Series
連載

高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデル#02 「副業」は会社に振り回されないための最大のリスクヘッジ

プラットフォームやアプリを活用すれば、スマホひとつで副業も起業もできる時代。何をしたらいいかわからないときは「3C分析」で自分に合う副業を探してみる。

プロフィール

プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎

プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。

++ 「このままの人生でいいの?」 ++

中堅学習塾チェーンに新卒入社した松井ゆみ(32歳)は、

学生時代の塾講師経験が評価されて20代で吉祥寺校の教室長になるも、

忙しくて恋人と別れてしまった。

そんなある日、大学時代の友人たちとランチ。

去年転職、そこで出会った彼と来春結婚したり、

子育て中にベビー用品の輸入販売で起業したり……。

ふと「私の人生、このままでいいのかな…」とぼんやり考えていたら、

勤務先の会社が大手学習塾チェーンS社の傘下になるという発表が。

「傘下に入るって、会社はなくならないよね。仕事、どうなっちゃうんだろう…」

本業で発揮できないスキルや知識は「副業」にする

会社の中で何かやりたいことがあったとしても、そのポジションにつけるか、というのは保証がありません。例えば海外赴任を希望していても、同じ会社でチャンスを待っているだけでは、ずっと行けないまま50歳になってしまう…ということも十分にあり得ます。

また、あなたが個人的に身につけた知識やスキルは、社内で認知され、さらにその知識やスキルを活かす場がない限り、仕事として使うことはないでしょう。

もし、あなたがどうしてもやってみたいこと、活かしたい知識やスキルがあるなら、「副業」でチャレンジしてみることがおすすめです。

「好き」な事がなくても「できること」を副業にする

確かに、「海外で働きたい」となると、副業では物理的に難しいかもしれません。しかし、海外との商売や英語を使う仕事などであれば土日にネットを活用すれば取り組めます。

副業や起業というと「好きなこと」「やりたいこと」でやりたい、あるいはそういう姿にあこがれるという風潮があります。しかし、自分がやりたいことに限らず、「自分ができると思うこと」を、求める人がいて、うまくマッチングすればそれで商売になる話です。

そんな風に、柔軟に自分のやれることを探せば、案外あるものですし、やれるものです。

副業がその後の起業につながる

「できること」を副業とし、起業につながった事例として、私の経験をご紹介します。

私は銀行勤務、2つの事業会社でのマネジメント経験、ベンチャー企業取締役を経て、独立起業しました。主な事業内容は3つで、中小企業やベンチャー企業の経営コンサルティングを軸に、マネジメント分野の企業研修、中小・ベンチャー企業向け経営コンサルタント(パートナーCFO®)の養成塾を主宰しています。

経営コンサルティング以外は、いわゆる講師業ですが、これは副業として講師業を続けていた経験が生きています。

私は20代までは自分が講師をするとは全く考えていませんでした。30代直前に入ったグロービスという会社で研修の企画運営を担当した時に研修講師を数多く見る機会があり、できる講師・人気講師とそうでない講師の違いを考えていくうちに、「自分でもできるかも?」と思うようになりました。

とはいえ、私は元々会社から講師という役割を期待されていたわけではなく、待っていてもその機会が巡ってくることはありません。そこで会社に掛け合って、クリティカルシンキングの講義をやらせてもらえることになりました。

そこで思いのほかうまく講義ができたこと、ビジネス分野の教育市場が伸びていたことから、退職後も外部委託先として副業で講師業を続けてきました。そして、講師業で身につけたスキルやノウハウは、その後独立起業する際の柱につながりました。

振り返ると、私は30代で講師をしたことが今につながっているのですが、その転機は偶然の賜物ではなく、自ら動いて手にしたものでした。

プラットフォームの出現で初期費用なしで副業可能に

私が副業をしていた頃は、講師業で時間や場所が限定されることもあり、本業との調整に苦労したこともありました。ところが、近年では働き方改革やリモートワークやテレワークが整備された会社も増え、会社員が自由に時間を使いやすくなってきています。

また、個人で使える様々なウェブサービスが登場しています。打合せができるZOOMなどのオンライン会議システムやChatworkなどビジネス用の連絡ツール、スキル(ライティング、カウンセリング)やプロダクトの販売それぞれに向いたプラットフォームなどです。これらのサービスの多くはスマホのアプリケーションもあるため、パソコンを持っていなくてもスマホ一つで商売ができる環境なのです。

大手企業を筆頭に進んでいる副業解禁の波と相まって、副業はどんどん身近な存在になってきていると言えます。

何かを商品を作ると言っても、今はハンドメイドで自分の手作業で作れるものに限りません。アップルのように、自社で工場などの製造設備を持たずに、生産工程を丸ごと外部に委託する製造業(メーカー)が存在するように、個人レベルでも自分が思い描いているものを作れる人や会社をネット上で見つけ、コンタクトすることができます。

このようなOEMによって、ものづくりで起業する場合でも、製造のハードルは格段に下がっています。

商品が出来たら次はお客さん探しです。ネットも何もない時代であれば、そもそもお客さんがどこにいるか分からないので、自分の足で探して飛び込み営業や電話営業をする必要がありました。

今は、大体どんな会社もホームページを持っていて、コンタクト先も載せているので、問い合わせや商談をネットで完結することもできます。

商品の販売も、BASESTORESなど個人で利用できる販売プラットフォームがあり、初期費用をかけずにおしゃれなECサイトを作ることができ、費用は販売手数料だけです。

副業に必要なのは「3C」と「スマホ」と「知恵」

副業や起業として、まずは何を商品とするのかを決める必要があります。何らかのコンサルティングであれば、自分自身が商品となるので何らかの専門性が要でしょう。あるいは、商品を作って売るのであれば、その商品を作っていく必要があります。この商品を考える段階でも「3C」分析を使ってみましょう。

あなたが扱う商品が、自分というコンテンツであっても、何か作ったものでも、ネット上でお客さんは探せるし、販売のためのプラットフォームやサービスも手ごろな価格で使えるものがあります。

あとは、その中でどう自分のページや物を見てもらえるか、お客様にその気になってもらうか。それはまさにウェブページの構成や文言を工夫していく必要があります。

そういった意味では「知恵」の世界と言えるでしょう。

つまり、莫大なお金もかからない、他人の力もいらないと考えると、要は自分次第で副業でも、独立起業でもできる時代。知恵さえあれば、出来るのです。

会社が副業禁止でも切り抜ける3つの方法

社会全体では大企業や金融機関で副業解禁がニュースになっており、今後副業をしやすい環境になっていくとは想定されます。

しかし、「会社の規定で禁止されているから」と一歩踏み出せない人がいることも事実です。

本来、就業時間以外をどう過ごすかまで会社が法的に拘束することはできません。実際に「会社にバレずに副業する方法」で検索してみると、様々な情報が出回っています。今回は、そんな方のために、出来ることを3つご紹介します。

報酬を受け取らない働き方をする

NPO法人の支援や、専門性を活かしたプロボノ活動など、収入を得ない方法で、仕事をしてみる、という選択肢もあります。そこで身に付いたスキルや人脈は自分のものになり、将来につながるかもしれません。やりがいも得られます。

今の勤務先に副業可能か確認、交渉する

これまで禁止されていても、今後もそれが続くとは限りません。3C分析で、そもそも交渉の余地があるかを見極めて、可能であれば会社に交渉してみるのも手です。

市場・顧客

現職とは異なる職種・業種の仕事かどうか。

(本業では経験できない仕事、本業に影響のない業界であれば副業に難色を示される恐れは少ないはず)

競合

ここでは、自分の業務・役割に対しての競合と今の会社にとっての競合(同業他社)の2つを考えます。

自分が行っている業務・役割は社内で代替されうるか、外部から採用しやすいか。同業他社では副業可能かどうか。

(余人を持って代えがたい立場であったり、同業他社で副業可能であったりすれば、無碍な対応はされないはず)

自社

現職で安定した成果を上げているか。転職しようと思えばできるスキルや経験があるか。

(余人を持って代えがたい立場であれば無碍な対応はされないはず)

③副業できる会社へ転職する

一見正攻法ですが、時間がかかる話で確実性も高いとは言えません。というのも、そのように働き方の自由度がある会社は人気が高く、なかなか入れなかったりします。

また実際に転職しても、当面は業務や環境に馴染むのに時間もエネルギーもかかります。リモートワークなどが認められる職場であっても、入社後一定期間は出社が求められることもあるようです。いずれにしても、副業どころではないでしょう。

また現実的に転職しやすいのは、これまで経験・実績のある業務・分野なので、希望通りの転職をするにはじっくりと戦略を練る必要があります。

そもそも転職で自分がやりたい仕事や、知識やスキルを活かせるのならば副業でなくてもよいかもしれません。

給料アップが見込めない人こそ「転職」より「副業」

今は勤続年数に応じて給料が毎年上がるという保証はありません。収入を上げるために転職という選択もありますが、本業を変えるより手軽に収入をアップすることができるのが副業です。

「本業の仕事が好き」「働く環境や人間関係に不満がなく、続けたい」けれど、「収入は上げたい」というのも立派な副業の動機。

月に数万円稼ぐことができれば、住まいや持ち物をワンランクアップしたり、旅行や資格の勉強などの自分磨き、将来に備えて貯蓄や投資、と短期・中長期的な視点で人生の選択肢が増えます。

転職活動では「市場価値」という表現が使われますが、これは今いる会社の中でもそのまま使える考え方です。3C分析のフレームワークを使って、まずはご自身のたな卸をしてみてはいかがでしょう。

ご自身のキャリアを客観的に見つめることで、新たな選択肢が見えてくるかもしれません。

「副業」「起業」は会社に振りまわされないための選択肢

私は副業として続けてきたことが起業につながりましたが、これは会社ありきではなく自分のキャリア、ひいては人生の舵取りを辞めなかったからです。

今の会社で働き続けることになんとなく不安がある人はもちろん、ふだん目の前の仕事や生活に追われてキャリアを考える時間はなかったという人も、ぜひ「じぶん株式会社」の経営者となって、環境分析をしてみてください。

特に女性の人生は、会社での仕事に限らず、家庭生活や妊娠出産、育児、介護や自身の体調など、実に様々な要因に影響を受けていると思います。

「副業」や「起業」は、会社に振り回されない働き方の選択肢の一つ。人生の中でご自身の手で舵取りできる選択肢として知ってもらうことで、あなたが本当に望む人生を歩む一助となれば幸いです。

この記事を書いた人

高森厚太郎
高森厚太郎プレセアコンサルティング株式会社 代表取締役パートナーCFO
プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。
この記事をシェアする
  • LINEアイコン
  • Twitterアイコン
  • Facebookアイコン