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キャリア設計

近づくバブル世代の大量定年。ロールモデルがない50代女性、次のキャリアは「好きなこと」がカギになる?

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社会で活躍できる環境が整うとともに、セカンドキャリアを考えるミドル世代の女性が増えています。今の職場を飛び出しても意義ある職業人生を送るためのコツを、専門家にうかがいました。

プロフィール

キャリアコンサルタント小島明子

こじまあきこ 日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト。国家資格キャリアコンサルタント。金融機関を経て日本総合研究所に入社。働き方に関する調査研究や、企業向けに女性活躍や働き方改革推進状況の診断を行っている。著書に「『女性と定年』(金融財政事情研究会)などがある。

1986年に施行された男女雇用機会均等法を皮切りに、長い期間をかけ、女性が社会で活躍できる環境が整ってきました。

あわせて出てきた課題が、40~50代の女性のキャリアシフトやセカンドキャリアです。先輩女性のロールモデルがまだ少ないなか、どのようにキャリアを切り開くべきでしょうか?

今回は、日本総合研究所 創発戦略センターのスペシャリスト、小島明子さんよりアドバイスをいただきました。

外部のネットワークをつくる

70歳でフリーランスとして活躍されている男性に、お話をうかがったことがあります。

その方がフリーランスを目指したきっかけは、大企業で技術職をしていた40歳の頃。そのときに、嫌いな上司に出会ったそうです。

それで、定年までいるつもりであったのが、仕事について深く考えざるを得なくなりました。それから、社外に目を向けて積極的に活動するようになったそうです。ただ、すぐ転職をするのではなくて、役職定年まで勤めて、準備した上で辞めてフリーランスになりました。

この話を聞いて、セカンドキャリアで重要なのは、今の仕事をしながら外部のネットワークを意識して作っていくことだと実感しました。ここで言うネットワークには、地域でのボランティアや頼まれごとなど、さまざまな活動も含まれます。金銭面の問題が起こらないようにはしつつ、早いうちにそうした準備をしておくことが大事なのです。

内向的な性格だと、見知らぬ外の世界に一歩踏み出すことに大きなためらいを感じるかもしれません。その場合は、部内で一緒に仕事をしたことがない人や、社内の違う部署の人と仕事をする機会を、もうけることから始めるとよいでしょう。そこから少しずつ広げて、社外の人と一緒にプロジェクトに携わるなどしていくのです。

ちなみに、21世紀職業財団が2022年に実施した、「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」というのがあります。それによると、子どもが生まれる前から女性は、「自分のキャリア形成よりも、配偶者のキャリア形成を重視しようと考えていた」という割合が最も高く、46.9%にのぼるのですね。この、働いてはいても、旦那さんのキャリアをちょっと優先させてあげたいという回答が印象に残っています。

また、仕事は続けたいし、上の役職も目指したい。けれども一方で、男性上司がこなしているようなハードワークは許容しがたいというジレンマを持つ女性も少なくありません。そういう気持ちになったときも、外部のネットワークづくりに軸足を置くことはよい考えだと思います。

「好きなことをする」という視点で副業を始める

セカンドキャリアを見据えて、副業に携わることもおすすめします。

これは、「お金がいくら得られるか」より先に、「好きなことをする」という考えで始めるといいでしょう。

中高年向けのキャリア研修のなかで、「昔好きだったことを書いてください」と言うと、ほとんどの人は、ぱっとは書けないという話をお伺いしたことがあります。それは、長い間にわたって気持ちを押し殺して、会社で働いてきた人が多いからだとお伺いしたことが印象的でした。

今は、「好き」を追い求めていい時代だと思います。好きなことなら、努力を感じずに自分で学ぶようになります。そのほうが道が開けたり、本業と親和性が出てきてエンゲージメントが高まるなどメリットはたくさんあります。

昨今は「コスパ」という言葉がもてはやされていますが、あまり経済的価値ばかりフォーカスするのではなく、純粋に自分が興味を持てることにチャレンジしてみるのがいいと思います。これは上で述べたネットワークづくりにも通じることです。

リカレント教育は前向きに

リスキリングやリカレント教育が注目されているのは、ご存知のことと思います。

リスキリングは、会社の戦略として、スキルを身につけていくというやり方です。業務の一環としてスキルを上げることで世界も広がりますが、リカレント教育は、より自分が好きなことを学ぶ方向で考えましょう。

拙著『女性と定年』には、リカレント教育の事例としてビジネススクールで部下のマネジメントを学んだ人と、大学院でMBA講座を受講した人を取り上げています。どちらも40歳を過ぎてからの学びです。彼女たちは、それによってスキルアップやキャリアアップにつなげていきました。

リカレント教育を受けたことがない理由として、学費や受講料の負担の高さを挙げられる方もいますが、国の教育訓練給付金を活用する方法もあります。2019年に新設された特定一般教育訓練給付金ですと、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の40%に相当する額が給付されます。この場合、支給額の上限は20万円です。対象となる講座は指定されておりますが、厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システムで調べることができます。

今の勤務先の仕事内容との直接の繋がりはなくても、自分が興味を持てることを学ぶことで、キャリアを変えるきっかけとなるかもしれません。セカンドキャリアを漠然とでも考えている人は特に、リカレント教育に検討してみてください。

「深化と進化」で仕事と人生を押し広げていく

50代前半までの、定年はまだ具体的に見えにくい年代の女性にお伝えしたい言葉に、「深化と進化」というのがあります。

「深化」とは、今の仕事をより突き詰め、深堀りすることです。そうして、高いスキルを身につけ、できるところまでチャレンジし続けることです。「進化」とは、横への広がりを伴うものです。「新たにこんなプロジェクトやってみよう」「未知の人間関係の中に飛び込んでみよう」など、活動の幅を広げていくかんじですね。深さと広がりを、今やっている仕事を続けながら、広げていく。この取り組みがいずれは、定年前後のセカンドキャリアの構築に大きく役立つものと思います。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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