Interview
インタビュー

人見知りでも、自分のお店は経営できるの? ミニコミ専門店シカク店主・たけしげみゆきインタビュー第2話

ミニコミ専門店「シカク」店主・たけしげみゆきさん。軌道に乗ろうかという矢先、人生最大のどん底に……。不屈の精神で這い上がり一念発起! ピンチを乗り越えた秘密とは!?

たけしげみゆき

プロフィール

「シカク」店主たけしげみゆき

大阪府此花区にあるインディーズ出版、ギャラリー「シカク」の店主。ミニコミ、リトルプレス、CD、雑貨、衣類、その他もろもろ普通のお店には置いていないもの、普通のお店に置いているけど普通の人は買わないようなニッチなもののセレクトショップを運営。社会経験、貯金、人脈、計画性、知識……あらゆるものがない状態で無謀にも店を始めてしまった強者。

ミニコミ専門店「シカク」店主・たけしげみゆきさん。金なし、コネなし、社会性なし、さらに人見知りといった状況で、自身のお店をオープンしました。
紆余曲折ありながらも本格的なお店としてのシカクが軌道に乗ろうかという矢先、彼女は人生最大のどん底に陥ってしまいます……。そこから不屈の精神で這い上がり、お客さんや作家さんたちに救われ一念発起!
2021年に10周年を迎え、ピンチを乗り越えたエピソードなどを語ってもらいました。
全2話、前編はこちらからどうぞ。

閉店の危機! 共同創業者との離婚、スタッフとの不和で精神が崩壊

たけしげみゆき

お店辞めようかな……と、本気で思ったことは2回あります。

1回目はのちに結婚した共同創業者で元店長のBさんとの離婚。

2回目は離婚後に自分が店主となり、仕事仲間と連携して仕事をすることが苦手で、失敗や迷惑をかけて関係が悪くなってしまった時です。

離婚に関しては相手に原因があったのですが、仕事仲間とのことは自分の力が至らない部分だったので、精神的にまいりました。

当初は全く仕事をしない元店長のBさんと私の二人だけだったので、基本私が仕事を全部やり、できない一部を人に頼んでやってもらいました。

そこからスタッフが増えて、それぞれの得意分野に集中して分業という形に変わりました。

しかし離婚して私が店主となり上の立場になった時、人に仕事を振らなければお店を回していけなくなりました。

今まで自分でやっていた仕事を人に振ることが苦手だということに自分でも気づいてなくて、後でスタッフにすごく怒られたり、「(そのやり方では)わけがわからない」と言われて困惑したりしました。

自分じゃない人にお店を任せた方がいいと考えて、自分1人でできる小さいお店に戻った方がいいのかなとも思いました。シカクの一部の商品だけ持って、知り合いのいないところで お店やろうかなとか。自分に自信をなくして、人と関わるのが怖くなっていました 。

それでも辞めなかったのは、シカクを応援してくれている作家さんやお客さん、励ましたり鼓舞してくれたりするスタッフもいて、「もう、私ひとりのお店じゃない」と思ったからです。それが原動力になっていると思います。

お客さんが求めるもの。冒険しないと売上が下がる!?

私は行動力があるというよりは、飽き性で。

同じことをずっとやっているのは停滞であるというプレッシャーがあります。だからいつも冒険していたいんです。

不思議と新しい冒険をしないと、店の売上も下がってくるんです。

例えば体調が良くなかったり、プライベートでバタバタしちゃったりして、あんまり面白いこと出来なかったなっていう状況になると、比例して売上が落ちているんですよね。

大抵の人は毎日仕事をして、ある程度決まったお給料をもらって、いわば『安定した生活』を送っていると思います。

だからそういう人がシカクに来ると、見たこともない本があったり、ちょっと変わった展示をしていたり、 自分に計り知れないことや意味不明なことが起きていることを面白がれて、応援してくれる人が多いのかなって気がするんです。

私も飽きちゃうし、お客さんも非日常をシカクに求めているから、そこがマッチすると売上にもきちんと跳ね返ってきますね。

シカクに来てくださるお客さんも、展示してくださる作家さんも、みんなちょっと変わり者です。例えば学校の教室の隅にいたような生徒のような。メインストリームからちょっと外れた少数派の人たちなんだと思うんです。

私自身もそうなので、気が合うし、なんかこの人好きだなって思える人が自然と集まってくる。そういう人に会いたくてやっているんだなって思います。

競合に負けない! お店の鮮度を保つための計画

「ミニコミをもっとみんなに知って欲しい」という想いをもってシカクをオープンさせた当初よりも、ZINEブームもあって、わりと認知されてきたと思います。

独立系の書店も増えて、ミニコミを扱う店が特段珍しくなくなってきました。

このまま日本だけでは需要が縮小するかもしれないという懸念と、私自身の冒険心もあり、今後海外進出したいなって思っています。

海外のミニコミを仕入れたりとか、日本のミニコミやシカクの本を海外に持って行ったりだとか、海外のアートブックフェアとかに出店したりとかしてみたいです。

今海外でもミニコミのお店って増えているらしくて、そういうところと仲良くなって、お店の一か所にシカクのコーナーとか作ってもらえたらいいなと。

海外のミニコミを仕入れているお店はいくつかありますが、私の知る限りではアートやイラストのジャンルが中心のお店が多いので、シカクはニッチなジャンルで少し一般的とは言いがたい趣味のミニコミとか探してみたいです。

人見知りこそ、お店をやってみて欲しい!

たけしげみゆき

私、すごく人見知りなんですけど、シカクの中では人見知りをしないんです。

お店に来てくれたお客さん、イベント、YouTubeなど、シカクの枠の中なら全然大丈夫なんですよ。そもそもお客さんは意志を持ってシカクに来てくれているわけなので、なんだか安心して話せます。

逆にシカクの外に出ちゃうと、全然喋れなくて、身構えちゃったり、逆に気を使って後ですごく疲れちゃうんです。

だから人見知りの人こそお店をやったらいいんじゃないかと思います。

お店って自分の世界観で作るお家みたいなものだと思うので、自分の好きなもので固めて、インテリアとか外観とかをSNSで発信したら、やっぱり自分の興味と近い人が自然とお客さんになると思うんです。

そういうお客さんなら安心して話しやすいし、話す内容もだいたい決まってくるので、会話の糸口を探さなくて済みます。

趣味が合えば、それが次の仕事に繋がったりすることもあると思うんです。

シカクのラインナップがちょっと特殊な本ばっかりだから、本好きの中でもさらに狭き門をくぐって来てくれた人たちなので自然と会話できちゃいます。

自分の好きな事、得意ジャンルに特化してお店の門を自分で狭くしちゃえばいいわけで、人見知りでも全然問題ないと思います。

読者に向けて

「何かを始めたいけど、すぐに動けない」という方は多いと思います。でもやっぱり「後先考えない」っていうのは必要な気がします。

好きなことがあってもなくてもそれは必要。

やっぱりどこかのタイミングで、生きるか死ぬかわからないけど崖から飛び降りる覚悟はしなきゃいけない時期があると思います。「とりあえずやっちゃえ!」みたいな。

もちろん体調が悪いときとか、正直しんどい時もありますけど、落ち込みよりもワクワクが上回ることを、頑張って考えて実行していく感じです。

イメージでいうと、とりあえず行ったことない国の飛行機のチケットとっちゃうみたいな感じ。もしワクワクが足りないなと思うなら、そういう突然思い立ったことをやってみるだけでも日常は少し変わるのかも。

ただ大博打は打たないようにしようと思っていて、自分でリカバリーできる、現実的なラインで冒険しています。

例えば、お金がここまで減ったらやめるっていうラインを最初に決めといたらいいのかもしれない。例えば貯金500万円だったら、50万円まで減ったら諦めるとか、一旦就職やバイトを挟むとか 。

ボーダーラインを決めて、それまでは我武者羅にやってみたらいいんじゃないかな。

色々考えてもいいと思うんですけど、最後はやっぱり気合と覚悟ですね。

正直そんなに最悪なことってあんまり起きないと思うんです。

もし失敗しても別に貯金ゼロになるだけだし、命さえあれば再就職先を探したりして、なんとかなると思います。

私が今シカクでやっている、ミニコミを売ったり、本を出版したりすることは、それ自体は先駆者がいるので特別珍しいことではありません。ただそれを自分がやって成功するかはわからないので、自分にとってはどれもかなりの冒険でした。でも結果的に全国にシカクの本が流通されて、お店の知名度が上がったので、冒険が次に繋がって10年やってこられたのだと思います。

不安になることや自分の不甲斐なさに打ちひしがれるときも未だにありますが 、それ以上に得るものが大きかった10年でした。

詳細なストーリーはシカクのnoteにも書いています!

全2話、前編はこちらからどうぞ。

取材・文/I am 編集部
写真/本人提供

この記事を書いた人

井坂 優子
井坂 優子副編集長
仕事、家事・育児に追われ、自分のことを後回しにした30代。40代に突入し、これからの働き方を模索中。強み:やると決めたらすぐ動く。営業一筋で培った断られても大丈夫なマインド。弱み:無趣味。営業マンだったのに口ベタ。
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