高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデル事業計画の立て方(その1)ビジネスプラン【事業計画はストーリーが大切!】
「事業計画の立て方」について、今回と次回の2回で解説していきます。今回は(その1)ビジネスプラン(コンセプト)について扱います。
プロフィール
プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎
目次
事業計画には「定性」「定量」両方が含まれる
事業計画全体は、「定性的な内容」と「定量的な内容」の両方があります。「ビジネスプラン(コンセプト)」は「定性的な内容」なので、WordやPowerPointなど使いやすいもので作成して問題ありませんが、「実行計画部分」と「数値計画部分」の「定量的な内容」については、Excelで作成しておくと、数値の計算や修正をしやすくおすすめです。
今回は事業計画のなかでも、まずは前半のビジネスプラン(コンセプト)のパートで書くべき要素について、事例を交えつつ解説します。
事業計画全体におけるビジネスプラン(コンセプト)の役割
ビジネスプラン(コンセプト)は、ビジネスをする本人(会社)のことや、ビジネスモデルや市場調査など、ビジネスアイデアからビジネスモデルを作る過程で集めた情報や作成した資料内容が活用できるのが特徴です。
事業計画は、全体を通じて一貫性とストーリーがあるように、つながりが見えることが大事です。一連の「ストーリー」になっていることで、読み手に伝わりやすくなります。
ビジネスプランのパートは、定性的な内容で自由度が高い箇所です。読み手が知りたいことを、きちんと伝わる形で表すように心がけましょう。 例えば、特に事業に関連した情報は丁寧に自己開示したり、必要なグラフや図表、専門用語の説明などを加えたりしていきます。
「ビジネスプラン(コンセプト)」の具体的な書き方
1. エグゼクティブサマリー
事業計画全体を1枚にまとめたものを、「エグゼクティブサマリー」と言います。
(サンプル)のように、読み手が短時間で要領をつかめるよう、ポイントを押さえて過不足なく、誤解のない表現で伝えていくことが重要です。
事業計画全体の情報を盛り込むため、他の項目が全て出来てから作成します。
2. 会社概要
会社概要は、事業を行う事業体について記載していきます。法人ではなく個人の場合は、書ける範囲で記載すればよいでしょう。
屋号とは、フリーランス・個人事業主がビジネスを営む際に用いる名称のことで、会社における「会社名」に相当します。副業であっても、個人事業主として開業届を出すことで屋号をつけることができます。
3. 主要経営陣の略歴
一般的な履歴書とは異なり、今回の事業に関連して重要な情報を略歴として記載します。顔写真を入れることもあります。
4. 事業ビジョン
事業ビジョンでは、事業を進めていく上で目指す未来や目標などを書きます。
必要であれば、サービス利用者数や売上金額などの数字を盛り込んでも構いません。
5. 製品・サービスの特長
商品やサービスについて出来るだけ具体的に記載していきます。
特に顧客層が限定的で、読み手が相場観を持っていないものの場合、ベンチマークにしている既存の商品やサービスを比較対象として記載すると伝わりやすくなります。
6. ビジネスモデル
これまでに作成したビジネスモデルのフレームワーク「リーンキャンバス」をそのまま活用することができます。
7. 顧客・市場規模
顧客や市場については、ビジネスモデルを作る過程で入手した情報や、自分の主張を裏付ける市場調査の結果などが入手できれば、客観的なデータとして、情報の信頼性を担保できるものになります。
探し方としては、「ターゲット顧客」または「扱う商品・サービス名」と、「市場」を組み合わせて、インターネット検索を行います。
単にキーワード検索をするだけでは、断片的な情報や引用した情報が混ざっています。見つけたページに引用元があればそこをたどり、データとして活用するのは原則一次情報としましょう。
例えば、知育玩具の場合は「乳幼児 教育 市場」「玩具 市場」と入力し、市場規模や市場調査の結果が分かる情報を得ました。情報の出どころは、各業界の市場調査を請け負う企業(例:株式会社矢野経済研究所)や、業界を代表する団体で市場調査を行うところ(例:一般社団法人日本玩具協会)などです。
8. バリュープロポジション
これまでに作成した「バリュープロポジションキャンバス」をそのまま活用することができます。
9. 勝ち続けるための独自の優位性
独自の優位性とは、「競争優位性」とも表現できます。
第22回のコラムで紹介したように、「差別化集中戦略」で、自分の「半径5メートルのビジネスモデル」ならではの「競争優位性」を考えて書いても良いでしょう。リーンキャンバスを作成している場合は⑨圧倒的優位性の項目にも記載しています。
また、他にもSWOT分析というフレームワークを使って書く方法もあります。内部環境の強みと弱み、外部環境の機会と脅威を分解し、それぞれの組み合わせて考え得ることを列挙しても良いでしょう。
10. 戦略的提携
事業を創めるにあたり、戦略的に提携を結ぶ取引先等について記載します。自分のビジネスにとってのメリットだけではなく、相手にとって何らかの価値提供が出来るWin-Winの関係が想定される先が最適です。
また、「リーンキャンバス」の⑤チャネルを念頭に、中長期的に発掘していきたい提携先があれば、それも記入しておきましょう。
(参考)「知育玩具の企画」の例
・知育玩具や子ども用品の紹介をする、フォロワー数の多いSNSユーザー(インフルエンサー)
・乳幼児の親向けの情報発信サイト
・おしゃれなギフト情報発信・販売サイト
・国産のアイテムを扱う雑貨店
・木材で有名な自治体
など。
事業計画、後半の定性的な情報の書き方は次回へ
さて、今回は事業計画の中でも「ビジネスプラン(コンセプト)」について解説してきました。
今回扱った内容は、定性的ですべてに明確な形があるとは限りません。それゆえに頭を使いますが、自由度があり、自分の思い・熱量を伝える余白があるとも言えます。
自分の「半径5メートルのビジネス」を実行していく第一歩となりますので、ぜひ楽しみながら自分の事業計画を作成していってみてください。
それでは、次回は事業計画の後半「実行計画部分」と「数値計画部分」について扱います。
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この記事を書いた人
- プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。
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