Interview
インタビュー

“いつか”のためにコツコツ貯めたお金が、やりたいことをやるための資金に/正伯和美さんインタビュー最終話

主婦歴30年。人生に遅すぎることはない。やりたいことができたら、たった一度の人生だからこそ挑戦すべき。貯金は「その日」のためのもの。

プロフィール

「季節のお菓子 Miel」店主正伯和美

1965年福岡県生まれ。千葉・流山の「季節のお菓子 Miel」店主。新鮮な食材と季節の果物を使ったケーキ、焼き菓子などが並ぶ。販売されるお菓子は当日のInstagramにアップされる。

開店前からお客さんが並びはじめる利根運河沿いにたたずむ「季節のお菓子 Miel」。

店主の正伯和美さん。体力と時間との闘いを工夫とコンセプトで乗り切る。

なぜ苦労してオープンしたお店にもかかわらず、

たった週2日しかオープンしないのか?

 

*全4話、第1話はこちらからどうぞ

夫のほうが「もっとやったら?」

そして、オープン初日から、宣伝もしていないのにお客さまが並んでくれて、大家さん同様、夫もびっくりしていました(笑)。「こんなに来てくれるんだ」って。

先日はここを事務所にしていた不動産屋さんもお店に来てくださって、「気になってたんですけど、ようやく来ました」って。気にかけていただいていたとうれしくなりました。

実は夫婦の関係も、お店を出す前と今ではだいぶ変わってきたように思います。子育て中は、夫は私が外で働くより、家のほうに専念してほしいという人だったんです。

でも、コロナ禍になり夫のリモート勤務が増えたり、さらにお店のことでいろいろと細かく話をしなければならず、会話がすごく増えました。それで、本当に開業してしまったものだから、「本気だったんだな」という感じで。少しは私がやってきたことを認めてくれたのかなって。

そんな夫にも、「もっと作ればいいんじゃない?」「イートインで食べてもらえば?」と発破をかけられるんですが、確かにお店の経営を考えたら、もっとお店を開けて、イートインとかもやってと思いますよね。

お皿に並べて陳列するのがMiel流。その日の焼き菓子が並ぶ

やりたいことがあるなら、やったほうがいい

自分がやりたいことを人生の中でできるタイミングって、そんなにないかなって思いますね。やりたいことがあって、もしかしたらやれるかもしれないと思ったら、やっぱりやったほうがいんじゃないかと。

自分で何とかしたお金で、自分の好きなようにやって、人に迷惑かけることになるならやめるっていうふうに思っています。だから、もし何かをはじめたいのであれば、自分が使えるお金をまず用意して、それで好きなように使えばいいかなと。自分の責任の範囲でやりたいと思っていました。

もちろん、主人が働いていますのでとても恵まれた環境だということはわかっているのですが、10年も頑張らなくても、5年頑張ればある程度まとまったお金を貯めることができました。

50歳になっても、60歳になっても可能性はまだ全然ありますよね。

自分のスタイル、ペースに合わせてやっていい!

フランスのアンティークのワッフルメーカーも

なんとか開業しましたが、小さい店ですから、私がやってることは洋菓子店なんて言えるのかなって思っています。資金を何千万円もかけて開業する世界ですから。でも、1人ででもやっていいんだって思ったのは、専門誌の情報のおかげです。

カフェの専門誌などで、教室で教えている方がお店を出していたり、毎日営業せずに週何日か開店している方など、いろんなスタイルの人が紹介されていて。「自分のスタイル、ペースに合わせてやっていいんだ!」と思いました。私1人でやることになるので、週2~3日くらいなら私でもできるかなって。

それに、製造・販売と教室、この比重を製造・販売に置いていかないといけないなと思ったんです。これからも続けていくなら、私はたぶんお菓子を作って売るということをしたいんだと。

自分の特性を見極める

有名な教室の先生方に習いに行きましたが、やはり、生徒さんというのはその先生につくんですよね。その先生の人となり、先生が作るお菓子、パンや料理が好きなのはもちろん、先生が作り出す雰囲気、世界観が好きで通って来られるんです。

私は強烈な個性を持っているわけではないし、どちらかというと“職人”。自分がおいしいと思うものをただ作っていきたい。自分の中で完結するようなことなんですが、自分がいいと思って作ったものを、ただ食べてもらいたいという気持ちのほうが強いみたいなんです。

まだ教室も続けていますが、教室に来てくださる生徒さんも、じっくりと作ることに向き合いたいという方が多いです。新しいレシピをどんどん作っていくというよりは、自分の作るものを極めていきたい、そんな思いですね。

人気の生ケーキは4~5種類。早い時間に行くのがおすすめ

教室では、生徒さんの反応がダイレクトに感じられたり、教えることで発見や気づきもあり、また違う喜びがあります。加えて経営面でもプラスになっています。でも、今は目の前のことに追われて、なかなか回数が開けないのが実情です。ただ、お店に教室ができるスペースがあるので、自宅でやっている時よりも生徒さんに来ていただきやすくなったのはよかったことですね。

コツコツ貯めたお金が、夢の資金になった

ビスキュイドサヴォワを作る アンティークのお菓子型を店内に飾って

お店を出すことは周りの人にはギリギリまで言えなかったです。本当にできるかどうかわかりませんでしたから(苦笑)。

資金はいい車が1台買えるくらいでしょうか。私にとっては本当に大金です。改装費や厨房機器などがほとんどで、ここまで通うために軽自動車も買いましたし。思っていた以上にかかりました。

でも、「キッチンのリフォームのために使いたい」「家族で海外旅行に行きたい」……と、“いつかの何かのために”貯めていたお金は、「自分がおいしいと思うお菓子を作って、それをお客さまに食べていただきたい」という夢の実現に使うことができました。私の“いつか何かのため”はこういうことだったということですね。

一般的に飲食店の場合、賃料の10倍の売り上げがないといけないそうです。洋菓子店で業態は違うのですが、まだまだです。でも、お菓子を作ることができて、それを買いに来てくださるお客さまがいて、「おいしかったよ!」「また来るね!」と声をかけてもらうと、また頑張って作ろうと思います。

私がずっとやりたかったこと、お菓子作りを探求し、自分がおいしいと思うものを作り、それを多くの方に食べていただく。その先に「お店を出す」ということがあったのだなと。

ある方に言われたんです。「主婦業の合間とはいえ、お菓子の研究に熱心で、早くからブログなどで情報発信して、自分のお菓子の存在を知ってもらっていたからこそ、宣伝なしでいきなりお店を開店してもすぐに人気店になれたんじゃないですか」って。

「正伯さんの作るお菓子が食べたいとお客さんがここまで来るのは、正伯さんの機が熟して、お店を出す素地が時間をかけて作られていたからなんだと思いますよ」って。まだまだ勉強中の身ですが、うれしい言葉でした。

この30年、まわり道をしながらも、“好き”をもとめてゆっくり歩いてきたことが私のペースだったんだなと今は思います。

取材・文/時政美由紀

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この記事を書いた人

I am 編集部
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「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。
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