白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません身近な友達に、ビジネスの協力を依頼するのが怖い……【クラウドファンディング】
読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】
今日のお悩み
【身近な友人に、ビジネスの協力をお願いするのが怖い】
35歳 女性 飲食
私は今、副業で、キッチンカーでお弁当の移動販売をしています。初めて1年が経ち、少しずつ軌道に乗り始めています。これまで、お店を出すときには、友人に宣伝の連絡をしていました。たまに友人が来てくれて、お弁当を買っていってくれることもありました。この度、会社を辞めて実店舗を開業しようと決めました。そこで今、開業資金のためのクラウドファンディングをしようとしています。クラウドファンディングは、親族、友人の協力が成功のカギと聞いているのですが、友人に協力をお願いするのが不安です。これまでの宣伝の連絡の際も友人にどう思われるか不安だったのですが、今回は金銭的な協力のお願いになるので、関係性が崩れてしまわないか、「お金ばっかり要求する」と嫌われないか、など不安になり、宣伝の連絡をするのがすごく怖いです。心が軽くなるお言葉を頂きたいです。よろしくお願いいたします。
目次
白川先生からあなたに贈る言葉
「葛藤」
「知らせたい」という気持ち
お悩みをありがとうございます。なかなか悩ましいですね。
僕自身も、友人のお坊さんがクラウド・ファンディングをしているのを知って、興味を持って参加したり、直接ご案内のメッセージを頂いたけれど、その時に時間的な余裕もなく参加できなかったことなどの経験があります。
「お金を出す側」からすると、たしかにSNSなどで知って「ぜひ!」と思った時に、自ら手を挙げる方が、直接のメッセージよりも気楽なような気がします。
しかしあなたが迷っている気持ちも想像できますよ。SNSにしても、もちろん多くの人が全部を読んでいるわけでもなく、終わった後に「えーー言ってくれたら、絶対したのに!言ってよ〜」なんていうことを避けたいですよね。
「依頼する時」の注意点
もちろん相手との関係性にもよりますが、あることを思い出しました。自分が執筆の仕事をはじめた頃、とてもお世話になった方が、「受けた依頼は、“本当に自分がするべきことなのか、したいことなのか”ということを最低、ひと晩考えるようにしているし、(ここからが大事です)こちらが依頼する時には、“できる限り断りやすい”雰囲気で、頼むように工夫している」ということを、よく言っていました。今でも、それはとても大事なことだと思っています。
スルーしやすい雰囲気
あなたの場合も、友人知人にSNSをしない人も(あなた自身もそうかもしれません)、ご関係の深い人もいるでしょうから、もし直接お願いしたいと思ったら、できる限り「断りやすい雰囲気」を作って依頼するといいのかな、と思いました。
「近況報告がてら、ちょっと知らせたいだけで、ぜひスルーしてくださいね」 そこまで書くかは別にして、それが「軽いお願い」であることを丁寧に書く努力はあってもいいでしょう。
「断られて当たり前」
しかし受ける依頼は、何事も「逆」のことが結構あると思うのです。「あなたの知り合いを知っているから、ぜひ講演をして欲しい」「これは社会的に意味があることだから、断らないで欲しい」 “想いが溢れているから”、かもしれませんが、そう言われると「こちらにも、時間や体力に限界があることを知って欲しいなぁ」と思うことが何度かありました。
また少なくないのが、苦慮して丁寧に断っても、「機嫌を悪くする人」です。依頼事というのは、「断られて当たり前」と思っていましょう(悩みの文面を読んで、あなたが断られて機嫌を悪くするような人でないことは、すぐにわかったので、これは一般論として読者のために書いています)。
またインターネットのメッセージ(LINE等)では、どうしても距離感が近すぎる場合、年賀状やDMのように紙のご案内をしてみるのも、程よい場合があります(経費がかかってしまいますが)。
しかし便箋で30枚ぐらいお願いを書くのは、少し恐いかも知れませんので、止めておきましょう。
「葛藤」
あなたに贈る仏教語は、「葛藤(かっとう)」です。今でも、心の中に相反する思いがあって、選択に迷っているような状態を指す言葉として、よく使われますよね。
仏教語としての葛藤は、葛(かずら)や藤が、近くに生えている草木にまとわりつくことから、「覚りを開くさまたげとなるもの、煩悩」を指し、特に禅では、「ともすれば人を束縛し自由を失わせる」ことから、文字や言葉のことをいいます。
しかし字や言葉は、逆に覚りの境地を如実にあらわす活きた言葉<活句(かっく)>として、作用することもあるとする場合もあります(ややこしくて、すいません)。
あなたも、これから仕事をしていくうえで、あるいは人生を生きていくうえで、今回に限らず、「言葉の使い方」が大事になる状況が多いはずです。そのような時、「上手な言葉」を使おうとするよりも、基本コンセプトとして、「相手の自由を拘束する言葉ではなく、相手に自由を与えようとする言葉」を使おうとしてみてください。
今回でしたら、(最初に戻りますが)、お誘いするとしても、「断りやすい」言葉を相手に投げかけるということだと思います。
その思いは、長い目で見れば相手にも伝わるのではないでしょうか。こういった場合、大事なのは時に「熱意よりも相手への想像力」です。些細なことですが、このことに悩んでいるあなたの「葛藤」は、正しいと思います。それこそ想像力ですから。
【今日のまとめ】
・「断りやすさ」を大切にして案内しよう。
・依頼事は何事も「断られて当たり前」。
・「葛藤」のふたつの意味合いをヒントに「相手に自由を与える言葉」を使う。
【直感・運気アップ】
嫌な時、無理な時には、丁寧に断ることを習慣にしましょう。自分が依頼する時に、「断られる」ことへの抵抗がなくなります。文中にも書きましたが、「丁寧に」というのが意外と肝です。
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この記事を書いた人
- 「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。
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