絶対に失敗するカフェの作り方ワンオペの小さなカフェ開業の軸となる信条(クレド)は、お客様第一主義ではなく善良なお客様を大切にすることだった?
小さな喫茶店やカフェを開業するときに決めていないと絶対に失敗することとは。行列が絶えない人気喫茶店「珈琲文明」のマスターが語る、選ばれる店になるために必要なこと。
プロフィール
珈琲文明店主赤澤智
クレーマー対応に尽力していると良いお客様を失う。うまくいくカフェ経営者がやっていることは、善良なファンを大切にすること。そのために個人経営のカフェがやるべきこととは?
目次
個人経営のカフェこそオリジナル「憲法」を作る
前回、前々回と、カフェ開業のための立地の選定や物件選びなどについてお伝えしてきました。今回は、私赤澤智が、カフェや個人店経営のために絶対必要だと感じている、「信条(クレド)」について書いていこうと思います。
さて、会社には社是や経営理念といったものがありますよね。もっと大きく話を広げると我が国には憲法というものがあります。独裁国家ではなく法治国家である以上、この憲法がまず最上段になくてはなりません。
あなたのお店にも、実はこの「憲法」が必要です。
これを作っていないと失敗します。
オーナーであるあなたのさらにその上に君臨する「憲法」のようなもの。つまり、軸になる理念や行動指針ですね。これを決めることと、かつ、それに反していないかをオーナーであるあなたは常に自問自答し確認していくことが大切です。
あなたがお店を開く前にこうした強固な軸となる取り決めをまず先にバシッと打ち立ててください。
パーパスやミッションという信条(クレド)を考える
あまり堅苦しくならないように、しかしとても重要なこの取り決めが、カフェの未来を決めるのです。私は、この軸を、「信条(クレド)」という考えでまとめることにしました。
私が開店前に決めた、お店のクレド(信条)は・・・
「自分自身や家族が幸福で、健全で、堂々と、公明正大な運営をすることで、
そこに集まるお客様にも幸福をもたらしたい」
です。
自分でもなんだか偉そうだなと思うのですが、このクレド、まる1年くらい、散々悩み抜いた挙句に行き着いたものです。
実はもっと複数条文あったのですが、最終的にこれひとつだけに絞りました。
どんなお客様のための「ホスピタリティ」か?
なぜ、「お客様主義」や「おもてなし」や「ホスピタリティ」というフレーズがないのか。
最近頻発されるサービス業お決まりのこのフレーズについて私の考えを書いてみます。
これから述べる話はとても誤解を受けやすく、危なっかしい内容になりますが、この連載を読んでくださっている方には必要なことだと思いますので、恐れずに書きます。
「お客様第一主義」を掲げ、言葉だけじゃなく行動も伴うお店があったとします。
このお店が実際に「おもてなし発動」をする相手、これがときに、奉仕期待値の極めて高い人、特に口うるさい人(クレーマー体質の人)など「目立つ人」に偏ってしまう場合があります。
これはお店の話に限らず、病院内での患者、飛行機内での乗客、などイメージしていただくとわかりやすいと思うのですが、「目立つ人へのおもてなし発動」が、どうしても多くなりがちです。
クレーマーは善良なお客様へのサービスを奪う
でも、よく考えてみてください。その場には、「あくまでもいたって普通にご利用くださるひたすら尊いお客様」が数多く存在しているはずです。その人たちへのサービスが行き届かなくなるほど、特定の目立つ人への偏ったサービスは適正でしょうか。
もとよりその「いたって普通にご利用くださる人たち」は過剰なサービスなど望んでおらず、単に居心地よく、普通に利用出来ることが望みなだけなのに、それさえも壊してしまうほどの過剰なサービスなどありえません。
だからといって、目立つお客様に対して敵対しろということでもありません。
ドラマなどで、「他のお客様への居心地を悪くするような行動に出ている人」に対して、正義感溢れる店主の「金はいらねぇから、とっとと帰(けぇ)~んな!」というセリフを聞いたことがある人もいるでしょう。でも、私は、「金はいらないから帰れ」は、断じて承服できません。
それはなぜか。
その人からお金をとらなくて、ごく普通の善良なお客様からはお金を取るなんてことはチャンチャラおかしいし、粋(イキ)でも何でもないと思うからです。
結論としては、「他のお客様への居心地を悪くするような行動に出ている人」に対しては、「お金をお支払いのうえ、速やかにお帰りいただく」のがベストです。
これができていない店は、ファンを失います。
善良なお客様を大切にする
話を戻しますと、「いたって普通にご利用くださる善良な人たち」にしっかりとフォーカスする、ということがメチャクチャ重要な仕事と考えます。
では、具体的にどのように向き合うべきなのかを今から述べます。
それはズバリ、「店主は調整弁に徹する」です。
と言っても曖昧な表現なので、具体例でお伝えしていきますね。
店主が提供すべきホスピタリティとは?
ハイテンションなお客様への対応
(状況)コーヒー専門店である私のお店にまるで居酒屋に入ってきたかのようなハイテンションで、声が大きいお客様が来た場合
(対応)高給レストランの支配人風情で、小さめの声と低めのトーンで接することで、自然とお客様の声もトーンダウンする
緊張気味のお客様への対応
(状況)明らかに緊張しながら入って来て色々と不安な様子がありありと漂うお客様の場合
(対応)人間味溢れる(クールの反対という意味で)感じで、極めてにこやかに、言葉づかいは俗っぽくはならないまでもけっしてかしこまり過ぎないようにすることで安心感を伝える
などのように店主は調整弁になるように心がけると良いと思います。
そうです、「どのようなお客様にも平等に同じ態度で接しましょう」という考えとは真っ向から異なる姿勢です。
またこれは番外編事例なのですが、私のお店には「地獄のカレーパン」という名物(迷物?)があります。それを学生グループで罰ゲームのような感じで食べる状況になった場合、当然、賑やかになるので、やはり事例その①とほぼ同じ感じにして、ややトーンダウンしてもらいます。
わかってます、わかってますよ!
こちらもくだけた感じで楽しそうに接したほうが絶対にそのグループにとっては楽しいに決まっています。しかし、ここで賑やかさに同調してしまうと、店全体の空気が変わってしまうんです。そう、静かにコーヒーを楽しんでいる善良なお客様が、静かに迷惑していることだってあり得ます。
ですから、私の調整弁で、「物凄~く辛いんだけど、なんだかあまり騒げない空気」を醸し出させていただいているわけです(笑)。
信条とは自分にとっての王道
私が学習塾を運営していた頃、明るく目立つ子よりも、人見知りで静かな子に率先して話しかけるようにしていました。
ある意味では、これは、まったくもって平等ではなく、特に「事例その①」の人や地獄のカレーパンのグループ、そして学習塾時代の明るく目立つ子、にとっては私の対応は「満足いくサービス」ではないどころか、確実にマイナスの対応でしょう。
それでもやはり、静かにコーヒーを楽しむお客様のために、私が調整弁となり全体を維持していくことのほうがお店にとってもまた自分自身にとっても健全な姿勢と考えています。
ここで、今回のテーマである信条(クレド)の話に戻りますが、自分の喫茶店を立ち上げて仕事をしていくのなら、上司も部下も付き合い上の変なしがらみもなく、理不尽さなどに頭を悩まされず、自分にとってこれこそが健全だと思える陽のあたる王道を堂々と歩いていくこと、とにもかくにも私はまずここから始めてみたかったのです。
そしてこれで上手く行かなければそれはそれで気分も晴れ晴れするような気がしました。でも個人店の数少ない特権ってこういうことだと思いませんか?
次回は、「独立開業に向いている人とはどんな人か」について述べていきますね。
珈琲文明店主、赤澤智でした。
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この記事を書いた人
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脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」