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絶対に失敗するカフェの作り方喫茶店やカフェ開業をしたい人が持ってはいけないものはスマホ。なぜスマホがダメなのか?

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喫茶店・お店開業のための自己資金600万円。無理だと諦めるか、コツコツ貯めるか。行列が絶えない人気喫茶店「珈琲文明」のマスターが語る、喫茶店を開くのに必要なお金の話。

プロフィール

珈琲文明店主赤澤智

(あかざわ・さとる)昭和42年生まれ。メジャーデビューを目指しバンド活動をしながら12年間塾講師としても活動。大手学習塾の教室長及びエリアマネージャーとして4年半正社員として働いた後、2007年40歳の時に横浜市白楽にカフェ「珈琲文明」を開店。創業開始から今日に至るまでの16年以上(コロナ期間も含め)1度も赤字になったことがなく、黒字で長く続けられる経営を心掛けている。著書に「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えを見つけた(祥伝社)」がある。

「自分のお店を持ちたい」と思った人の多くが最初にぶつかる開業資金問題。4年4カ月で700万を貯金した経験を持つ、珈琲文明のマスター赤澤智が伝えるお金の貯め方とは。当時の給与や家賃を公開しながら具体的に語ります。

開業資金700万円を貯める「ワザ」や「コツ」

私は4年と4カ月の間に600万円を貯めました。

これは純然たる開業資金として600万。そして脱サラをして開業するまでの生活資金をあらかじめ100万円ほど貯めたので実質700万円貯めたことになります。

と言っても、今回は4年4か月で700万円を貯める「ワザ」や「コツ」の話をしたいわけではありません。というより「そんなものはない!」ということをあらかじめお伝えしておきます。

ただ事実として、貯めたものは貯めたので、当時のライフスタイル含め赤裸々に描写していくことで何か皆さんの中で参考になればと思い、記憶を思い起こしながら書いていこうと思います。ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

開業資金を貯める「ワザ」や「コツ」はない?(写真/Canva)

貯金ゼロから700万円は貯められる?

バンドに明け暮れた後、塾の教室長として働き始めたのが34歳。それ以前にいったいいくら貯金があったかといいますと恥ずかしながらほぼゼロです。まだ独身で実家から塾に通っていましたので生活費を家に入れてあとは基本その日暮らしでした。

はい。ですから、今回は34歳・貯金ゼロから700万円貯めるまでの話であります。

月給30万円以下+ボーナス

私が就職したのは某有名学習塾のフランチャイジーの会社でした。給料は固定給ではなくだいたい26~28万円くらいの額が明細に書かれていた記憶があり、30万円を超えた月はおそらく一度もありません。

地方転勤が奏功、夫婦二人で家賃45000円

それでも、実家で暮らしていれば十分に貯金は出来るのですが、入社して1年を少し過ぎたあたりで山梨県富士吉田市の教室を任された私は、それを機に結婚しました。

そう、給料が30万に満たない状態で、4年4カ月でどうやって700万円を貯めたのか。気になりますよね。もちろんお話しします。

まず結婚してから住んだ富士吉田市のアパートの家賃は4万5千円でした。

おんぼろアパートというわけではなくバストイレ付で部屋も2つあり夫婦2人で住むには非常に快適でありました。家賃4万5千円(2部屋バストイレ付き)というのは都心ではほぼ無理な金額であり、その点では田舎住まいは非常にメリットがありました。

家賃を安く上げつつ生活のクオリティを落とさないための、いっときの地方居住もあり(写真/Canva)

自分のボーナスは全額開業資金に回す

そして、私の給料は20万円代で常に推移していましたが、私の会社はボーナス分が完全歩合制でした。歩合というのは、入塾につながれば評価されるということ。だから、ボーナスがゼロの社員だっています。結果的に私は社員の中ではかなり多くのボーナスを得ることが出来ましたが、この経験もまた喫茶店運営に役立つスキルになりました。

我が塾の月謝や単価は全国一律。地方では、入会面談で保護者が月謝を見て目が飛び出すくらい驚いたりしたのも見てきました。

私が個人塾のオーナーだったら間違いなく「値下げ」をしていたと思いますが、いわば雇われ店長みたいな教室長としてはとにかくその月謝でやっていくしかありません。結果、「高級路線の塾」というブランディングに努めたのは現在の高単価個人店にも活かされました。

だいたいボーナスだけで年に120万円くらい貰っていましたから、結果的にはつまりこのボーナス分がそっくり貯金にまわり、700万円の貯金を成し得たわけです。毎月の生活費は月給(ただし2万円の定期預金は毎月続けました)で賄い、ボーナス分を貯金する、ということです。

会社員であることを、最大限に活かす(写真/Canva)

地方への転勤で妻は「好きなことを仕事」で収入増

ちなみにみなさんが気になっているであろう「妻の収入はどうだったのか?」について。

結婚していきなり私の仕事の関係で、富士山の麓にやってきた妻は、なかなか働き口もありませんでした。

ただ、駅ビルのイトーヨーカドーにあるイベントスペース等で、もともと知識やスキルのあったアロマ講座を開きました。駅前や高校の門の前で手製のチラシ配りをしたりして少しずつ集客していきました。やがては河口湖にある「自然派施設(!?)」みたいなところでアロマの施術も任されたりして収入に繋げていきました。

妻のこの一連の動き(無から有を生み出した)は私も本当に「やるな!」と感心しました。好きなことを仕事にするということは、どんな場所でも、人脈がなくても、成し遂げることができるのだと、改めて感じたことでもあります。

好きなことを仕事に(写真/Canva)

ここまでの話をまとめますと、開業資金と当面の生活費の700万円を貯められた理由は2つ。

家賃が安かった

地方に住んでいたため家賃が安く、でも快適に暮らすことができて節約・我慢しているという辛さがなかった

ボーナスを貯金した

歩合の仕事をとにかく頑張り抜いて、それをそっくり貯金した

とりわけやはり家賃というのは固定費の最たるものでしてここが膨らむとなかなかお金は貯まりません。都心で家賃が安い物件を見つけるのは困難かもしれませんが、2万円安く上げるだけで4年4か月あれば100万円を超えますよね。

収入と支出以外のポイント①車を持たない

もうひとつ、個人的に大きかったのは「車を持たない」ことでした。田舎での車なしの生活は買い物をはじめ非常に困難ではあったのですが、車なし生活は貯金の上でとても大きかったと思います。

車というのはガソリン代などの変動費以外に持っているだけでかかる税金や保険等の固定費もかかります。ですから、都心にお住まいの方で開業資金を貯めたいと思う方は、思い切って車を手放すのもありかもしれません。

車にお金をかけるより、未来の自分に投資する(写真/Canva)

収入と支出以外の意外なポイント②スマホに時間を奪われない

「車をもたなかったこと」の大きなメリットはもう1つありました。

これは何より最も重要なことなのですが、車ではなく電車やバスで移動することによって私はその間、睡眠を取るか読書をすることができました。つまり、「睡眠時間」と「開業に必要な勉強時間」の両方を手に入れていたのです。

そして、今常々思うことが「当時スマホがなくて本当によかった」ということです。もしスマホがあったらきっと読書などせずにまた寝るでもなく、どうでもいい記事やSNSを見て過ごしていたような気がしてならないからです。

以上、貯金のコツやワザではないかもしれませんが、極論を言ってしまえば「なるべく出費を抑える」に尽きます。とはいえ、あまりセコい節約とかはむしろ精神衛生上よくないので削減すべきは結構ダイナミックなこと「家賃」「車」「保険」などです。

削れる出費はダイナミックに削る

それからこれはもちろん真似しろとは言いませんが、私は長年食事は1日2食です。これは3食の人に比べたらそれこそ数年で何百万変わってくることかしれません。最近は飽食が良くないという情報もあるようなので、ご自身の体にとってそれが特に問題ないようであれば2食にしてみるのも1つの手かもしれないということも申し上げておきます。

皆さんが住んでいる場所、仕事内容、給料事情、生活環境、子どもの有無(当時私には子どもがいませんでした)などによっても全く変わってきます。ですが、やはり重要なことは「出費を抑える」ことであり、かつ、その出費は「ダイナミックに削る」ということです。

ただただ我慢をする、というよりも、「期間限定」だから工夫して、「攻略」していくという感覚でいると良いかもしれません。

珈琲文明の店内(写真提供:珈琲文明

開業資金を貯められるかどうかは「本気」かどうか

そもそも本当に「お店を開くぞ!お金を貯めるぞ!」という熱意があるのであればあまり余計な遊びや娯楽に興じている時間はない、というより本当に本気で目指すのであればせめて1,2年くらいは倹約生活もできるでしょう。

そしてそのストイックにみえるかもしれないこの貯金期間は同時に貴重な「知識のインプット期間」になります。貯金期間が長ければ長いほど、貯金額も増えますし、知識の量も増えます。

もしかしたら、私がしてきたことはもしかしたらちょっとハードパワー系過ぎると思われるかもしれません。時代も変わってもう少しスマートな稼ぎ方もきっと存在するでしょうからいろいろ総合的に考えて実行してみてください。


メソッドを2020年に初の著書として出版。「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えをみつけた

それでは、次回からいよいよ具体的な「絶対に失敗するカフェの作り方」に入っていきますね。
珈琲文明、赤澤智でした。

この記事を書いた人

赤澤智
赤澤智珈琲文明店主
脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」

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