絶対に失敗するカフェの作り方一人でできる小さなカフェを開業するのは難しい? 成功させたいなら3つの特徴(コンセプト)を掛け合わせることが大切。
前回に引き続きカフェ開店を目指す人がやらなかったら絶対に失敗するであろう「コンセプト作り」の軸について、珈琲文明のマスター赤澤智が語ります。
プロフィール
珈琲文明店主赤澤智
目次
3つの柱を打ち立てることで「メディアが放っておかないカフェになる」
前回に引き続き、カフェ経営を目指す人がやらなかったら絶対に失敗するであろう「コンセプト」について今回はさらに掘り下げていきます。
「コンセプトが出来るまでは店を出すな」というのが私の持論です。
それではそのコンセプトをどのようにして生み出すのか?
実はこれ、立ち上げの時にやっていない人が多いことでもあります。
それは、「飲食店にとって緊急でも重要でも必須条件でも【ない】もの」を考えることです。
前回もお伝えしたように、私のお店、珈琲文明には三つの柱があります。
柱1 スペシャルティコーヒーをサイフォンで淹れ、サイフォン(フラスコ)のまま提供する
柱2 天井の空の色が時間で変わる(天井劇場)で唯一無二のカフェになる
柱3 坪型の器がパンになって中にアツアツトロトロのカレーを詰めたカレーパンを提供する
以上の3つです。
この珈琲文明の三大コンセプト「天井劇場、サイフォン、カレーパン」いずれもカフェの「必須条件ではない」ということがわかるでしょうか。
しかしながら、この必須ではないものが3つ揃っていることが、カフェ経営には非常に重要だと私は考えています。
なぜか。他と比べようがないくらいに唯一無二の存在になれるからです。
そうするとどうなるか。
メディアや雑誌なども、「もうそこに取材に行くしかない」ということになるのです。
3つを掛け合わせることで真似できないカフェ・喫茶店になれる
ただ1つだけのコンセプトで勝負するよりも、3つ掛け合わせると、とそれだけ波及効果が3倍いやそれ以上のものになります。
拙著『人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えを見つけた(祥伝社)』の中で「人生で1万時間を費やした経験、学びが3つあれば百万人に1人の逸材になる」ということをお伝えしたのですが、これはコンセプトにも当てはまります。
1つの特徴だけなら、他にもあるのです。
でも、3つ掛け合わせるからこそ、誰にも真似できない存在になれます。
「天井劇場」だけならラーメン博物館やラスベガスにもあるし、サイフォンのまま提供するお店も最近結構増えてきてますし、つぼ型のカレーパンについては(私の知る限りまだ見たことはありませんが)既に他でも存在するかもしれません。
ですが、三要素全てを満たす喫茶店は百万店に1つどころかたぶん珈琲文明が世界でただ1つだと思います。
「コンセプトづくり」の基本は、自分の経験やアイディアの中から3つを絞り出すこと
小さなカフェの開業を目指す皆さん、皆さんもぜひ、1つのコンセプトで終結させずに3つほど考えてみてください。
そして、重要だから何度でも言います。
考える時のポイントは「飲食店やカフェにとって緊急でも重要でも必須条件でも【ない】もの」ですからね!
ということはつまり「飲食店やカフェ」といった概念からは、いったん離れて考えてみたほうが良い気がします。逆に言えば「飲食店以外の全て」(笑)です。
自分の中にある「これがいいカフェ」「喫茶店とはこういうもの」という概念から離れたところに面白いヒントはあります。
図書館、水族館、植物園、アパレルショップ、雑貨アクセサリー店、宇宙基地……スケールがいくら大きくなってもいいのです。
そして最初から予算のことを考えないことです。
例えば一階地上店ではなく地下物件ではあるけど非常に良い物件があるのであれば、「これ、エントランスを潜水艦の形にして、降りる階段も敢えて少し薄暗くし、店内の窓からは水中にいるような本物の水槽を設置したら面白くない? なんなら回遊魚なんかいたらめちゃくちゃすごくない?」……といったことを考えてみるのです。
「きっと皆が諦めるだろう」ということこそが、カフェ立ち上げには必要
考えた時点で「いやいや回遊魚なんか飼えない、それ以前に水槽どうするよ」……と自分でツッコミたくなりますよね。そして、その考えは諦めますよね。
そこ!そこなんです。
「きっと皆、諦めるだろう」と思うアイディアこそ、圧倒的なオリジナリティを生み出します。
「え、でも、できませんし」と言うのは簡単。
予算的にも物理的にもどうにもならなそうなものを「どうにかする」のです。
「大きな水槽を入れたい」というアイディアが湧いてきたとしたら、大きな水槽があるレストランやバーを見に行ってみること。そして、店主に「これ、どうやって作ったんですか?」「魚はどうやって管理していますか?」と、話を聞かせてもらうのです。
そして、「予算がないから無理」を脇に置いて「どうやったら予算内に抑えられるだろう」と柔軟に考えて、知人友人に相談してとにかく考えてみること。
何も、潜水艦の喫茶店「サブマリンカフェ」を目指そうということじゃないですからね(笑)。
得意分野やスキル、マニアックな趣味を「唯一無二の武器」に変えられたカフェは成功する
「コンセプトを3つ生み出す」
その取っ掛かりとしてはやはり皆さん自身それぞれの得意分野、マニアックな趣味などをまずは出発点にすると良いと思います。
拙著『人生に行き詰まった僕は、喫茶店で答えを見つけた(祥伝社)』にも登場する阿佐ヶ谷のペンギンカフェオーナーの二羽さんは自身のアイボ「サイモン」を溺愛しています。
そして、「毎週日曜の営業前にアイボの飼い主を集めて営業する」というイベントを開催していてファンが集まるカフェになっています。
これは、本当に趣味が高じてイベントになっていて、店の特徴にもなっています。
私が経営する珈琲文明はというと、これは、3つの柱以外の要素ではありますが、私は現役ミュージシャンでもあるので、第四金曜日には店で弾き語りをやっています。
このように、楽しく前向きにやれることが、そのままお店の特徴になると強いですね。
そんなわけで、今回お伝えしたかったのは、「飲食店・カフェ以外の世界」を参考にしつつ、コンセプトを3つ以上考案し、それへの実現に向けては頭を柔らかくして「出来るかもしれない、いやどうにかしてみせる!」という気概が大事ということです。
その結果として皆さんの中で無事3つくらいのコンセプトが出来たとしましょう。
実は、ここで終わりではありません。
もちろん、コンセプトに相応しい内装工事やメニューや備品調達という現実的な作業が必要になってくるのですが、さらにもう1つ重要なことがあります。
「そういったお店のコンセプトをどうやって他人に知らしめるのか」ということです。
「さあ、多大なる宣伝広告費をかけて広めましょう」といった浅はかなことをお伝えするつもりは毛頭ありません。
お金をかけずに自身のお店を広く知らしめる方法なんてあるなら知りたいという方、これもちゃんと存在しますのでその話を次回はしますね。
珈琲文明の店主赤澤智でした。
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この記事を書いた人
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脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」