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インタビュー

得意なことを掛け合わせてフリーランスになるセルフプロデュースばかり頑張ると本質を見失う?唯一無二の書き手になるために必要なこと 〈吹奏楽作家・オザワ部長/第3話〉

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書くことを仕事にしたいすべての人へ。フリーランス歴26年。フリーライターから吹奏楽作家に転身したオザワ部長が伝える「書く」を仕事にするということ。

プロフィール

吹奏楽作家オザワ部長

世界にただ一人の吹奏楽作家。早稲田大学第一文学部在学中に小説家を目指す。フリーランス歴は26年。初めはフリーライターとして活動。中学時代吹奏楽部だったことから、オザワ部長のペンネームを起用して『みんなのあるある吹奏楽部 』を出版。吹奏楽作家に。最新刊『旭川商業高校吹奏楽部のキセキ』好評発売中。

近年増えてWEBライター。副業ではじめたいという人も少なくありませんが、フリーランスのライターって一体どうやって仕事を得て活動しているのでしょうか。今回は、吹奏楽作家のオザワ部長さんに、ライターという道に、個性をプラスして自分だけの仕事のスタイルを確立した方法をうかがいました。

オザワ部長流「唯一無二の書き手になる方法」リスト

1.ひとりで活動するためには多くのスキルが必要

2.フリーランスで大切なのは契約内容の確認とお金をきちんといただくこと

3.大切なのはセルフプロデュースではなく表現での勝負

全3話、第1話はこちらからどうぞ。第2話はこちらからどうぞ

好きなことで稼ぐのは心苦しいと感じた時に欠けていた視点

ライター顔写真

フリーランスになるかどうかを考えるときに、多くの人が心配になるのはお金の面での不安定さだと思うのですが、不安はありましたか?

インタビュアー顔写真

私はフリーランスになったのが大学を卒業して間もない頃だったこともあって、フリーターからフリーライターになったような感覚だったので、さほどありませんでした。

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アルバイト感覚だったんですね。今はどうですか?

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逆に年齢を重ねてきた今の方がいろいろ心配はありますし、会社員の方は、厚生年金ももらえるし、有給休暇はあるし、ボーナスや手当もあるし、近くに相談できる仲間がいるし……それは羨ましいなあと思うことはありますよ。

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フリーランスとして活動する中で、一番困ったことって何ですか?

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個人で活動している人のほとんどがそうではないかと思いますが、ギャランティや契約について自分から提案や交渉しづらいところですね。

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確かに、仕事を請け負う側からは、お金の話はしづらいですよね。

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昔は業界全体が「振り込まれるまでいくらなのかわからない」という風潮でしたが、現在は、最初に提示してくださる会社さんがほとんどなので、今からはじめられる方も、さほど心配はいらないように思います。それでも、フリーの方からは「交渉しづらい」というお話も聞きますね。

ライター顔写真

どうやって克服すれば良いのでしょうね。

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「この人にしか頼めない」という仕事が増えれば、自ずとお金の話もしやすくなるのではないかと。あとは、「お金をきちんといただくことによって、世に出せる記事がある」ということを自分自身で理解することかもしれません。

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社会にとって必要な仕事をしている、と?

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実は私も、子どもたちのことを取材して記事にし、それでお金をいただいていることに葛藤した時期がありました。吹奏楽界への貢献が社会貢献にもつながっているのではないかと思いながらも、お金をいただいているということに負い目を感じることが少なからずあったんです。

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どうやって折り合いをつけたのですか?

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私が書くことによって「吹奏楽ってやっぱりいいよね」っていう人が増えるのを自分の目で見るうち、子どもたちが取材に行くことを喜んでくれるうちに、やはり、「続けるためのお金をいただくことが大事」と思えるようになりました。

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続けるためには正当な報酬をいただかなくてはということですね。

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はい。自分が手掛けている吹奏楽の仕事に意味があると確信しているからこそ、継続することが吹奏楽界のためになるだろうと思うんです。きちんと報酬をいただくことが次の仕事につながり、また新たな吹奏楽界や社会への「貢献」につながるんだと思えるようになってからは、感謝して受け取れるようになりました。

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好きなことも、ボランティアではやっていけませんよね。

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そうなんです。ただ、中学校や高校の演奏会の宣伝やPRの文章を書いたりするときは、お金をいただかないと決めています。自分の中で筋が通っているからこそ、きちんとお金をいただいて仕事ができているのだと思います。

セルフプロデュースより前に、スキルを磨くべし

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自分の仕事を広げていくための、セルフプロデュースの仕方について教えてください。

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実は私、自分をよく見せるためのセルフプロデュースというのは実は意識したことがなくて。

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ペンネームをつけたり、学ランで登場したり、はセルフプロデュースとは違う?

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どちらかというと、誰にでもわかりやすいように、一緒に楽しんでもらえるように、子どもたちがとっつきやすいように、と考えていたらいつしかそうなっていたというか。セルフプロデュースというよりも、「人が喜んでくれること」をペンネームや衣装でやった結果ですね。

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目的が大事ですね。

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今の時代はセルフプロデュースを非常に重視する傾向があり、大学などでも教えていることがあるようですが、自分をプロデュースすることに意識がいってしまうと、自分を大きく見せるとか、違う人間に見せる努力になってしまうような気がするのです。

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では、自分の仕事を広げていくためにはどうすればいいと思いますか?

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やはり、自分の仕事の質を上げていくことが一番ではないかと思います。一番磨かなくてはならないことは、やっぱり、自分がやろうとしていることに対する技術や能力だから。ライターであれば、まず良い文章を書くことです。その文章をより多くの人に読んでもらう、そのきっかけづくりとしてセルフプロデュースを考えるといいかもしれませんね。

今やりたいことができていなくても大丈夫

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今力を入れている仕事や、これからやっていきたいことは何ですか?

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コロナ禍の影響が大きかったこともあり、吹奏楽部の子たちの活動の場が激減したことから、彼らがコロナ下で何を考え、どう活動してきたのかを少しでも知って欲しいと思って活動してきました。

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コロナ禍によって状況が変わったんですね。

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コロナ禍や少子化のなかでの指導メソッドを、名指導者と呼ばれる先生方に取材してまとめたり、最近は学校に取材に行ってノンフィクション小説のような形で発表することが増えました。

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小説家志望だったことと、インタビューライターの経験が、今に結びついているんですね。

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日本の吹奏楽人口って実は120万人にものぼると言われています。プロのウインドウオーケストラもあるし、中高生の演奏は心の琴線に触れます。校庭で鳴り響いていたあの吹奏楽の練習の音は、自分が学生だった頃の気持ちを思い出させてくれる。

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放課後のあの音は今も覚えています!

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演奏会やコンクールなど彼らの演奏が聞ける場所はたくさんあるので、これから、自分の好きなことを仕事にしたいと思う人にこそ、ぜひ、一度中高生の吹奏楽に触れて欲しいと思います。ただ優雅に楽器を奏でているのではなく、汗と涙と青春の葛藤の末、全身全霊で演奏する吹奏楽には、多くの人の心を動かす力があります。私はこれからもその吹奏楽の力や感動を伝えていきたいです。

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今から書くことを仕事にしたいという人にメッセージがあればお願いします!

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人によるとは思いますが、近道はないと思って、なりたいものになるための「学び」の時間を大切にしてほしいと思います。人はいつでも、何からでも学ぶことができます。それがやがて「自信」に変わっていくと思います。才能あふれる新たな「書き手」の登場を、私も楽しみにしていますので、ぜひがんばってください!

全3話、第1話はこちらからどうぞ。第2話はこちらからどうぞ

オザワ部長最新刊絶賛発売中!

●書名 旭川商業高校吹奏楽部のキセキ 熱血先生と部員たちの「夜明け」

●出版社 学研プラス

●著者 オザワ部長

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取材/I am 編集部
文/MARU
写真/田尻陽子

この記事を書いた人

MARU
MARU編集・ライティング
猫を愛する物書き。独立して20年。文章で大事にしているのはリズム感。人生の選択の基準は、楽しいか、面白いかどうか。強み:ノンジャンルで媒体を問わずに書けること、編集もできること。弱み:大雑把で細かい作業が苦手。

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