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白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません結婚したらキャリアをあきらめないといけないの?【女性のライフステージとキャリアの両立問題】

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読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】

白川密成

プロフィール

四国第57番札所栄福寺住職白川密成

住職。「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。

++ 今回のお悩み ++

【キャリアと結婚…仕事を続けたいけど自信もありません】

30歳女性 独身 メーカー勤務 営業

 

昨年30歳になり、お付き合いしている彼との結婚を意識するようになりました。

私は結婚しても仕事を続けたい気持ちが強いです。

しかしワーママの先輩社員を見ていると本当に大変そうで両立する自信もありません。

というのも、彼はとても忙しい仕事で出張も多く、今後転勤の可能性もあります。

そんな彼と結婚したら、家事や育児は私が主で担う事になるだろうと容易に想像できます。

彼の年収のみでも暮らしていくことは可能なので、一旦キャリアを中断し、復帰も視野にいれました。

しかし再就職先が絞られてしまうのではという不安もあります。

彼にまだそんな自分の気持ちを話せていません。

まず彼と話し合いたいと思いますが、自分の中にまだ明確な答えが出せずにいます。

白川先生からあなたに贈る言葉
「談義」(だんぎ)

まず状況を整理してみましょう

 まず将来を共にしようとしている信頼できる恋人がおられるようなので、そのことが、うれしいことですね。

 あなたの書かれている通り、働きながらの子育ては、本当に大変な思いをしている方も多いですよね(私の知人にはシングル・ファーザーの方も少なくありません)。これはなかなか個人で解決できないこともあるでしょうから、社会の「しくみ」も夫婦やシングルの親がもっと働きやすい、生活しやすい環境作りを進めていくことも必要だと感じます。しかし、あなたはそれを「待つ」ような状況ではないでしょうから、「今」のことを、私なりに考えてみようと思います。

 言うまでもなく、まずは「あなたがどうしたいか」ということは、大切な事ですよね。はっきりと「私は結婚しても仕事を続けたい気持ちが強いです」と書かれていますので、その思いが強いのだとは思います。同時に「ワーママの先輩社員を見ていると本当に大変そうで両立する自信もありません」という現実的状況との間で、悩んでいます。しかし、色々な状況を“かっこ”に入れるとしたら、結婚しても仕事を続けたいと思っておられることは、大きな事だと思います。

どの選択肢が「間違い」ということはないと思う

 でも、もしあなたが色々考えた末に、「一旦キャリアを中断し、復帰も視野にいれました」という選択を選んだとしても、それをおかしな決断ではないと思います。「現実的状況」というのは、ご存じの通り大きなことで、その判断が、功を奏して、色々なことがいい感じに流れ始めることだってあるでしょう。たしかに、後々、あなたが書かれているように「再就職先が絞られる」、という可能性もありますが、「仕事と家庭の両立で悩むぐらいだったら、今はむしろ家庭の基盤をしっかり作りたい」とお考えになるのも、立派な人生であり、生活です。今、「働く」ことにひと息ついてしばらく向き合い、キャリアの流れを変えることが、「新しい仕事の方向性」を生むことだってあるかもしれません。ただこれは、あなたが「そうしたい」と素直に思える時にとる方向性のようにも思います。

あなたの収入が必要な場合もあり得る

 もう一方にある立場は、「なんとか仕事と家庭生活を両立する」という試みですね。周りをみても楽な道ではないかもしれません。しかし、仕事というのは金銭的な恩恵ばかりでなく、人間と人間との関係、物や事との中で、大切な手応えや生きがいを生むこともあります。それは時にひとりの人間を強く支えてくれるものです。

 金銭面のみを見ても、ある方が「精神的な自立は、往々にして経済的な自立より生じる」と言われていましたが、そういう側面は、たしかにあると思います。そして、男女問わず色々な事情で「働けなくなる」「収入が激変する」ということは、誰にとってもあり得ることです。お相手がそうなった場合、あなたの仕事の収入が、家計の助けになる可能性も考えておいた方がいいでしょう。

「談義」という言葉の変遷

 二つの立場を少し整理してみましたが、簡単なテーマでありません。ここで、あなたに贈りたい仏教語は「談義(だんぎ)」という言葉です。一般によく使われる言葉ですが、元々は、“物事の道理を解き明かし、仏典の意義を説くこと”という意味があり、日本では、信者に仏教を説くこと、問答することなどの意味で使われてきました。近代では、談議と書くことも多くなり、より一般的に、仏教とは関係なくても「話し合うこと、相談すること」という意味にも使われるようになりました。

やはり「話し合う」「相談する」は大事

 元々、「道理を解き明かす」という言葉が、生活の中で、「話し合う、相談する」という意味が加わってきたことに、大切な意味を感じます。「彼にまだそんな自分の気持ちを話せていません」とのことですが、彼はあなたがこれから長い時間を共にすごそうとしている人、あなたの仕事への思いを素直に話してみるのはいかがでしょうか。

 時代も変遷しており、男性側の価値観も変わっています。あなたが惚れ直すようないいアイデアや、励ましの言葉があるかも知れません。そこでの言動や態度に違和感を持ったとしても、それは結婚前に知っておいた方が、きっといいですよね。

ひとりでも考えてみよう

 それと月並みですが、少し静かなところで、ひとりでじっくりと考えてみるというのもやはり大事な時間でしょう。休みが難しければ、仕事が終わった後に、わずかであっても繰り返し、ひとりの時間を何もせずに過ごしてみる。

 やはり、あなたの思いは、あなたにしかわかりません。

 どのような結論を持ったとしても、応援しています。がんばってくださいね。

今日のまとめ 

  • まず選択肢の内容を整理してみよう。
  • あなたの収入が家計の助けになることもある。
  • やはり素直な思いを、相手に伝えよう。
  • ひとりの時間を確保して、自分の思いに気づく。

【直感・運気アップ】

ひとり旅の計画をたててみましょう。スマホとテレビを少しばかり休憩して。

この記事を書いた人

白川密成
白川密成四国第57番札所栄福寺住職
「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。

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