絶対に失敗するカフェの作り方「カフェを開きたい」「お店を開きたい」人が知っておくべき開業費用。喫茶店経営のプロが「やってはいけない」ことを伝授
憧れのカフェ、喫茶店、お店を開くのにいくらかかる? 行列が絶えない人気喫茶店「珈琲文明」のマスターが語る、喫茶店を開くのに必要なお金の話。
プロフィール
珈琲文明店主赤澤智
「自分の喫茶店やカフェを開いて、それで生活できたら素敵」。そんな夢を抱いたことがある人は多いのでは? 小さなお店を開くのにどれだけお金がかかるのか。必要なお金と、そのお金の貯め方について包み隠さず、具体的に語ります。
目次
お金がないとカフェは開けない?
「お店を開くのにはいくらくらいのお金がかかるんだろう?そしてそのお金が無い場合はどうすればいいんだろう?」
自分の店を持ちたいと思う人がまず考えるのはお金の話ではないでしょうか。
私もそうでした。「店を開きたい」でも「お金がない」。
そんな自分にとっての「開業への【発芽】」は、「自分が持っている貯金と同じ額なら貸してくれるんだよ」と言った人の言葉でした。
はい、私はそれまでお金は貸してくれるということすら知らなかったのです(苦笑)。
この人の言葉を聞いた時、私は単純に「じゃあまず必要な額の半分を貯めればどうにかなるんだな」と思いました。
店を持つにはお金を貯めなくては……と思う人が多いように思いますが、実は、多くの店舗経営者はお金を借りてお店を始めています。「お金を借りる」という言葉に既に引いてしまった方もいるかもしれませんが、まあまあ、最後まで読んで行ってください。
1人でやるなら10坪、1000万円
「それで、お店を1つ作るのにはいくらくらいかかるんだろう?」とそこから色々と情報収集した結果、首都圏では「1人でお店をやる場合、10~20坪の間のスケールが望ましく、1坪あたり100万円かかる」ということがわかりました。
これは物件取得費やら内装設備費、運転資金もろもろひっくるめてのトータルでの話です。
つまり10坪なら1千万円必要ということ。そして、前項の「貯金と同等の額なら相応の機関がお金を貸してくれるかもしれない」ということは、その半分の500万円を持っていればあとの500万円は公庫が貸してくれるかもしれないということです。
1000万円へのシンプルな到達法とは「バカ正直」さ
さて、今から物凄く大切なことを言いますね。
何がわからないかもわからないほどに何もわからないものを始めようとする時、まずはこれ以上ないほどにシンプルに物事を考えるようにしてみてください。
どういうことかというと、「1000万円かかるから半分の500万円貯めよう」と素直に受け止め早速貯金を始めることです。
「膨大な土を山から運ぶためにダンプに土を入れる器具がスプーンしかない場合(なにこの例(笑))」に「なんかよくわかんないけどとりあえずスプーンで土を入れ始めてみる人」が起業や開業や脱サラに向いている人のような気がします。
とりあえずスプーンで作業し体を動かすことによって周りには鬱蒼と茂った植物や木々しかないと思っていたところにスコップを見つけたり、こちらが動いていることで誰かがあなたを発見してくれるかもしれず、またその人は何かハイテクな凄いものを持っているかもしれません。
ですから開業資金に関しても「いやもう少し安くあげられる方法もあるはずだ」とか「自己資金は3割くらいあれば貸してくれるという話もあるみたいだから300万チョイ貯めればいいかも」とかそういうことをリサーチするよりもまずはバカ正直に受け止め貯金をスタートさせ、その進行形の中でリサーチはして、結果的に安くあがったりすればいい。私はそう考えています。
坪100万円には理由がある
ちなみに坪100万円(10坪なら1000万円)がトータル開業金額ということについてもう少し深堀して説明しますね。
ケース①「家賃が安い物件を取得できた」
おそらく駅から遠かったり認知されづらい立地にある店舗ゆえ、広告宣伝費がかなり必要となる。
ケース②「内外装費をたっぷりかけて超魅力的な店が仕上がった」
目に見えない部分の設備が疎かになっていたり、店が軌道に乗るまでの運転資金が無くなり経営破綻してしまう恐れもある。
ケース③「居抜き物件をゲットしたから内外装はじめ設備も使えて安く出来た」
その設備がかなり消耗していて近い将来修繕が必要になったり、作業動線や内部オペレーションの違いが激しくてストレスが蓄積して夜の呑み代が増える(笑)。
などなど、要はあちらが立てばこちらが立たずみたいになるわけで、つまりその内訳は変わるものの結局のところ総額としては店舗スケールから見てだいたい坪100万円くらいかかるものであるということ。
お店を出して、カフェ開業のメソッドを多くの人に伝えている今でも、この坪100万というのは店舗開業における不思議な黄金律だなぁとよく思います。
店を作ろうとする人がやってしまう「節約」の罠
繰り返しますが、ここで「もう少し安くあげてみせる!」とかにエネルギーを費やさずにまずはお金を(総額の半分)貯めて、残りの半分を借りる、というシンプルな行動に出てみてください。
さて、ここでいう自己資金とは実際は、親兄弟親戚から借りた(もらった)お金も含めて考えられていますが、ぜひともご自身の今やっている仕事で稼ぎ出し、かつそれで生活をしたうえでの余剰分のお金で半分貯めてみて欲しいのです。
もちろん誰かが工面してくれるという幸運の持ち主ならいいのですが、その場合でも半分はぜひ自身の手で稼いで、そこにプラスしてもらって公庫からの借入を少なくすればいいだけの話です。
開業資金の半分を己で稼ぐことに意味がある
半分、つまり借りた金額と同額を稼ぐことそのものに物凄く意味があるのです。
現在皆さんはきっとなんらかの仕事をして生活をしていますよね?
職種はなんでもいいんです。
その仕事を続ける中で、しかも質素なりとも健康で文化的な生活(これもすごく大事)を続けつつ、なんとかして目標金額まで貯めるのです。
方法としては2つが考えられます。
・業績を上げて歩合給やらボーナスやら上げて収入の絶対額を増やす
・爪に火をともす、とまでいかないまでも質素倹約に励み生活する
別にどっちでもいいし、出来れば両方必要です。
とにかく現在の仕事をし、生活が破綻せずしっかりと健全に暮らしていく中で、なんとかして余剰分を生み出したという実体験そのものが重要なのです。
これから自分が公庫から借りようとするお金を稼ぎ出す具体的かつ直接的な「労働の強度」がどれくらいのものなのかを身をもって知っておくこと。
それは、「万が一何かあっても、自分で稼げるから大丈夫」という自信になります。
うまくいかなかったときも人生は続く
今は夢いっぱいなのもわかりますが、結果的にお店を開いたもののうまくいかなかった、たたむことにした、という場合でも借金は残ります。
でもその借金の金額と同額分を、「生活し続けていく中で紛れもなく自身の手により稼ぎ出したという事実」は、あなたを絶望から救い、再生に向かわせることでしょう。
一般的に公庫で自己資金が半分あれば貸してくれるというのは、つまり「自己資金半分」は国が認めた数値ともいえるその根拠はもしかしたら今私が述べたこと(自身で実際に貯めたことがある額なら返済できるだろう)がベースにあるような気もします。
開業前の「貯金達成」こそが経験という財産に
私は4年4ヶ月の歳月を費やし、600万円貯めました。そして公庫から600万借りて、予定通り開業後6年半で全額完済しました。
これができたのは一重に、最初にコツコツ貯めた600万円に費やした時間と労力と気力。それによって生まれた600万が私に授けてくれた、成功体験と自信に違いありません。
この4年4ヶ月の間の業務実績と経験そのものがお金と同時に何ものにも代え難い「経験という財産」になったわけです。ストイックにみえるかもしれないし、ただお金を貯めているように見える、この貯金期間こそが、同時に貴重な「開業への知識のインプット期間」ともいえます。
貯金の期間は独立開業のスキルアップの時間
ですから、会社員の人が「喫茶店を開きたい」「自分のお店をやりたい」と思うなら、お店の立ち上げにかかるお金の半分を貯めるということが、店を運営するスキルになっていきます。それは決して無駄な時間ではありません。
貯金期間が長ければ長いほど、貯金額も増えますし、知識の量も増えます。
「当時30代後半だったあなたは出来たかもしれないけれどまだ入社して間もない初任給レベルの収入の私じゃ無理!」と思った方に、1人の20代女性の実例を挙げます。
彼女はバイト(正社員ではない)生活と平行して夜は起業の学校のようなところにも身銭を切って通いつつも2年間で400万円を貯め、東京杉並区高円寺に小さいながらもとても綺麗なケーキ屋を開き、その後の運営も全て1人のワンオペで健全な経営をしました。
その後彼女は結婚しそのお店は「寿閉店」となりましたが引き際も、実にアッパレでした。
先ほど私は「健康で文化的な生活をしつつも開業資金の半分貯めるべし」と言いました。
次回は私が実際に4年4ヶ月で600万円貯めた具体的な方法をかなり生々しく赤裸々に述べていきたいと思いますので、現在サラリーマンの方やフリーターの方は参考にしてみてください。
珈琲文明、赤澤智でした。
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この記事を書いた人
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脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」