絶対に失敗するカフェの作り方ワンオペの小さなカフェ経営や喫茶店の個人経営に向いているのは、仕事の全体像を把握していて孤独に耐えられる人?
喫茶店やカフェを向いている人、向いていない人とは? 小さなカフェ開業や喫茶店の開業準備に必要なことについて珈琲文明のマスターに聞きました。
プロフィール
珈琲文明店主赤澤智
カフェの経営は難しいと思われがち。向いている人、向いていない人はどんな人? 小さなカフェ開業や喫茶店の開業準備に必要なことについて珈琲文明のマスターに聞きました。
目次
カフェ経営、小さな喫茶店の開業には向き不向きがある?
喫茶店やカフェを開いたらどんな毎日が待っていると思いますか?
毎日ドリップでコーヒーを淹れて接客をする。
あとは優雅にカウンターの中でカップを拭いて……ってわけにはいきません。
もちろん、コーヒーを淹れるのは大切な仕事ですが、個人でカフェを経営するとなると、経営にまつわる全てのことを一人でやらなくてはなりません。
そうすると、これまでにやってきた仕事やスキル、経験によって、向き不向きが出てきます。
もちろん「向いてないからできない」と言うつもりはなく、自分が向いているか、向いていないか、を確認しておくのは大切なこと。「向いていないけどやりたい」と思うのなら対策を講じることだって可能だからです。
ワンオペカフェ経営に向いていない人
ここではあくまでも小さな個人店(ワンオペまたは夫婦2人体制)のカフェをこれから開くのに向いている人と向いていない人について述べていきたいと思います。
まずどんな人が「向いていない」のかを挙げていきますね。
その① 利益度外視、趣味の世界
利益は度外視して趣味を生かしたカフェを営み、収入は、お小遣い程度あったら嬉しい、という人は夢を見ている状態かもしれません。
「じゃあ本当に趣味の範囲だけでよくてお小遣いすらもいらないというお店をやるならOK?」と聞かれたならば、実はそれすらもここでは否定します。
お小遣いが出るということは少ないながらも利益が出ているということになりますよね。
つまりそのお店は損益分岐点を超えているということ。ふんわり「ちょっとだけお小遣いが……」というような質のものではありません。
仕入れ代金、店舗家賃、光熱費、雑費、(人件費は論外)を支払った上で小遣い程度の利益が残るお店というのがどれだけ世の少数なのかをまず知ったほうが良いと思います。
これ、脅しているわけでも大袈裟な話をしているわけでもありません。
実は、損益分岐点を超えてちょっとだけ利益が出るようなお店を作るほうが断然難しいんです。世の飲食個人店の現況でお伝えすると、「赤字のお店」或いは「ちゃんと利益が出ているお店」の二極化が起きておりしかも比率で言えば9:1くらいだったりします。
ですから、こういう中に「趣味を活かし自己実現、収入はお小遣い程度でいい」という脳内お花畑(すみません、ついつい)の人がどうやったら太刀打ちできるのかを、逆に私は訊いてみたいです。
全く穏やかな物言いではなくなっていることには私も気づいていますが(笑)、このままどんどん進んでいきます。
その② 全体を把握しづらい大企業勤務の会社員
企業に勤めている人というのは、そこの会社全体で見れば一部の仕事を労働に費やしているに過ぎないから。経営の全体が見えづらいと言えます。
もちろんこのことそのものがダメというわけではなく、「大企業のエリートはハングリー精神が足りない」などと言うつもりも一切ありません。むしろ、大企業のサラリーマンの労働の強度たるやハンパじゃないことくらい私の身の回りの知人友人を見ればわかります。
ここで言いたいことは、「カフェ経営に向いているか否か」だけの話です。
しかも、私が個人的に感じていることを書く連載ですから、バカ正直に書いています。
そう、職種の労働の強度うんぬんではなく、大手企業のエリート会社員は、「全体の中の一部の仕事を担っている」というのが個人店の「すべてを一人でやる仕事」との類似点が少ないということ、ただその事実です。
その③ 共同経営をしようとしている人
これはかなり私の独断と偏見になるかもしれないのですが、実際に私がこれまでに見聞きしてきた小規模個人店で、オーナーが2人いてそれぞれの力関係が全く同じ、つまり共同経営者というお店が長期に渡って営業している例がないのです。
もちろんこれは私の中での個人的統計に過ぎないので実際はちゃんとうまく行っている例もあると思います。逆に私はそういうお店を発見してみたいという欲求が強烈にありますので心当たりある店舗(ただし10年以上続いていることが条件)の方やそういうお店の目撃証言、ぜひとも、お待ちしております。
ワンオペの小さなカフェ経営・喫茶店開業に向いている人
さて、これまでの流れを踏まえて「ワンオペのカフェ経営に向いている人」と、カフェ経営に関する心構えををお伝えしますね。
その① 趣味ではなくきちんと稼ぐと決めている人
カフェや喫茶店のオーナーになって大好きなコーヒーを毎日淹れる生活は、想像しただけでワクワクするでしょう。ただし、夢見心地にならずに長く続く店にするにはどうすればいいか、きちんと利益を出していく店であるにはどうしたらいいかを考えてみてください。
その② 全工程を一人でやる仕事をしてきた人
仕事の全体を管理する立場にいた人や、仕事の全てを一人で任されてきた人は小さなカフェを一人で運営するのに非常に向いています。ただ、現在会社員の方にはできないという意味ではなく、今、自分が携わっている仕事の全貌を捉える練習をしてみてください。
その③ 自分の店を自分一人で経営する覚悟がある人
共同経営で誰かと組んで経営するのではなく、自分の店を自分で責任を持って続けていくという思いがあるかどうかは大切です。
ワンオペカフェ経営に向いているのは孤独に耐えられる人
今こうして3つほど例を挙げましたが、これらの話を総括し思いっきり極論するならば、私が考える「個人店カフェ開業に向いている人」とはズバリ「孤独に耐えうる人」と言えるかもしれません。
否、孤独に「耐えうる」どころか「孤独大好き人間」と言ってもいいでしょう。
よく飲食店は接客業だから人と話したりするのが大好きで、それ故バーのマスターやスナックのママさんになろうという流れもあると思いますが、私はむしろ「孤独を好むタイプ」のほうがワンオペ個人店のカフェには向いていると思います。
ワンオペで一日中店の中にいるとアイドルタイムなどで、お客さんが1人も入ってこない時間帯もあり、それは文字通り、孤独であることは言うまでもありません。
さらに、これがピーク時であっても今度はお客さんと談笑する暇もないほどの繁忙時間というのはそれはそれで孤独だと言えるのです。
仕事の全体像を把握し、それぞれの業務全てを(浅くとも)こなすことができて、なおかつ孤独であることを楽しみ、ポジティブでいられる人というのがワンオペ個人店カフェの最適店主であると思います。
「私ぴったり!」という人がいたら、ぜひとも、挑戦してくださいね。
次回は、「店のコンセプトが決まるまでは開業するな」という私の持論について述べていきますね。
珈琲文明店主、赤澤智でした。
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この記事を書いた人
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脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」