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絶対に失敗するカフェの作り方カフェ開業で、新規のお客さんを呼び込むために最も大切なのは、おしゃれな「看板」だった。良い看板の条件とは!?

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カフェ開業の必殺技は、店舗自体を「巨大な看板」にしてしまうこと!? 珈琲文明の店主赤澤智さんが語ります。

プロフィール

珈琲文明店主赤澤智

(あかざわ・さとる)昭和42年生まれ。メジャーデビューを目指しバンド活動をしながら12年間塾講師としても活動。大手学習塾の教室長及びエリアマネージャーとして4年半正社員として働いた後、2007年40歳の時に横浜市白楽にカフェ「珈琲文明」を開店。創業開始から今日に至るまでの16年以上(コロナ期間も含め)1度も赤字になったことがなく、黒字で長く続けられる経営を心掛けている。著書に「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えを見つけた(祥伝社)」がある。

新規のお客さんがくるきっかけは「通りがかり」

新規オープンした大手チェーン店ではないワンオペ個人店で、新規のお客さんが来るきっかけって何だと思いますか? インスタやTwitterなどのSNSに投稿された「映えるおしゃれな写真」でしょうか? それとも、チラシや広告を手にした人でしょうか? はたまた、知人友人からの口コミ?

私が経営する珈琲文明の場合、新規のお客さんの来店動機の第一はズバリ

「たまたま店の前を通りかかって」

です!

なぜ把握しているのかというと、常連になられたお客様の何人かに直接聞いてみたからです。大半が「通りかかって、気になって入った」でした。

珈琲文明・店主赤澤がお伝えします。(写真/珈琲文明)

良い看板がないカフェは失敗する!?

カフェ開業で大事なのは、その店の前を通る時にいかにインパクトを与えることが出来るかということです。

そして、インパクトを与えて「入ってみようかな」と思わせるには、「看板」が非常に重要です。

ということで、今回は、「良い看板」について語ってみたいと思います。

さてここで質問です。「看板」の存在意義ってなんでしょうか。

答えは簡単。「店のことを広く知らしめること」ですよね。

となると、必然的に、視界に入らない看板には意味がないことになります。

良い看板がないカフェは廃業する、とまでは言いませんが、前を通った方が「あ、入ってみよう」と思う機会はかなり減ってしまいます。

そして、この看板のあり方は、店の立地によっても変わってきます。

郊外やロードサイドにあるお店の場合は、看板がすごく目につきますので、「あ、入ってみよう」と思われる可能性は高まります。

しかし、駅周りなど、人間の歩行動線上の視界に入らない看板は看板としての意味がなく、むしろ大事なのは袖看板やサイン……つまり、大きな丼ぶりから湯気が出てるようなオブジェなどがあれば「あ、近くにラーメン屋があるんだ」と遠くからでも認識できます。

ですから、看板というのは、本看板だけではなく、袖看板やサインも超重要だと言うことを覚えておいてください。

カフェの最高の看板は「内装を外に見せる」こと

先ほど、看板の役割について「店のことを広く知らしめること」とお伝えしました。

ここで、「店のことを広く知らしめるもの」=「看板」と言うふうに考えて、どう言う看板が良い看板なのかを考えてみましょう。

「メニュー商品の写真や店内の様子が映った写真やポスターを掲示する」というのもまた「看板=店のことを知らしめる」には大切かもしれません。

でも、それならば、店の中を見せてしまうことができたなら、もっと良くないですか?

ということで、私が考える最高究極の「看板」を紹介しますね。

それはズバリ「お店の中身(内装)をそのまま見せる」です。

珈琲文明のガラス張りの店舗(写真/珈琲文明)

店の外で店内紹介と称して「店内の様子を写真で公開」というのも、もちろん、効果的ではありますが、「中身をそのまま見せる」にはかないません。

つまり最強究極の宣伝、究極の看板とは

「店内をそのままよく見える状態にする」

ことです。

そう、それはつまり、

「通りに面した店の壁は原則として極力ガラス張りにすること」

だったりします。

お客さんに配慮して全面ガラス張りにする

写真でも動画でもなく、店内そのものが即時即物的に見ることが出来る以上の安心があるでしょうか? いっぽうで「高級会員制クラブ」のような外から中の様子が全くうかがい知れないミステリアスな扉を開ける勇気があなたにあるでしょうか?

ここで、重要な注意点をひとつ。立地にもよりますが、さすがに「全面ガラス張り」にしてしまうと、中にいるお客さんがくつろげなくなってしまいます。

そこで、「外からは店内の様子のほとんどが見えるけれど、お客さんの顔は見えない」という状態にすることが重要だったりします。

珈琲文明。お客さんの目線に合わせて外が見えないようになっている(写真/珈琲文明)

具体的には、お客様が座った状態の目線部分の前後30~40cmほどは「磨りガラス」、または「短いレースのカーテン」のようなもので隠すこと。さらに、お客様の脚部が外からも見えてしまうのはやはり嫌がる人も多いはずなので、床から60~70cmは腰壁、腰板を設けるようにしましょう。

これらの点に注意して、極力目一杯ガラス張りにしてしまうこと。これが、究極の「看板」作りになります。

「スケルトンから内装を手がけたならわかるけど、居抜きだからそれは無理」

と思った人へ、居抜きだろうがなんだろうが、結構大掛かりな改装工事になろうが、コストがかなりかかろうが、これは、是が非でもやってください。

カフェの内装にかける費用は「広告宣伝費」

なぜか。内装費っていうのは、内装工事費であると同時に非常に重要な「広告宣伝費」でもあるからです。

考えてみてください。新規のお客さんに来てもらうために、チラシなりクーポンなりに「広告宣伝費」として毎月数万円かけていたとします。これ、支払いが、永遠に続きますよね。

ところが、ガラス張りに改装した場合、私のメソッドでワンオペのカフェを開業した方々の経験値ではありますが、改装した場合、おそらくものの1年で「広告宣伝費」の元は取れ、その後は一円もかけずにこの「宣伝効果」は持続します。

メディアや媒体を扱う広告業者さんの常套句に「店の名前をあちこちで何度も見ることで、人は動きます」というものがあります。

以前、こんなお客様がいました。それは、「このお店が出来た当時から存在は知っていました。毎日店の前を通っていていつか入ろうと思いつつようやく来れました」という方です。

この話を聞いたのが2019年、当時の私のお店は開業12年だったので、毎日通るという単純計算で言えば、「4,380回店内広告を見続けた」ことになります(笑)。

この4,380回をWEBや新聞などに広告を出すなんて、まず、個人店にはできません。

こちらがかけたのは内装の初期費用だけです。

内装工事の費用というのはその後の広告宣伝費にもなるわけです。

変にケチったりしないで徹底的にこだわる必要があるのです。

珈琲文明は、ドアもガラス張り。もちろん、看板も設置(写真/珈琲文明)

カフェを開業するなら店の向きが重要

最後にとても重要なお話をします。

先に述べたような歩行者が店内の様子を即物的に知ることが出来るということ自体が、『看板』であるとするなら、そのフレームは大きければ大きいほど良いということになります。

となると、「これからカフェを出したい」と思ってこの連載を読んでいる方は、内装について悩む前に、「物件の向き」についてとことん検討してください。

基準はもちろん「店がガラス張りになったときに、しっかり素敵な内装が見えるかどうか」です。

同じ店舗面積でも入口が狭くいわゆる「ウナギの寝床」のようなところだと、ガラス張りにできるのは扉だけ……ということになってしまいますね。

その扉さえも店内が見えない場合は「高級会員制クラブ」誕生です。


メソッドを2020年に初の著書として出版。「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えをみつけた

同じ面積であっても歩行動線上に長い、即ち横に長い(俗に「間口が広い」とも言います)店舗を全面ガラス張りにすること。

そうすることで、「店内の様子が一望にしてわかる巨大な看板フレーム」にすることが出来るんです。

そんなわけで物件選びの際に坪数や店舗面積もさることながらこの「間口が広いかどうか」というのも判断基準のひとつとして覚えておいてくださいね。

珈琲文明店主・赤澤智でした。

この記事を書いた人

赤澤智
赤澤智珈琲文明店主
脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」

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