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キャリア設計

正社員にこだわらないワーママのキャリアデザイン。パートと副業から女性起業家へ

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出産・育児のタイミングでキャリアデザインを見直す女性は多い。バリキャリからパートタイムにシフト、副業をしながら、自分のやりたいことで起業した土屋みなみさんに話を聞きました。

女性のライフステージの中でイベントは出産・育児は大きなイベントといえます。子どもを授かると嬉しい反面、これまで積み上げてきたキャリアが中断するのではないかという不安に直面する人も多いのではないでしょうか。

キャリアの中断は収入に直結することもあり、育児期間中はハードワークに耐えながらキャリアを継続する道を選ぶことになります。またワーキングマザーの悩みはキャリアだけにとどまらず、自分の趣味やライフワークさえも手放さざるを得ないことも。自分のキャリアか育児かーー多くの女性が悩みを抱えるキャリア問題。

そこで、キャリアも育児も家庭も、自分の思うようにデザインしているバギーランステーションの代表・土屋みなみさんにお話を伺いました。

正社員として仕事にフルコミットし、ライフワークではランニングに打ち込む、仕事も趣味もバリキャリ思考から一変、出産・育児を機にパートタイム勤務にシフトしたのです。週3日のパートのかたわら出産で出会ったバギーラン(ランニングができるベビーカー)の普及という副業をスタート、起業に至った経緯から見えてくるのは人生において「何を大事にするか」という軸を持つことでした。

【妊娠・出産・育児】仕事も趣味も諦めたくない

わが家には、夫と3歳の息子と2歳の娘がいます。育児をしながら事業を運営しているのですが、ここに至るまでに大きな葛藤がありました。まずは私の経緯をお話しさせてください。

起業前、私は食品スーパーマーケットを運営する企業に勤め、バイヤーとして残業や休日返上も厭わないほどのバリキャリ思考でした。しかし、女性は妊娠・出産となると仕事のキャリアが一時中断されてしまいます。私は妊娠中に「育児がはじまったら、これまで通りの働き方はできない」と思い悩みました。

仕事だけではありません。私には大好きなランニングがありました。『チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン118キロの部(女子20代 準優勝)』『2017年24時間ゆめリレーIN湘南ひらつか 24時間個人の部(女子2位)』など数々の大会に出場してきた、趣味の域を超えて続けてきたランニングのキャリアも中断されてしまいます。

望んでいた妊娠でしたが、一方でネガティブな気持ちも湧いたのです。

そんな中、ランニング用バギー(ベビーカー)に子どもを乗せて走るバギーランを知ったのです。Googleで《産後 ランニング いつから》と検索したら、バギーランに関する記事が……。「こどもが産まれてもこんなふうに走れるんだ!」と知っただけで、まずはポジティブになれました。

しかし、バギーランに関していろいろと調べても、まとまった情報が得られる専門サイトは無いし、バギーラン協会のようなものも無い。バギーランが体験できる場所も、東京・有明に1ヶ所あるのみ。しかもそこでレンタルできるランニング用バギーは1種類だけでした。

私は産後、子どもがバギーランに乗れる月齢(*1)になった頃に、有明へバギーランの体験に行きました。そこで私は感動に打ち震えたのです。

「すごくよかった! 救われた。夫とまた、妊娠前みたいに肩を並べて走ることができた。私たち夫婦は結婚前からデートといえばランニング。このバギーがあれば、愛おしいわが子と一緒に走ることができる。子育ても、趣味も、全力で楽しみたい!」と。私はすぐにランニング用バギーを購入し、バギーランを始めました。

それと同時に、バギーランが必要な方は他にもきっといるはずだと考え、バギーランの魅力を日本で伝えたいと思うようになったのです。

*1. ランニング用バギーの対象年齢は生後6ヶ月から(ランニングは生後9ヶ月から)が一般的です

【ライフシフト】正社員からパートになり、副業でスタート

早速、育休中にバギーランを日本で広める活動を開始しようと考えました。しかし、ここで壁にぶち当たります。勤めていた会社が副業禁止だったのです。つまり、お金をもらって何かをすることはできないということ。

そこで無料でできることを考え、Zoomで『バギーランについて語る会』を開催。日本でバギーランをされている方を集めたのが最初でした。それを重ねていき、いよいよ子どもを保育園に預けて復職するぞというタイミングで、仕事と育児をしながらバギーランの活動をするのは難しいと考えました。

またその頃、私が初めてバギーランを体験した有明の施設も閉館になり、さらに、唯一の日本製ランニング用バギーも生産終了になってしまったのです。

「このままでは日本からバギーランの灯火が消えてしまう!」

私の中で勝手な使命感が燃え上がり、「私がやらなきゃ」と決意。そこで選んだ道は、正社員としての復職ではなく、週3日のパートとして再雇用してもらったのです。パートだと副業禁止の規定は適応されませんし、バギーランの活動をする時間が確保することもできるからです。

私は、パートで働きながら起業しました。とはいえ、収入は激減。正社員の頃と比べて給与は4分の1以下に。ただし、収入がゼロにはならないので、精神的な安定を得られるメリットはあります。

【ワーママ起業】自分のタイミングを見つける

そうしてパートタイム起業から11ヶ月がたった頃、私は完全独立を決意しました。お伝えしたいのは「パートタイム起業という期間を経ての独立方法もある」ということです。

退職してすぐに起業するのはかっこよく思えますが、最初からうまくいくとは限りません。なので、並行期間を持つのは重要。パートで収入を得ながら事業を構築し、自分のタイミングで踏ん切りをつけることができるからです。

私の場合、起業当初は手探り状態だったのですが、この11ヶ月間で方向性ややるべきことが見えてきて「バギーランに全振りしよう」と決意できました。具体的な事業内容は、ランニング用バギーのレンタルサービスとバギーラン体験イベントの開催です。

また、Zoomで開催していた『バギーランについて語る会』で培った人とのつながりも大きな力となりました。コミュニティーは大事ですね。ユーザーのことが知れるし、「これどう思う?」などと相談もできます。また、日々応援してくれたり、イベントの手伝いにきてくれたり、トークショーに一緒に登壇してくれたり、Tシャツのデザインを一緒に考えてくれたり……いろいろなサポートもいただきました。

子どもを授かって嬉しいと思う反面、これまでどおりの生活を続けられない不安を抱えている方。私の一例ではありますが、ご参考になれば幸いです。

私は、すでに道筋がある事業よりも、自分で道筋をつくっていかないといけない事業の方がワクワクします。私が描きたいのは、バギーランの文化が日本中に広がっていく未来です。すぐに収益が発生しづらい事業に関しては、特にパートタイム起業は適していると思います。

取材/執筆:北野啓太郎

この記事を書いた人

北野 啓太郎
北野 啓太郎ライター
文章、写真、動画を駆使したWebコンテンツ制作が得意なフリーランサー。会社員時代に始めたブログがきっかけでヘッドハンティング。レゲエ専門メディアの編集長を経て、独立しました。強み:初対面の方と何時間でも話せる。インタビューも好き。弱み:打たれ弱い。

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