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絶対に失敗するカフェの作り方小さなワンオペのカフェを開業するなら「絶対に『なんでも屋』になってはいけない」理由。

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憧れのカフェ営業で絶対にやってはいけないこと。器用貧乏の何でも屋になると失敗する理由とは。

カフェ開業するならメニューは開業前決断する

店をやるなら何よりそのお店のメニューの中で、「4番バッター」を確定しないことには何も始まりません。

そして、4番はもちろん、全打順全て(サイドオーダーも)決めましょう。

開店前に、4番バッター(看板メニュー)を決めよう(写真/Canva)

メニューを決めないとお店の内装や設備も決まりません。後回しにすると、特に設備面で大後悔することになりかねません。

考えてみてください。メニューによって、冷蔵庫が家庭用レベルでもいいのか業務用が必要なのか、コンロは二口または三口以上必要か、など、さまざまな設備に影響します。

ダクトの整備が新たに必要であればかなり高額な出費になりますが、それがいるのかいらないのか、オーブンはいるのか、その設置スペースはどうするか、などなど(※内装の話はもちろん後日触れていきます)、メニューが決まっていないと進められないことがたくさんあるのです。

メニュー構成に関しては「これを主役にあとはこれとこれとこれでいく」というようにメニューを先に決断してから開業することになると思います。

いや、絶対にそうしてください。

客の「あれ置いて」というニーズに応えすぎない

晴れてお店が開店となり、お客さんがついてくると必ず起こる出来事があります。

それは、「あれ置いて」です。

店主が開店前に「日本酒を主軸に据えたお店でいこう」と決めたのに、開店後にファンになってくれたお客さんから、「シャンパン置いてよ、ほら、誕生日とかめでたい日もあるわけで」と言われたり、「女性客をつかむためにスイーツも充実させてよ、日本酒には合わないかもしれないけどさ」と言われたりするのです。

ここでやりがちなのが、その都度その声を取り入れて、結局居酒屋のようなラインナップになってしまうということ。

これは絶対に避けなくてはなりません。

メニューの数は増やせば増やすほど主軸がブレていきます。全員4番のチームはつまり、全員が強すぎて、結果的にどれも際立たずに弱くなるんです。

カフェを開業したら人の意見に耳を傾けすぎない

そして、主軸メニューのみならず、コンセプトの根本的な話にも助言してくれるお客様や友人が出てきます。

喫茶、カフェの形態のお店に

「喫茶店ならやっぱりモーニングやらないとダメじゃない?」
「今どきカフェといえばランチでしょ」
「アルコールは単価も上がるからおかないと」

もちろんこれらを言ってくれる人たちはほぼ全員がよかれと思って言ってくれます。ほんと、それは、ありがたい。だから「ありがとう」は伝えましょう。

語弊を恐れずに言うならば、感謝の気持ちを持ちながらも、オーナーのあなたはそれを「受け入れない努力」をし続けるべきなのです。

あらゆる試行錯誤の末に、「メニューはこれで行く!」と決めて、厨房設備や作業動線、仕入れ先の開拓、などなど全体を把握しているのは間違いなくオーナーのあなたです。

親切心から言ってくれているお客さんや友人はやはり全体像は見えていません。

開業前の段階では多くの店主が「大丈夫、オレ(ワタシ)のメニュー構成は揺るぎない。誰がなんと言おうと貫く」という姿勢があるんです。

でも、この姿勢をいとも簡単に揺るがすのが、実は開業後なんです。

開店後すぐには結果が出ずにお客さんもほとんど入らずに、毎日がなんとなく過ぎていく恐怖は体験した人しかわかりません。

加えてここで(今後述べていきますが)私が提唱する「絶対に失敗するカフェの作り方」の開業編は、「派手なオープニングをしてしまう」ことです。

ですから、ここは逆張りで、「脱・スタートダッシュ」、「オープニングを派手にしない」という手法をとって欲しいのです。ええ、必然的に開店後しばらくお店そのものが盛り上がるわけもなく、かなり不安にもなります。

そんな時にお客さんの「もっと○○出せばいいのに」などの囁きに、ブレることなく「なんとしても何でも屋にはならない努力」を忘れず、肝に銘じておいてください。

助言に耳を傾けすぎると収拾がつかなくなることも(写真/Canva)

小さなカフェはニッチすぎない「専門店」で勝負する

さて、ここからはメニューの決め方のお話です。

肝心要のメインメニューはどういうものにすれば良いのか?

商売という観点から見ると、ふさわしいものの前に、ふさわしくないものをここに挙げるので、まずはここを避けてください。

なぜなら、あまりにマニアック過ぎる、ニッチ過ぎるといったメニューを4番に据えると、商売成功の確率が限りなく低くなるからです。

よく個人店こそチェーン店が手を出せない「ニッチで奇をてらった商品で勝負」という話を聞きますが、例えば「ギムレット専門店」。これ今本当にただパッと思っただけで、実際ギムレットがどんなものか私はあまりわかってないのですが、私のように「なんだっけ?」と思うようなニッチなもので勝負しようとすると、「一等商圏」、つまり絶対人口が多い立地である必要が出てきます。しかしながら、「一人で営む小さなワンオペのお店」を出すのなら、家賃試算からいって一等商圏は難しいでしょう。

それらを踏まえて、例えば私鉄沿線の急行が停まらない乗降客数3万人以下の街に「ギムレット専門店」が成立しづらいのはなんとなく想像つくと思います。

全国のギムレット愛好家が集うといっても平日はみんな仕事があるわけで、土日に集中して終わりです。

あ、そろそろギムレットから離れますね(笑)。

ここまで読んだ方は「じゃあ、専門店はなしなの?」と思われるかもしれませんが、「○○専門店」という押し出し方は、ありもあり!絶対にありです。個人店はむしろ、専門店で勝負。そこに活路を見出すしかない、とさえ思います。

珈琲文明はスペシャルティコーヒーの専門店。コーヒーに合うサイドメニューを用意(写真/珈琲文明)

推奨するのはズバリ「王道の飲み物の専門店」

ニッチではないけれど、専門店で勝負するーー。
つまり、推奨するのはズバリ「王道の飲み物の専門店」ということです。
ドリンクメインなら、コーヒー、紅茶、お茶(中国茶、日本茶)、ジュース、スープ。
アルコールで言えばビール、ワイン、ウイスキー、日本酒、あたりでしょうか。

これらは、誰もが知っている王道の飲み物ですよね? 
王道ドリンクをメニューの4番バッターに据えて、専門店にするんです。

そして、かつそれを頼まずにはいられないほど相性がいいサイドフードメニューを厳選して揃えるのです。私の実体験と私のメソッドを活用したカフェの事例を見ていても、かなり有効な方法だと思います。

王道ドリンクであるコーヒーを看板メニューにし、それに合うサイドフードメニューを厳選して揃える(写真/Canva)

これら踏まえると例えばこんな感じのお店ということになります。

  • 「ジュース専門店」

世界各国の優良産地だけから仕入れた果実のみを使い、注文が入ったその都度丸ごと絞ったジュースの専門店で、そのジュースを出す際には使用した果実の実物を一口サイズにして小皿に出して提供、オレンジやグレープフルーツなら一片、ぶどうなら2,3粒、いちごなら大きめ1粒程度、サイドメニューにはその果実を使用した自家製シャーベットなどがある。

  • 「ワイン専門店」

フードはチーズに特化し、世界の様々なチーズを取り揃え、チーズはショーケースにあってお客さんは自由に見に来ることが出来て、そのチーズの横には各種説明と相性の良いワインも書いてあり、存分にワインが楽しめる。

こういうお店が個人店には向いているし、繁盛・成功する確率が高いのです。

王道の専門店で勝負(写真/Canva)

カフェ開業するなら絶対的に「自分が好きなもの」で勝負

では、商機を見出せるネタ(?)がたくさんあったのに、私はなぜスペシャルティコーヒーの専門店にしたのかーー。

それは、非常に簡単です。

自分はジュースやワインが好きで好きでしょうがないというわけではないからです。

実にベタな結論になりますが、やはり最終的な決め手は、そのメインメニュー(4番バッター)が、「自分にとって好きでしょうがない」のかどうかが重要な気がします。


メソッドを2020年に初の著書として出版。「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えをみつけた

今回はその店の主役メニューを決め、なんとしてもなんでも屋になってはならないというお話をしました。次回はサイドメニュー、いやこう書くと主役と比べて重要度が低そうですが非常に重要なキラーメニューの選び方について触れていこと思います。

この記事を書いた人

赤澤智
赤澤智珈琲文明店主
脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」

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