白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません勢いで会社を辞めるべきか、副業にするべきか悩む……
読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】
++ 今日のお悩み ++
【勢いで会社を辞めてしまうか、副業で続けるか悩む】
30歳 男性 経理
経理として働くかたわら、ここ1年ほど、副業でカメラマンをしています。知人のライブ写真や、カップルのデート撮影、ペットの記念写真などを撮っています。少しずつ仕事を紹介してもらえる機会も増え、仕事の幅を広げています。また、最近では動画編集も初めて、再生数は少ないですが YouTube に動画を投稿しています。動画を見た知人から「動画編集やってくれない?」と仕事を貰えるようになってきました。こうした状況でもう少し時間を使えばもっと稼げるんじゃないかという想いがムクムクと湧いてきて、来年の3月に会社を辞めてしまおうと決意しました。しかし、現状、副業で稼ぐ額は平均して月2~3万円程度。MAX でも8万円ほどです。「勢いって大事!」と思いつつ、周りからは「まだ辞めない方がいいよ」と言われ、揺らぎ始めています。勢いを取るか、堅実さを取るか、自分はどうしたらいいのでしょうか。
目次
白川先生からあなたに贈る言葉
「堂々廻り」
正解がないから人生は悩ましい
まずは、お悩みを拝読すると、仕事ではなかったはずのことが、依頼の声がかかるようになり、プロとしての仕事に繋がっている様子です。そのことが、とてもうれしいことですよね。
しかし難しいのはこれからです。何度かこの連載でも書いてきましたが、この種の悩みは「辞めて大正解」のこともあれば、「辞めて、困っている」という両方のパターンが大いにありますので、正直申し上げて、「これが正解!」という答えのない悩みです。だからこそ、悩ましい。人生はそういう悩みが多いですね…。でもだからこそ、よろしければ一緒に考えてみましょう。
「手軽さ」と「丁寧さ」
今回は、あなたは独立するのであれ副業であれ、写真撮影や動画編集の仕事をしばらくは続けていくように思いますので、その視点(よりいい仕事になるようなレベルアップ)から考えてみようと思います。
具体的なことですが、静止画の撮影と動画の撮影を両方得意とする人は、意外と少ないのでは?と思いました(僕の著作『ボクは坊さん。』が映画になった時も、スチール撮影は専門の人がいました)。ですので、ご自身の作品でも、誰かに依頼されたことであっても、「動画の中に、完成度の高い写真」が混じり込んでいたり、「写真」の仕事の中に、オプションとして動画を手軽に提供したりするのも、「強み」になるように思いました。
お寺で仕事をしていても思う事ですが、現代の人が求めていることの大きな二つは、「手軽さ」と「手軽さがとりこぼしやすい、丁寧な質感」という対極的なふたつだと感じることが多いです。その相反するふたつを、うまく盛り込むことができれば、あなたの「これからの仕事」にとっても、アピールポイントになるのではないでしょうか。
「お金」の分野にこそ創造性を活かす
そして、今、「経理」を仕事にされているというのも、助けになるように思います。クリエイターと話すと、やはり経理や事務などが苦手な人が多いという印象を受けます。そのような中で、あなたはいわば「帳簿」を見られるわけですよね。そのことは、独立する上でも、副業をするうえでも大きな武器になると思います。
全体的な資金管理だけでなく、自分の仕事に対する価格設定、作品のサブスク提供や新しいスタイルの料金体系など、「お金」にまつわることも、堅実さだけでなく大いに、あなたのクリエイションと事務能力の見せ所になると思います。ぜひ「お金」×クリエイションの分野にも、ご自身の経験とクリエイターとしてのアイデアを構想してみてください。
「堂々廻り」
あなたに贈る仏教語は、「堂々廻り」です。よく使われるように、「同じ場所を歩き回ることや、同じこと繰り返し話し続けること」という意味ですが、もとは、文字通り「神仏に祈願して、寺社の諸堂をめぐり歩くこと」という意味の言葉でした。
おそらくあなたの思考の中では、同じ考えが、何度も何度も堂々廻りになっていると思います。できれば今回のように、少し考える要素を増やしたり、視点を変えてみたりして、思考回路としては、「少し違う道」を通るようにしてみてください。新しい発見があるかもしれません。
そして環境や身体としては、むしろこの「堂々廻り」をヒントにしてみてはいかがでしょうか。悩みを持つ時、どうしてもいつもと同じ場所で、考えたり、感じたりすることが多いと思います。少し煮詰まっている部分もあるでしょうから、神社やお寺でなくても構いません。色々と場所を変えながら、考えてみてください。いつもとは違うアイデアがあるかも知れません。
最後になりますが、もしかしたら第三の選択肢として、仕事の負担や時間がかなり減るような仕事にして、今の副業にかける時間を増やすような「折衷案」もあるように思います。様々な可能性を模索してみてください。
<今日のまとめ>
・動画と写真撮影の両方できることを強みにしては?
・創造性を「経理」の経験を活かして、「お金」分野にも広げて考える。
・「堂々廻り」を参考に、色々な場所で考える。
・負担の少ない仕事を副業にする折衷案も検討する。
直感・運気アップ
いつもと違う場所で、懸案について3日連続で考えてみましょう。
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この記事を書いた人
- 「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。
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