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高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデル「顧客が本当に必要なもの」をフレームワークで考える

「顧客のニーズ」を見定めて、自分が考えた商品やサービスが顧客のニーズと合っているのかどうか、どうしたらわかるのでしょうか。
そんな時に役立つフレームワークが「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」です。
前回の連載で紹介した通り、ビジネスモデル検討で「特に顧客に着目して考えるためのツール」です。

プロフィール

プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎

プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。

顧客ニーズを引き出すフレームワーク「VPC」とは

「バリュープロポジションキャンバス(Value Proposition Canvas略して「VPC」)」とは、顧客にとっての重要な価値(バリュー)提案(プロポジション)を考えるためのフレームワークです。

徹底して顧客の立場で考えてみることで、顧客にとっての価値が何なのか、が明らかになります。そして、その「顧客にとっての価値」をあなたの商品・サービスが満たせていれば、それは「あなたの商品・サービスが選ばれる理由」の源泉となりうるものです。

「顧客ファースト」が潜在的なニーズを掘り起こす

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商品・サービスを考える際に押さえておきたいのは「顧客ファースト」ということです。

これまで紹介してきたフレームワーク同様に、「VPC」においても「考える順番」が重要です。

すでに競合となる商品・サービスのリサーチをしてきた方もいることでしょう。確かに、すでに顧客のニーズを満たしている商品やサービスをヒントにすれば、顧客のニーズから大きく外すことはないでしょう。

しかし、今ある商品やサービスが、必ずしもあなたの顧客のニーズのすべてを満たしているとは限りません。

なぜなら、顧客は「いまここにない」商品やサービスについて考えることはできないからです。古くはウォークマン、最近だとスマートフォン。歩きながら音楽を聴く、手のひらでインターネットにアクセスする。まだ体験したことない世界を実現してくれる商品・サービスについて顧客は考えることはできないのです。

既存の商品・サービスを起点に考えるのではなく、一度顧客の目線になり切って「顧客のしたいこと」「顧客の嬉しいこと」「顧客の嫌なこと」を考えてみることが有効です。

顧客目線で顧客が求めるものを考える

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フレームワーク「VPC」の右側、顧客セグメントのパートからまず考えます。

顧客のニーズを考える際、「顧客のしたいこと」はすでに言語化出来ているかもしれません。ここでは「顧客の嬉しいこと」「顧客の嫌なこと」という視点でも考えていきます。

「顧客のしたいこと」

“顧客が生活や仕事において解決したいタスクや課題”、“満たそうとしているニーズ”のこと。機能的、社会的、感情的な側面から考えられます。重要なものもあれば、些細なものもあります。

「顧客の嬉しいこと」

「顧客のしたいこと」に取り組むことで、顧客が必要とし、期待し、欲する、驚くような成果やメリットのこと。機能的な実用性、社会的利益、ポジティブな感情や費用節約などが該当します。

「顧客の嫌なこと」

「顧客のしたいこと」に取り組む前、取り組んでいる時、取り組んだ後に、顧客を困らせるリスクや障害となっていること。望ましくない出費や状況、ネガティブな感情やリスクなどが挙げられます。これも、重大なものから、軽いものまであります。

以上、3つの視点のうち、「嬉しいこと」は出来るだけ増やしたい/大きくしたい効果、「嫌なこと」は出来るだけ減らしたいこと/小さくしたいこと、になります。

あなた自身(または過去の自分)が顧客であれば、自分で考えて書く、あるいは自分とは異なる顧客層の場合でも観察して仮説を立てることは出来るでしょう。

可能な限り顧客層にインタビューやアンケートなどで直接聞いて考えていくと、よりリアルで現実に即したものになり、おすすめです。

提供する商品・サービスの特徴や機能を書き出す

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右側の「顧客」パートが埋まったら、次は左側の「商品・サービス」パートに移ります。

商品・サービスについても、顧客のパートと対応する形で、3つの切り口で書いていきます。

「提供する商品・サービス」

「顧客のしたいこと」をして、「嬉しいこと」や「嫌なこと」にアプローチするために、あなたが提供する商品・サービスのこと。ここでは商品・サービスの特徴や基本的な機能を書き出します。

「顧客が嬉しさを増すこと」

「顧客の嬉しいこと」を明確に増大させるような成果やメリット顧客のメリットにつながるあなたの商品・サービスの特徴のことです。

「顧客の嫌なことを減らすこと」

「顧客がしたいこと」に取り組む前、最中、取り組んだ後の「嫌なこと」を取り除いたり、軽減させたりして、やわらげるものです。

実例でみるバリュープロポジションキャンバス

前回の【第17回】の事例で取り上げた中堅学習塾チェーンの人事をしているゆみさん。

副業として知育玩具の製造販売をスタートしたいと思っています。ゆみさんが考えている「知育玩具」を例に「VPC」を考えてみましょう。
ゆみさんの場合、顧客は「教育への関心が高い乳幼児の親」。彼らの立場で、3つの切り口で書き出します。

顧客のしたいこと・子どもの知性や身体機能の発育を出来るだけサポートしたい
顧客の嬉しいこと
(メリット・恩恵)
・安心安全な日本製のモノを使いたい
顧客の嫌なこと
(リスク・障害)
・発育を助けるのに適切なツール(知育玩具)を選ぶのは難しい
・知育玩具はどこで買えるのかわからない、高価なイメージがある

続いて、商品・サービスについて、ゆみさんが提供しようと考えている「ステージに応じた知育玩具サービス」について書いていきます。

考えていたことは「知育玩具の企画開発」だけであったとしても、先に顧客のニーズを明らかにすることで、商品・サービスとしてカバーすべき事柄が明らかになり、どのような工夫が出来るかを考える軸にもなります。

提供する商品・サービス・年齢や発達、趣向に応じた知育玩具の企画開発
・知育玩具の提案サービス(含む使い方)
・D2Cモデルで価格を抑え、all ECで全国で購入可能
・日本製の知育玩具
顧客の嬉しさを増すこと・日本製の知育玩具なので安心安全
顧客の嫌なことを減らすこと・年齢や発達、趣向に応じて提案されるので知育玩具を選ぶ時間がかからない
・リーズナブル
・オンラインショップで、いつでもどこでも購入できる
・全国に配送可能

このようなステップで考えることで、「顧客がしたいこと」とマッチする「商品・サービス」を考えていくことができます。

ここで考えた「バリュープロポジションキャンバス」は、ビジネスモデルの中の2つの要素、顧客、価値提案に特化して考えるフレームワークです。ビジネスモデルは、この「バリュープロポジションキャンバス」を実現するための仕組み、全体像ということもできます。

「VPC」は今後の課題も浮き彫りにする

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実際に自分が考えた消費やサービスについて「バリュープロポジションキャンバス」を書いてみると、ビジネスをスタートずる時点で全て埋まらない場合もあるでしょう。

このフレームワークは、あくまでも自分の商品・サービスと顧客のニーズのズレがないかを見るためのもの。特に「半径5メートルのビジネス」においては、いずれかの枠を満たしていれば十分です。

VPCを使って明らかにした「顧客のニーズ」で満たせていないものは、実際に顧客への価値提供を続けていく中で、商品・サービスを改良していく際に非常に有効な指針となるでしょう。

この記事を書いた人

高森厚太郎
高森厚太郎プレセアコンサルティング株式会社 代表取締役パートナーCFO
プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。
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