高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデルビジネスモデルだけじゃNG?!ビジネスを加速させる「事業計画」の立て方
ビジネスモデルじゃ足りない?ビジネスモデルはあくまでコンセプト。コンセプトだけでは事業は始められない。今回はビジネスモデルを形にするための「事業計画」について解説。事業計画を作る時に相談できる窓口も紹介。
プロフィール
プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎
前回の記事はこちら
++事業計画ってどう立てたらいいの?++
中堅学習塾チェーンに勤務する松井ゆみ(32歳)は、勤務先が大手学習塾チェーンの傘下になると知り、今後のキャリアのために副業や起業を考え始めた。
自分のWill Can Mustから知育玩具の商品企画というビジネスアイデアを考え、まずは副業としてはじめてみようと考えている。
ゆみはこれまでに、第17回で紹介した「リーンキャンバス」というフレームワークを使い、ビジネスアイデアからビジネスモデルを図解化してきた。
ゆみはビジネスを始める準備は整ったように思えたが、起業家の友人の勧めで『創業相談窓口』に行ってみることにした。そこで専門家のアドバイスに沿って事業計画を立てようとしたところ、「いざ創めるとなるといくら必要なの?どのくらい儲かりそう?」と、特に数字については疑問も不安も尽きない。 事業計画について何を考えればいいのかわからず、途方に暮れてしまった…
目次
ビジネスモデルができたら次は実行のための「事業計画」を作ろう
これまで考えてきたビジネスモデルは、事業を行うための企画、つまり「事業企画」であり、事業の検討初期段階でのコンセプトをまとめたものです。
ビジネスとして必要な要素は含まれていますが、コンセプトだけでは、実際に事業を進める際に必要な「いつ、何をするのか?」といった行動や、「時間」「お金」「商品(またはその材料)」などがいつ、どれくらい必要なのか、といった経営資源の備えもままなりません。 そこで、ビジネスモデルから、実行を見据えた「事業計画」を立てていく必要があります。
上図の通り、ビジネスモデル(事業企画)を作成していれば、事業計画に必要な要素の一部はすでにあると言えます。 事業企画と事業計画の構成要素の主な違いは次の通りです。
事業計画には、ビジネスモデル(事業計画)の内容に加えて、事業戦略、実行施策、収支計画が含まれます。つまり、ビジネスモデルでまとめたコンセプトを具体的に実行するための、「日付や金額、売上数等の数字」を入れた計画です。といっても、単に各項目の数値計画を立てればよいというものではありません。
事業計画は、現状やビジネスモデル、事業展開(実行計画)を一貫したストーリーとして伝えることで、その役割を果たすことができます。
事業計画が持つ4つの役割
事業計画はあなたの「半径5メートルのビジネス」を整理して、他者に共有して、これに基づいて行動し、最終的に検証して次に活かすために作るものです。 その役割は次の4つに整理できます。
①整理ツール
事業計画を作る過程で、自分の事業アイデアを様々な観点から考察することができます。
また、ビジネスでは複数の関連し合う要素について考えなくてはならない為、情報を整理することで、リスクや仮説を明確化することができます。
②コミュニケーションツール
ビジネスは自分一人で完結するものではなく、資金調達で関係する金融機関や、事業に直接関わるスタッフ、あるいは材料の仕入れ先や営業活動等の事業パートナー等、他者とのコミュニケーションをとる場面があります。
事業計画は彼らとの情報共有や、事業に必要なことをしてもらう際に役立ちます。
③実行支援ツール
事業計画で、具体的に達成すべき目標や実行施策、収支計画を定めておくことは、事業を実行していく上での指針となります。
計画を立てる際には、事業を進める中で検証すべきポイントや論点に関してインプットしたことなども記載しておくと指針としてさらに役立ちます。
特にビジネスを始めたばかりの頃は、計画通りにいくとは限らず、臨機応変な対応をする場面も出てきます。
そうした場合にも、指針があることが判断材料となり、後述する検証にも役立ちます。
④検証ツール
実行施策や収支計画は実行して結果が出たら終わり、ではありません。事後検証として、実際の行動や数値結果と、実行施策や収支計画として予定・予測したこととの差異を確認します。
また、検証すべきポイントについては、得た情報をもとに仮説を検証していきます。
このように、実行した結果の検証を踏まえて、次の事業計画に反映させていきます。これを継続していくことで、予測する力は着実に鍛えられます。
一人で悩まない!
事業計画作成で困ったら、「創業相談窓口」を活用しよう
ビジネスモデルは、フレームワークを使って自分一人で進めることも十分に可能です。しかし、様々な要素を考えていく事業計画作成は、一人で考えていると行き詰ってしまったり、あらぬ方向にいってしまったり、ヌケモレが出たり……となる可能性が高いもの。
そこで、事例の「創業相談窓口」のような、創業支援サービスを活用して使っていくものアリです。
国の創業支援の方針もあり、地方自治体や公的機関では、様々な創業支援の取組みを行っています。
事業計画作成であれば、経営の専門家に個別相談できる「創業相談窓口」が最適でしょう。ほかにも、創業したい人向けに会計やマーケティングの基礎知識などのインプットと、事業計画作成というアウトプットを組み合わせた集合型研修の「創業塾」、あるいは創業相談員がいる「コワーキングスペース」を提供しているところもあります。
これらのサービスは無料、または非常に安価に設定されていますので、気になったらぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
<創業相談窓口の探し方>
創業相談窓口は全国にありますので、自分の身近な場所を探してみましょう。検索方法は下記のとおりです。
■自治体が運営するもの
自治体名(都道府県や市区町村名)と創業に関連したキーワード(例「創業支援」「起業」「スタートアップ」など)を組み合わせて、インターネット検索してみましょう。
■公的機関が提供するもの
公的機関として代表的なのは、国が全国に設置している経営相談所「よろず支援拠点」です。
47都道府県にあり、地域の中小・小規模事業者、起業予定の人が「何度でも無料で」相談することができます。
「よろず支援拠点 一覧」
※下記のページより、各拠点のページへアクセスできます。
「半径5メートルのビジネス」を加速させるための「事業計画」
ビジネスモデルは、あくまでも事業企画であり、事業検討初期のコンセプトです。 時には「創業相談窓口」などで必要な専門家の支援も得ながら、実行施策や数値計画を含めた事業計画を作成して、あなたの「半径5メートルのビジネス」を実行に向けてすすめて行きましょう。
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この記事を書いた人
- プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。
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