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絶対に失敗するカフェの作り方カフェ経営の成功ポイントはクチコミで広がりやすい「1行コンセプト」が作れるかどうか。

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前回・前々回に引き続き、カフェ開業で成功したい人が考えなくてはならない「クチコミに乗りやすいコンセプト」について、珈琲文明のマスター赤澤智が語ります。

コンセプトは1行にまとめる

前回、前々回とお伝えしてきた、カフェ経営を目指す人がやらなかったら絶対に失敗するであろう「コンセプト」。

今回は、小さなカフェを立ち上げたい人がコンセプトを考える際に「カフェ経営でこれを外すと失敗する」というポイントをお伝えします。

といっても、実にシンプルなことで、結論からお伝えすると

「1行で説明できる」

に尽きます。コンセプトが「クチコミに乗りやすいかどうか」は、そのコンセプトが簡潔で「1行で説明できる」ものである必要があります。

想いは来店時に伝わればいい

コンセプトについて長く説明する必要があるのだとしたら、それは「ダメなコンセプト」です。

たとえば、珈琲文明を長く説明しようとすると、

「当店のコーヒーは100%スペシャルティコーヒー(全世界の生産量のわずか数パーセントしかないピラミッドの頂点のような世界最高グレードの豆)のみを使用し、お一人様分(約1.5杯分)に対して23gを贅沢に使用し、注文ごとにサイフォンにて一杯ずつ淹れ、サイフォンのまま提供するスタイルです」

なんてことになりますが、この中のいくつ、覚えていられるでしょうか。人がワンセンテンスを聞いて覚えていられるのは1つか2つとも言われていますから、ダラダラ伝える必要のあるコンセプトはNGだとお伝えしておきましょう。

これらの長い説明は、メディアが取り上げて取材に来てくれたときに話せばいいことですし、実際にお店に足を運んでくださった方々にメニューブックなどを通じてお伝えすればいいことです。

そして、この「実際に来てくれた時に」が重要で、お客さんがお店に来なければメニューを開けない、取材で答えるためには取材が来なければ始まらないのです。

あふれる想いは来てくれた人に伝わればいい(写真/Canva)

1行だと「覚えやすい・クチコミしやすい」

自身のSNSやカフェの公式ホームページでは存分に、コンセプトやメニューに対する「ストーリー性」を盛り込む必要があるのですが、まずは、一般の人がブログやSNSに投稿してくれるためにも、コンセプトはわかりやすくすること。

コンセプトをわかりやすくするーー。

それにはどうしたらいいかと言いますと、最初にお伝えしたように「1文で説明できる」ようにしてください。

前回、前々回と3つのコンセプトを打ち立てることについてお話ししましたが、この3つのコンセプトそれぞれについて1文で表せるようにする必要があります。もっと言うと、「ブレス(息継ぎ)無しで一気に話せる1行で表せるコンセプト」にすることです。

例えば珈琲文明の三大コンセプトのそれぞれは、いくらでも細かく表現して膨らませることも出来ますが、全て1文でも表すことができます。

  •  天井の空の色が時間で変わる
  • (スペシャルティ)コーヒーがサイフォンのまま提供される
  •  坪型のパンを器にしたカレーパンがある

というようにいずれも息継ぎ無しで一気に言えます。

1行で伝わるコンセプトを考えること。それがカフェ経営成功の秘訣(写真/Canva)

つまりは新聞の見出しやキャッチコピーのようなもので、そこからさらに細かく深く表現することも出来るようになっておくとなお良いでしょう(例えば②に関する詳細が前述した「全世界の生産量の数パーセント、云々」というように)。

伝言ゲームでも元々が長文で複雑なものになればだんだんと情報が間違って伝わっていたりしてゲームならばそれでいいかもしれませんが、そもそも長くてめんどくさいから伝えるのをやめようとなれば「クチコミに乗らない」と覚えておきましょう。

「死ぬ気」で1行を考える

さて、息継ぎなしで伝えられる1文コンセプトが1出来たなら、そのフレーズを少なくとも店主本人であるあなたはつぶやきまくりましょう。

ツイートしたりハッシュタグをつけたり、お店の看板(特に袖看板なんかに)やショップカードにもキャッチコピーとして載せたりするのもよいでしょう。

ちなみに珈琲文明のショップカードには「初めて来てもなつかしい」というコピーを長いこと載せていました(現在は「The same old café」とだけ記しさらにシンプルになっています)。1文の中でもこの「初めて来てもなつかしい」のような七五調あるいは五七調のリズムは日本人古来から馴染みもある響きなのでより伝わりやすいと思います。

珈琲文明の店内。「初めて来てもなつかしい」がコンセプト(写真:珈琲文明)

この1文ですが、店主が死ぬ気で寝ずに考えて思いついた1等賞のフレーズを記録更新するような秀逸なフレーズが生まれることがあります。

それは、「新たに客が見事なフレーズを思いついてくれる」ということです。

かつて珈琲文明にいらっしゃったお客さんがお連れ様に「ここの天井、色が変わるんだよ」と説明されているのを聞いて「おお、ものすごくシンプルでわかりやすい!」と感動したのですが、まさにこれが「フレーズの記録更新」です。こうやって店のキャッチフレーズが客によって生み出されることでクチコミが増えていくのですが、それを期待する前にまずは店主が1文にして発信することです。

「え~なんか思いつかないよそんななかなか…‥」と思いましたか?

でもここは頑張り時ですし、カフェを開こうと思ったらここを頑張らないと「絶対に失敗する」と思うくらいに重要です。

だって、お店がクチコミで話題になってメディアに取り上げられて続いていく人気店になるのと、広告宣伝費をかけまくったけど、お客さんが来なくて店をたたむことになるのとどっちがいいですか?

「赤字は嫌だけどもっと普通に地味ながらも正統派のお店で誠実にやっていきたい」という人もいるかもしれませんが、残念ながらそういうお店が毎月利益を出しながら続けて行くのは本当に難しい時代なのです。

「思いつかない」と諦めず、死ぬ気で考えよう(写真/Canva)

実例「球体型プリンのカフェ」

さて、私の話に信憑性があるかどうかをお伝えするために、私のメソッドを活用してカフェを開業された方のお話をしますね。

2022年2月2日2時22分にオープンした「十条珈琲」がこの度1周年を迎えることが出来ました。1年で半分は潰れるのがカフェの世界なので初年度がどうなるかは本当に死活問題であります。

私がカフェ開業メソッドをお伝えする「カフェラボ」の会員で、私のお伝えしたメソッドを守り抜いての開業でしたが、贔屓目は一切なしにしても、私はこの「十条珈琲」の成功を開店前から確信していました。

なぜか。強烈なコンセプトがあったからです。

「球体型のプリン」

このわかりやすいコンセプトを全面に出して、さらに「スペシャルティコーヒーとプリンの店」と看板を掲げたからです。

十条商店街界隈を歩く人たちが、看板を指差しながら「ねぇねぇ、ここのプリンってボールみたいに丸いやつなんだって」と言っている様子が目に浮かびませんか?

十条珈琲の「球体型プリン」(写真/珈琲文明)

当然ながら、事実創業ほどなくしてテレビ取材が入ったり「プリン王子」なるインフルエンサーに紹介されたりもしました。

改めて、もう一度言います。

「コンセプトなんて思い浮かばないよ」と、諦めてしまうようなら、まだ店は出さないほうがいいと私は思います。

自身の店舗が隆盛するかどうかはそこにかかっていると言っても過言ではありません。

そこから目を背けずに真剣に毎日毎日毎日考えに考えて開業準備を進めてください。

その際、あまり暗く落ち込まず明るくワクワクした気持ちで探すことも大事でそのほうが魅力あふれるお店になるはずです。


メソッドを2020年に初の著書として出版。「人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えをみつけた

コンセプトのお話は今回で一旦は終わりにして、次回からは、この連載名に則って、「絶対失敗する方法を絡めながらさらにカフェ開業のメソッドについてお伝えしていこうと思います。

珈琲文明店主、赤澤智でした。

この記事を書いた人

赤澤智
赤澤智珈琲文明店主
脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」

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