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高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデル#12 これって本当にビジネスになる?課題を価値に転換するための思考法

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顧客の何気ないニーズや不満を解決することがビジネスアイデアにつながる「ジョブ理論」。今回は、解決策の導き方のヒントです。

プロフィール

プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎

東京大学法学部卒業。デジタルハリウッド大学院客員教授。プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。

アイデアを本当の「ビジネス」にするために

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「ジョブ理論」とは、顧客のニーズや不満を〈ジョブ〉ととらえ、考えたジョブの解決策がそのままビジネスアイデアになる、というものです。

とはいえ、この解決策がなかなか浮かばない、あるいは自分が考えた解決策がビジネスアイデアとして成り立つものか、という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

まずはGoogle検索から始めよう

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自分が考えたビジネスアイデアは成り立つのか、もしくは解決策そのものが浮かばない場合、どうしたらよいでしょうか。

顧客の課題解決を考える、つまりビジネスアイデアを考えていくときに、自分の頭の中にあるものだけで十分な選択肢が出るかというと、そうではない場合がほとんどでしょう。
そのヒントとして、競合サービスのリサーチがあります。具体的にどのようにリサーチすればいいかというと、

一番簡単なのはGoogle検索です。
実際に私も「パートナーCFO®」について考える時に使いましたが、私の場合は「CFO」という役職名だけでは検索結果が多すぎました。
そこで、「社外」や「資金調達」等関連するワードを打ち込んで検索していきました。
リストアップされたウェブサイトを覗いていき、自分が想定している商品・サービスと似ていれば、それはいわゆる競合、ということになります。

この「ジョブ理論」の考え方を応用すると、顧客の「何気ないニーズや不安」から課題を設定して、それに対する解決策(ビジネスアイデア)を考えることができます。
まさに、運任せではなく、ロジックでビジネスアイデアを考える方法と言えます。

〈CFO〉で検索:検索結果約 266,000,000 件
〈CFO 社外〉で検索:検索結果約 683,000件
〈CFO 資金調達〉で検索:検索結果約 944,000件

また、例えばパン屋などの店舗があるビジネスをしたいという場合は、店を出したいと考えているエリアの駅を基点に見ていきます。

まずは駅の北口南口(東口西口)から半径2~300mくらいでGoogleマップなどを確認してみます。

そうするといくつか競合となる店舗が出てくるので、実際に訪問して見てみる、というように進めていきます。

リサーチの極意①見る項目を決める

リサーチの極意は2つあります。

  • 見る項目を決める
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競合をウェブ上で検索する、実際の店舗を見て回る、いずれの場合も単純に見ているだけではそれぞれのサービスの特徴に目が行って、「そうか、どこも頑張ってるな… どうしたものかな… 止めた方がいいかな…?」と思考が停止しがちです。

そこで競合リサーチをする際は、リサーチ結果を使える情報にするべく、ポイントを整理して、記録として残していくことが重要です。

私が実践しているのは、自分なりの視点、判断基準を盛り込んだマトリックス表を作成し、情報を埋めていくという方法です。 情報を入れ替えたりするのにExcelなどの表計算ソフトが便利ですが、手書きでも構いません。

マトリックス表を作くると明解

競合と思しきプレイヤーにはどんな人たちがいて、どんな会社組織(構成メンバー)で、どんな商品・サービス名で、どんな価格帯で提供しているのか、などを調べていきます。

リサーチの極意②リアルに体験せよ

リサーチの極意2つめ

  • リアルに体験せよ
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ウェブ上で販売しているサービスであればウェブサイトを見るしかありませんが、店舗がある場合は実際に足を運んでみましょう。
ウェブ上の口コミはいわば偏った顧客の声、バイアスがかかっているケースが多いので、実際の顧客の声の代わりになるとは言えません。

やはり、手や足を動かして得た一次情報に勝るものはないでしょう。

例えばパン屋さんであれば、実際に駅から歩くとどのくらい時間がかかるのか、ファミリー向きか高級感がある店構えか、朝昼夕と時間帯を変えると客層や賑わい具合も見ることができます。
また、実際にパンを買ってみると、ポイント制やオマケを付けてくれる、接客で気が利いた一言を掛けてくれるな、といったことも分かります。

そうした情報の全体を眺めていくと、

「そもそもこうした商品・サービスはどういう人をお客さんにしているのか」

「何を売りにしているのか」

ということがおぼろげながら見えてきます。
そこで見えてきたこと、考えたことを記録していきます。

チャンスは生み出すより、競合の隙間から探す

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競合リサーチの情報がまとまったら、全体を並べて考えていきます。

「こういう点はかぶっているな」ということから、

―サービスとして外せないポイントなのかな?

―自分は重要だと思った点だけど、みんな外しているポイントがある

といったことを考えていきます。 もし、「お客さんが求めている」ことだけど、「自分が提供できて、競合が提供していないこと」があれば、それはまさにチャンス、かもしれません。

半径5メートルのビジネスなら「自分の思い」最優先

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解決策(ビジネスアイデア)を考えていく中で、「このビジネスアイデアはイケそうかどうか」の判断はどう考えたらよいのでしょうか。

合理的に判断するためには、何らかの判断基準を持つ必要があります。
判断基準に照らして、ビジネスアイデアを評価するのです。
判断基準としてまず考えられるのは「市場・顧客」。
ビジネスは、「市場・顧客」つまりお客さんのニーズがあってこそのもの。
ビジネスアイデアを評価するにあたっては、お客さんのことをよく知る、考えるということが大前提ではあります。

しかし、私は殊「半径5メートルのビジネス」においては、あまり市場や競合を調べすぎない、考えすぎない方がよいと考えています。
何を重視するのかというと「自分」です。「半径5メートルのビジネス」においては、

―自分が世の中のどんな課題を解決したいのか

―自分がどんなことを世の中に問いたいのか

という、自分のことを一番に考えなくては、続けることができないからです。

続けられないとビジネスは立ち上がらない

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どんな商売、ビジネスでも、1ヶ月2ヶ月で成果が出るものではありません。どんなに短くても半年は必要です。

ビジネスを始める際、「創業融資を受けたい」としたら、融資のために金融機関に事業計画書を提出する必要があります。その際に見られる重要なポイントの一つが「少なくとも半年で黒字化するか」です。

「ビジネスを半年で黒字化に持っていける」ことが一般的に重要ということは、裏を返せば、創業して少なくとも半年は赤字覚悟で、貯金をすり減らしながら頑張らないといけないということです。
つまり、少なくとも半年間は赤字に耐えて、ビジネスを続けられるか、自分に問う必要があります。

続けられないとビジネスは回らない

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更に、ビジネスは「いかに顧客に知ってもらうか、買ってもらうか」と同じくらい「リピートしてもらえるか」が重要です。新規顧客を求め続けないといけないビジネスは安定感なく、継続するのが大変です。

商品やサービスがリピートで購入されるというのは、その顧客が「その商品・サービスのファン」になっている状態です。

では、ファンはどのくらいでできるものでしょうか? 例えば、ご自身が好きなアイドルや俳優、スポーツチームなどをイメージしてみてください。デビューして、すぐ存在を知りましたか?存在を知って、すぐファンになりましたか?こんなことを考えると、自分のビジネスを支えてくれる数の「ファン」が半年そこらで出来るものではないことが容易に想像できます。

ビジネスをモノにするガソリンは「自分の思い」

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以上の2つ、「続けられないとビジネスは立ち上がらない」「続けられないとビジネスは回らない」ということから、ビジネスをモノにするには続け“られる”ことが重要です。

「単純にお金になるから」「世の中に求められているから」というだけで続けられるでしょうか?自分の中にエンジン、ガソリンとなるものがないと、続けていけないものではないでしょうか。自分の力で「半径5メートルのビジネス」をモノにするには、「自分の思い」というガソリンが必要なのです。

ということで、継続できる「半径5メートルのビジネスアイデア」を考えるために、次回から自分を深掘りしてビジネスアイデアを考える方法を2つご紹介していきます。

この記事を書いた人

高森厚太郎
高森厚太郎プレセアコンサルティング株式会社 代表取締役パートナーCFO
プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。

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