絶対に失敗するカフェの作り方ワンオペの小さなカフェ開業で重要なのは、立地選びと物件探し。小さな駅の人の流れの多い場所を選ぶとうまくいく理由とは?
喫茶店やカフェを開業するために必要な立地選びは、一等商圏の一等立地ではなく……。行列が絶えない人気喫茶店「珈琲文明」のマスターが語る、選ばれる店になるために必要なこと。
プロフィール
珈琲文明店主赤澤智
飲食店立ち上げの物件選びのポイントは「商圏」
今回は、自分のカフェを立ち上げる場所、つまり立地の選定についてお伝えしていきます。
立地の選定のポイントはいくつかありますが、まずは、商圏の視点で見ていきましょう。
一等商圏とはいわゆる大都市(新宿・渋谷・池袋等)で、一等立地とは駅ビルや駅前徒歩1,2分などもはや黙っていても人が溢れて入って来るような場所、いわゆる「一等地」というやつですね。
この連載の読者に対して、私は「ワンオペの個人店」を想定していますので、それを踏まえてお話します。
一等地でカフェを立ち上げるなんて考えない
まず「一等商圏の一等立地」……はい!最初からアウトオブ眼中、無視しましょう!
ワンオペで一等地でカフェを立ち上げようとすると絶対に失敗します。大手チェーン店にここはお任せでよいです。
次に「一等商圏の二等立地」はどうでしょうか。
大手とまではいかないまでも「飲み屋」や「レストラン」で20坪以上はあり、ある程度の単価と団体客も見込め、スタッフが複数いて人数をさばけるお店はここが狙い目です。
私がそう考える理由をこれから具体的に述べます。
たとえば、私は先日、中学の同窓会のお店を探していたのですが、場所の選定の時点で既に「新宿」か「渋谷」に限定せざるを得ませんでした。
というのも遠方地方から来る友人たちにとって「わかりやすい駅」というのももちろんですが、関東にいる連中にとっても「あらゆる居住エリアから平等にアクセスの良い駅」といえばやはりこの辺になるのです。
ただし、お店選びに関しては駅前でなくても良いと判断しました。
駅前は林立乱立が酷すぎてむしろ迷うため、ある程度駅から離れていても、スマホでのマップ検索が充実している昨今では、「わかりやすい駅の少し離れたところ」のほうが個性的な名店が潜んでいる……そんな理由で幹事の私は一等商圏の二等立地の店を予約しました。
おそらくこういう発想のお客さんは多いでしょうから、この手の立地は呑み屋などにとっては有効だと考えるわけです。
ワンオペのカフェ経営なら小さな駅の好立地
しかし、この連載の読者想定対象である「ワンオペカフェ個人店」には当てはまりません。
ある程度の単価と団体客は見込めず、スタッフが複数いて人数をさばけるわけでもないからです。
それではどういうポジションを狙うか?
それはズバリ、「二等商圏の一等立地」です。
駅で言えば「特急や急行、快速が停まらない」駅です。さらに、一日の乗降客数3万人以上はいて欲しいですね。条件に合う駅の中での一等立地(必ずしも駅前とは限らない)を狙いましょう。
わかりやすくお伝えするなら、「新宿にあって結構離れた穴場」よりも、「東中野で人が流れている好立地な物件」が狙い目ということです。
立地選びで最も重要なのは「動線と人の流れ」
さてそしてここから先の話が非常に大切です。
一等地というと当然ながら「駅前」が思い浮かぶかもしれませんが、実は、最も重要なのは「動線と人の流れ」です。
仮に乗降客数10万人のA駅周辺と3万人のB駅があるとします。しかしA駅というのは商圏が四方八方放射状に伸びており、人の流れは分散しているとします。
一方でB駅は人の大きな流れは基本的にただ一本の道だけだったとします。
不動産価格的にはやはり断然A駅周辺のほうが高いのですが、狙い目はB駅のほうです。
というのもA駅周辺は人の流れが放射状に分散している分、各店舗物件前の通行人数も分散されるという結果となり、人の流れがただ一本の道に集約されているB駅周辺店舗前の通行人数とほぼ変わらない状態になっているといえるのです。
そしてもちろんA駅の物件に比べてBはかなり家賃が安いという理由から狙い目はB駅周辺、即ち「二等商圏の一等立地」ということです。
「人の流れ」が集中する各駅停車駅でカフェ開業
私の店を例えにして、実例を挙げますね。
私のお店『珈琲文明』があるのは東急東横線の白楽という各駅停車しか停まらない駅です。
急行が止まる近い駅としては日吉や綱島がありますが、これら日吉や綱島駅前はまさに放射状に発展している商圏で人の流れが分散します。
一方の白楽は駅前から神奈川大学を結ぶ六角橋商店街がほぼ通行動線を独占し、人の流れもここ一か所に集中しています。
日吉や綱島の放射状に数か所ある商店街の中の1つの店舗と独壇場の六角橋商店街内にある1つの店舗では実は通行人数はあまり変わらないのです。
そして家賃相場も白楽のほうがガクンと下がります。
ちなみに白楽駅の一日の乗降客数は渋谷の隣の代官山駅のそれよりも多いのです。
でも白楽駅前の家賃と代官山駅前の家賃は2、3倍じゃきかないほど代官山のほうが高いのはなんとなく想像つきますよね。
立地選定のポイントはこういう部分なのです。
駅周りの人の流れを調べて物件を探す
どこのエリアがどれだけの人口で、乗降客数がどれくらい……という情報は、ネットですぐに調べられます。ただ、「エリアにおける人の絶対数がポイント」だなんてことはありません。あたりまえの話ですが人口も乗降客数も多いエリアは家賃が高いのです。
ですから単なる人の絶対数ではなく、人の流れを重視しましょう。
この「人の流れ」については、必ず自身の目で直接確かめて、体感してください。
通行量調査などを人に頼んだりしないでくださいね!
かといって自分で路上で椅子に座りカウンターを押していく地道な調査をしろということでもありません。
それは単なる数の罠にはまる恐れもあるのです。
実際にその場所に行き「人の流れ」を体感する
たとえば、私のお店のエリアは学生街なので通学時間の歩行通行量調査をしたら物凄い数になります。
しかしそれはあくまでも学生たちが朝、一心不乱に学校に向かって歩いているだけ。
物凄い数の学生さん達が単に「通り過ぎている」だけです。
これもまた、数字で見るだけではわからないので、自身で体感してみるしかありません。
ですから、個人的にはあまり細かい調査うんぬんよりも、実際にその街に身を置き、敢えて大雑把に人の流れの空気を感じ取るほうが効果的だと思います。
ほんの一軒、ほんの一本、他の建物や道を挟んだだけで何故か激的に人の流れが変わる場所(しかも家賃はあまり変わらない)というのが必ずあります。
そしてこういう場所というのは理屈ではなく、なんともいえないグッとくる空気というのがあります。それは一般庶民を自覚する普通の人であればあるほどその感覚を信じていいと思います。
さて、立地物件編は前回と今回で完結させたかったのですが、「不動産屋さんとの関係や交渉について」という重要項目を外すわけにはいきません。かつこれからそれを述べるにはあまりに長文になり過ぎるため、やむなく次回に持ち越します。
珈琲文明店主、赤澤智でした。
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この記事を書いた人
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脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」