50代の転職に必要な資格とは? 教育訓練給付制度の活用法
教育訓練給付制度を活用すると資格を取得することにより給付金がもらえます。教育訓練給付制度の種類や要件についてハローワーク新宿に聞きました。
50代が転職を考えた場合、「転職に有利な資格を取ろう」と考えるのではないでしょうか。雇用保険に加入しかつ、支給要件を満たしているなら、教育訓練給付金制度の利用によって自己負担率を減らし、資格等を取得できます。人気のキャリアコンサルタントも、教育訓練給付制度で取得可能です。世界一の乗降者数を誇る新宿駅前にある「ハローワーク新宿」に50代の転職事情について聞きました。新宿区は都庁中心に大企業が集まる新都心、日本一の歓楽街・歌舞伎町、最大のコリアンタウン大久保、高齢化が進む大規模団地・外山団地を抱え、多種多様な業種、人々が集まる日本の縮図とも言えるエリア。今のリアルなミドル・シニアエイジの転職状況がわかるのではないかと考えたのです。
ハローワーク新宿の管理部長・宮嶋修さん、職業相談第一部門統括職業指導官・荒井和則さん、雇用保険給付課長・寺澤仁さんに50代に有利な資格と教育訓練給付金制度について伺いました。
目次
50代におすすめの資格とは?
50代からセカンドキャリアを考え、資格を取って仕事に結びつけたいと考える人は多いもの。しかし資格によっては単なる趣味で終わってしまいます。将来を見据えて資格を取るなら、仕事に直結するような資格がおすすめです。
ハローワーク新宿の管理部長・宮嶋さんによると、高齢化社会を踏まえ、人材不足の看護師や介護士が採用に結びつきやすいと言います。
「これまでパートタイムの看護師補助であっても、教育訓練給付金を活用し、正看護師資格を取ることで給与を増やすことが可能です。ただし看護師や介護士は仕事の内容に比較し、賃金が低いのが課題と言えるでしょう」
【令和5年8月分 ハローワーク新宿バランスシート(求職賃金状況)】
50代の転職で資格は有利になる?
50代は「経験×資格」で転職市場において強みを発揮できるのでしょうか? 宮嶋さんに伺いました。
「実際の業務に関連した資格を取ると転職活動で役立ちます。たとえばFPは労務管理の経験があったり、それに類する仕事を経験したりした人には有利です。しかし未経験から始める場合は単なる勉強で終わってしまうかもしれません。いくらFPを取得しても、関連する業務の経験がないと、FPを生かした仕事に就くことは難しくなるでしょう」
教育訓練給付金制度には3つある
雇用保険に加入しかつ支給要件満たしていると、教育訓練給付金制度を利用し資格を取得することが可能だと宮嶋さんはいいます。
「教育訓練給付金を受給できる条件は、雇用保険の加入と加入年数や受講する講座が厚生労働大臣の指定を受けていること等で決まります。教育訓練給付金制度には『専門実践教育訓練給付』『特定一般教育訓練給付』『一般教育訓練給付』の3種類があります」
1.専門実践教育訓練給付
2.特定一般教育訓練給付
3.一般教育訓練給付
それぞれの訓練によって受講の期間が異なります。一般教育訓練は訓練期間が1ヶ月程度のものが半数を占め、すぐに仕事や就職に役立つものが多くなっています。それに比べて専門実践訓練は1年から2年をかけ習得するものが半数以上になっていますが、専門性を身につけることができるのが特徴です。
3つの教育訓練の訓練期間は?
専門実践教育訓練給付とは
年間上限56万円、最大224万円(管理栄養士、専門職大学など)
宮嶋さんの話では、人気のキャリコンや看護師でも費用負担が半分で済むそうです。
「労働者の中長期的キャリア形成に関する教育訓練です。キャリアコンサルタント・看護師・第四次産業革命スキル習得講座・大学専門学校などの講座があります。就職できると費用の最大70%(最大224万円)が支給されます」
概要は以下の表のように、要件があり、給付内容についても細かく定められています。
専門実践教育訓練給付の概要
具体的にどんな資格を取得できるのか、またどんな資格が人気があるのかについてです。以下の表は令和元年、令和2年、令和3年の主な訓練内容の受給者です。訓練を受けた資格で大きく伸びているのは介護福祉士。高齢化社会において仕事のニーズが高いことからすぐに仕事に役立つ資格ととらえる人が多いと言えます。
次に多いのがキャリアコンサルタント。コンサルタントでも国家資格ということで人気が高く、スキルの掛け合わせで取得する人も多いようです。
専門実践教育訓練の受給者ランキング
受給後の賃金変化
「専門実践教育訓練受講者のうち在職者の約4割(39.7%)が受講後に賃金が増加しています。40歳未満では5割以上の賃金が増加し、50代も受講後に賃金が3割増加していることがわかります」
特定一般教育訓練給付とは
最大20万円(介護福祉士、行政書士、FPなど)
特定一般教育訓練給付には、宅地建物取引士やFPなど再就職に有利な資格が多くあります。
「労働者の速やかな再就職や早期のキャリア形成に関する教育訓練です。社会福祉士・行政書士・宅地建物取引士・ファイナンシャルプランニング技能検定などがあり、介護福祉士や社会福祉士は人気があります。就職できると費用の40%(上限20万円)が支給されます」と宮嶋さんはいいます。
特定一般教育訓練給付の概要
受給後の賃金変化
一般教育訓練給付とは
最大10万円(中小企業診断士、英検、簿記など)
英検や簿記など女性が挑戦しやすい資格がそろっている一般教育訓練給付。宮嶋さんに伺いました。
「労働者の雇用の安定や就職の促進に関する教育訓練です。介護職員初任者研修・中小企業診断士・実用英語検定・簿記検定試験などがあります。就職できると費用の20%(上限10万円/年)支給が支給されます」
一般教育訓練給付の概要
一般教育訓練の受給者ランキング
女性に人気のある医療事務は、宮嶋さんによると常に求人数が多いそうです。
「『一般教育訓練給付』の講座に入っている医療事務は、クリニックとの相性に左右される仕事です。クリニックは個人経営であるため、女性がライフステージに合わせて長期で仕事を休むことは難しくなります。結婚・出産を機に退職する女性が多いことから、求人数も多い傾向があります」
教育訓練給付制度の検索方法
以下のサイトから講座の最新情報を検索できます。
教育訓練給付金制度を受講するには?
ハローワーク新宿の雇用保険給付課長・寺澤さんによると「専門実践教育訓練給付」「特定一般教育訓練給付」を受けるには、はキャリアコンサルタントのカウンセリングを受ける必要があります。
「カウンセリングを受けるには、予約を取り、キャリアプランシートへ記入します。提出したキャリアプランシートを基にキャリアコンサルタントが、「受講希望の訓練がどのようにキャリア形成に資するのか等」についてアドバイスを行います。教育訓練給付金制度は何度でも利用できますが、一度利用すると雇用保険の加入期間が算定し直しになるため、間断なく受講はできない仕組みです」
どんな資格を目指すのか、これまでのキャリアと照らし合わせて、専門家のアドバイスを受けながら、賢く教育訓練給付制度を利用し、資格を取ってセカンドキャリアを目指しましょう。
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この記事を書いた人
- うさぎと北欧を愛するライター。元Webデザイナー。インタビュー取材やコラムを執筆。強み:好奇心旺盛なところ。失敗してもへこたれないところ。弱み:事務作業が苦手。確定申告の時期はブルーに。
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