人にとってはかなり効きます」。

「とてもいい立地なんだが家賃があまりにも高い」

「立地は悪いんだが家賃がかなり安い」

と、明らかに条件から外れている場合は、グッとこらえてその物件はやり過ごしましょう。

物件は常に出てきては消えていくものです。

だからこそ、自分が探そうという時でないなら、見向きもしなかった物件に揺さぶられないこと。「そんな物件、知らなかったことにする」でやり過ごすのです。

まだ準備段階で目標貯金額に到達していないけれど良い物件が見つかってしまった場合なども、それは「まだ探す前の自分」ということで知らなかったことにしましょう。


メソッドを2020年に初の著書として出版。「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えをみつけた

運命的な出合いは必ずある

「いや、こんな素晴らしいところは二度とない、運命を感じる」とかそういうドラマチックな心情になる、またはなりたい(?)のもわかるのですが、予算のタイミングも全てひっくるめて出会うようなところが運命的な出合いというものです。

これ、理想的な最高の物件に出会うまで待てということではありません。

運命的な出合いはある程度自分で生み出せます。

ベストではないながらも現状で考えうる限りの最大限にベターな物件の基準を自身の中で取り決めてそれに従うようにするのです。

そういうところが出てこなかったらまだGOサインではないと割り切りましょう。

そういうところが出てきたら「これが運命」と決めていい。

なかなかいい場所が出てこなくて、生活費が怪しくなってきたらどうするか。

そんなときは、「期間限定なのだから」と割り切って、日雇いの仕事でもなんでもして食いつなぎましょう。その期間が、実は、有益なものだと後に気づくことになるはずです。

運命の物件は必ず見つかる

さて、次回はカフェを立ち上げるときに掲げるべき「信条(クレド)」についてお伝えしますね。

珈琲文明店主、赤澤智でした。

この記事を書いた人

赤澤智
赤澤智珈琲文明店主
脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」

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