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高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデル事業計画の立て方(その2)ビジネスプラン【事業計画はストーリーが大切!】

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「事業計画の立て方」について、前回と今回の2回で解説していきます。今回は(その2)実行計画、数値計画について扱います。

プロフィール

プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎

東京大学法学部卒業。デジタルハリウッド大学院客員教授。プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。

自分とスタッフのための実行計画部分
資金提供者のための数値計画部分

実行計画部分も数値計画部分も、定量的な情報が多いという共通点がありますが、「誰にとって特に重要か」という点で違いがあります。

「実行計画部分」は、「具体的にどう進めるか」という事業(ビジネス)そのものに関する情報で構成されているのが特徴で、事業を創める本人と、一緒に働くスタッフにとって特に重要なものと言えます。

一方「数値計画部分」は「いくら儲かるか」「いくら必要か」という事業(ビジネス)に必要不可欠なお金に関する情報で構成されており、事業を創める本人を含めた資金提供者(身内、金融機関など)にとって特に重要性の高い情報です。

(参考)「事業計画書」の構成要素(筆者作)

実行計画部分」と「数値計画部分」はいずれも定量的な情報が多く含まれます。シミュレーション(*1)をくりかえして精度を高めることと、特に金額については単位や桁数にも注意して作成しましょう。

*1. シュミレーションでは、Excelで収支計算をして、数値や数式を変えながら、妥当な収支を組み立てるなどのことをする。

「実行計画部分」の具体的な書き方

11. 全体スケジュール

実際に事業として取り組む内容と、実行する時期を記載していきます。(参考)のように線表形式にすると、一覧性を持たせることができます。

全体スケジュールとしては、1か月単位を使用する場合がほとんどです。

(参考)「知育玩具の企画」の例

このほか、年単位でマイルストーン(*2)を示す形式を入れる場合もあります。

(*2)マイルストーン:ここでは事業を進めていく上での重要な中間目標のことを指します。
(例)試作品の作成、HPのワイヤーフレーム設計、HPデザイン作成、パッケージデザインなど

12. 組織体制

事業を実行していく組織体制を図で示します。

「半径5メートルのビジネス」として立ち上げ始める時は、関係者が少ないかもしれません。

そのような場合でも、資料を作成することで自分と外注先や、委託先などのメンバーとの役割分担を整理するいい機会になります。

(参考)「知育玩具の企画」の例

13. マーケティング計画

マーケティング計画では、商品やサービスを提供するための具体的な方法と、使用するツールの一覧を作成します。

フローチャートは、顧客の導線を表すもので、例えば「ブログ→ECサイト」「子育て情報サイト→SNS→ECサイト」というルートを図で表したものです。

その他の区分についても、「誰に」「何を」「どのように(伝達ルートや伝え方)」を意識して、端的に記載していきます。

(参考)「知育玩具の企画」の例

「数値計画部分」の具体的な書き方

14. 数値計画

まずは「販売計画」「仕入・経費計画」などを作成し、それを踏まえて「損益計算書」を作成していきます。

販売計画

「販売計画」は、販売先毎の販売単価、販売数量、販売高、原価、粗利(売上高-原価)を一覧にしたものです。

仕入・経費計画

「仕入・経費計画」は、商品・サービスを提供するのに必要な経費について、「仕入先、支払い条件、支払金額」等を一覧にしたものです。

(サンプル)

損益計算書

「損益計算書」は、収入となる「売上高」の他、支出として商品・サービスの「原価」、人件費や外注費、水道光熱費などの「一般管理費」、そして銀行返済に伴う利息の支払い等、事業以外で発生する「営業外収益・費用」の項目があります。

これらの差異で、事業のみの収支である「営業利益」や、管理に係る費用も含めての収支である「経常利益」が分かります。

(サンプル)3~5年分作る

15. 事業リスクの整理と対応

事業に伴い、起こりうるリスクについて、その内容と対応策を記載します。

特に初めてビジネスをする場合には、自分の知識や経験だけで考えるとヌケモレが発生する可能性があります。

特に許認可や知財の保護等に関しては専門家に相談するのが一番の近道です。第23回のコラムで紹介した、自治体や公的機関の創業相談窓口を積極的に活用しましょう。

考えられる事業リスク対応策
ブランド名、商品名、デザインの模倣商標登録や意匠登録をする
顧客の送付先の誤り発送先は販売システム上のデータを使い、手打ちしない
ダブルチェックをする
(参考)「知育玩具の企画」の例

16. 事業ビジョン、達成のステップ

事業計画書の最後は、中長期的な事業の展開ビジョンや達成のステップで締めると良いでしょう。

(参考)「知育玩具の企画」の例

<プラスα>資金繰り表

資金繰り表とは、各種費用(材料費、包装資材費、外注費など)や(スタッフの)給与などの支払い、銀行返済、売上の入金などを一つの表にまとめたものです。月次又は週次で作成されます。

事業計画に含めるかどうかに関わらず、「資金繰り表」を作成しておくことはおすすめです。

特に仕入で資金が先に出ていく場合や、加工に時間がかかり売上になるまで時間がかかる場合、掛け払いなどにより実際に入金されるまでに時間がかかる場合には注意が必要です。

資金の収入と支出の間隔があいてしまうと、資金が足りない状態(資金ショート、と呼ばれる)になりかねません。

資金ショートは実際に会社経営でも起こりうる問題で「黒字倒産」のように、帳簿上は利益が出ていても資金繰りがうまくいかずにおこるものです。

そうした事態にならない為にも、資金繰りを意識して事業を展開していきましょう。

事業計画ができたら、いよいよ事業(ビジネス)を動かしていこう

あなたが考えてきたビジネスモデルを「定性」「定量」の両面から事業計画に落とし込むことで、あなたが考えてきた「半径5メートルのビジネス」はさらに具体的になってきました。

次はいよいよ、事業計画を使って、自分と周りを動かす、ステップに進みます。

ぜひ、第25回、第26回(今回)で紹介した内容も参考にしながら、自分なりの事業計画を作成してみてください。

この記事を書いた人

高森厚太郎
高森厚太郎プレセアコンサルティング株式会社 代表取締役パートナーCFO
プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。

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