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白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません2023年こそ、今年の目標を達成したい!決めたことを継続するコツって?

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読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】

白川密成

プロフィール

四国第57番札所栄福寺住職白川密成

住職。「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。

++ 今日のお悩み ++

今年こそは、「今年の目標」を達成したい!

40歳 女性 フリーランス

私は毎年、お正月に今年チャレンジしたい目標を立てています。毎年「この資格を取ろう」「今年こそブログをはじめて発信しよう」「新しくプログラミングの勉強をしよう」などと、やりたいことを書き出すのですが、年末になると、何もできなかった自分に気がつきます。1つ始めたとしても継続ができないのです。

今年は以前から興味がある簿記2級を取得しようと思っています。テキストを買って独学ではきっと、やらなくなってしまうので、オンライン講座を受けるつもりです。ですが、簿記の知識は仕事に直接必要なわけではないので、自分の性格的に、講座すらも続けられなくなりそうであと一歩踏み出せません。

こんな怠けものの私に、新年、今年こそは何かを成し遂げるためのエールをいただけたら嬉しいです。

白川先生からあなたに贈る言葉
「自由」

毎日1年続いたこと

 ご相談、ありがとうございます。僕も、「今年の目標」を挫折した経験が多くあり、同じようなことをよく考えてきました。「続くこと」と「やめてしまうこと」の違いは、けっこう不思議ですよね。究極的に言うと、「人間は、続けられることが好きで(向いていて)、続けられなかったことが好きではない(向いていない)」という気もするのですが、人生の中では時に、「今は嫌いだけど、上手になりたい」ということがあります。それは、勉強だったり、お金のことだったり、整理整頓だったりしますよね。

 そのような中で、僕自身、昨年「今までは続かなかったこと」が続いた年でした。それは、手書きの「5年手帳」というものを購入して、その1年目に「365日、毎日、日記を書く」ことができたのです。1年間、毎日、日記が続いたのは、初めての経験でした。

「続けたいこと」について今までよりも考える

 なぜそのようなことが起こったのか、それはおそらく一昨年の年末に、長く連載していたサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の企画で、<お坊さんに教わる「三日坊主」対策>というインタビューを受けたのが大きいような気がしています。僕自身は、色々なことが驚くほど続くこともあれば、あっさりと止めてしまうことも多い、ごく一般的な人間です。でも、「どうすれば、続けたいことが続くかな?」と、じっくりインタビューを受けたことで、いつも以上に、そのことを「たくさん考えた」ことが、よかったようなのです。

 ですので、なにか続けたいことがあるとしたら、「そのことについていつも以上に考える」ことは、得策ですよ。例えば、「どのように続けるか?」ということについて、友人同士で座談会のオンラインミーティングをしたり、あえてインタビューのように誰かに聞いてもらったり、そういう機会が作れそうになければ、自分で文章を書きながら、「私の続ける方法」という簡単な冊子でも数時間かけて作ってみる。そんな方法もおすすめです。

“マイ・ルール”を加える

 その際に気をつけることは、こういったことは(目標設定と継続)、様々な本や研究のテーマになっているので(じつは僕も「習慣を続ける」というテーマの本を書こうとしたことがありました)、「誰かの方法」と同じことをしようとすることが多くなります。そうすることで、ちょっと飽きてしまう人が多いようなのです。「私はこういう方法をしたいな、加えたいな」という“マイルール”を設定することで、興味が続くことが多いので、「自分でもしっかり考える」ということも意識してみてください。僕の場合は、日記に簡単な絵を入れています。

 また別のウィークリー手帳に、運動、筋トレ、SNSを見る回数を守ること、瞑想、などの継続したい習慣が、何日中、何日やったかということをメモしています。この方法は、我ながら「絶対続かないな」と思っていたのですが、現在123日継続中で、運動はその内83日しているようです。人間は意外とどんどん忘れていくので、大事な習慣を継続的にテクニカルにメモしていく方法も試しています。あなたの場合も、「目標」を継続できたかを、日々、可視化していくこともおすすめです。

楽しさが「遅れて」やってくる

 そして、これは人生全般で気をつけていることなのですが、人は、うれしかったり、楽しかったりすることを、人生の中で、「やろう」とすると思うのですが、その中で、「努力のいる楽しいこと」と「努力のいらない楽しいこと」を両方やろうとすることです。

 後者は、すぐに思い浮かびますよね。チョコレートを好きな人が、チョコレートを食べるようなことです。

 「努力のいる楽しいこと」も大事なのは、これは、すぐには、「楽しさ」に結びつかなくても、より大きな、深い楽しさが後から湧いて出てくるように思うのです。

 そういう「楽しさにタイムラグがあること(遅れてくることがあること)」を“知ること”も、目標が続きやすいヒントがあるかもしれません。仏教の修行も、まさに「日々続けること」で手応えのようなものが遅れて出てくる典型のように感じます。

自由

 今回、あなたに贈る言葉は、「自由」です。この語は、古い中国の漢文からみても「自己の主体性を堅持する」といういわば“良い面”と、「勝手気ままにふるまう」のような少し“ネガティブな意味合い”の両面があります。

 漢訳された仏教経典に使われる際にもこの「自由」は、同じように二つの対極的な意味で用いられました。今回、この言葉の両義性を紹介したのは、目標の最初の段階では、あえて「自由を制限」して、心がちょっと「嫌がっても」その目標を続けたり、コツコツと考える機会を増やして欲しいからです。少し心の「自由」を手放して、その目標にふれる時間を増やしてみてください。「最初が肝心」だと思いますよ。がんばってくださいね。

とは言っても極端に「やらねば」になってしまうと、続きにくいので、まずは「自分なりに楽しんで出来るかな」と気楽に構えてみてください。

【今日のまとめ】

・その目標について、いつもより考えよう。
・「誰かの方法」に学びながら、「自分なりの方法」もやってみよう。
・「遅れてくる楽しさ」があることを知ろう。
・「自由」という語の両義性をヒントに、すこし自由を手放してみる。

【直感・運気アップ】

・目標だけでなく「単純に楽しいこと」を毎週ひとつ確実にやろう。

この記事を書いた人

白川密成
白川密成四国第57番札所栄福寺住職
「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。

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