Interview
インタビュー

ワンオペ運営。継続のために編み出した、自分らしいスタイルは週2日営業/正伯和美さんインタビュー第3話

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ベテラン主婦。55歳でいきなり洋菓子店開業。週に2日だけの営業のワケは? オープンしてから気づいた売り上げサイクルと体力との折り合い。

プロフィール

「季節のお菓子 Miel」店主正伯和美

1965年福岡県生まれ。千葉・流山の「季節のお菓子 Miel」店主。新鮮な食材と季節の果物を使ったケーキ、焼き菓子などが並ぶ。販売されるお菓子は当日のInstagramにアップされる。

未経験から55歳でケーキの実店舗をオープン。

週2日間だけ営業する千葉・流山の「季節のお菓子 Miel」店主の正伯和美さん。

開業を決意したら矢継ぎ早に押し寄せる店舗探し、

大家さんとの交渉、内装工事……。

甘くておいしいケーキとは裏腹に、

リアルで厳しいお金の話を伺いました。

 

*全3話、第1話はこちらからどうぞ

週2日の営業でも意外と忙しい!

ここを出すことができたので、製造・販売はもちろん、教室もここで行っています。お店のほうが忙しくて、教室は月に3、4回程度しかできないのですが、駅からも近いので来ていただきやすくなったことがすごくうれしいです。

「週に2日の営業だけでそんなに忙しい?」って思われると思いますが、木、金で土曜日の分を作って、日、月で火曜日の分を作っています。なので、水曜日を教室にあてています。意外と休めないんですよ(笑)。

オープンしたら大変、というのは聞いていたんですが、これほど大変とは(笑)。自分史上、いちばん働いているかもしれません。1日の製造量を今の半分くらいで考えていたんですが、ありがたいことにお客さんが来てくださるので、できるだけ作らせていただいています。

最初は木曜日も空けて、週3日のつもりでオープンしたんですが、それだと製造が到底間に合わないと、早々に週2日にしました(苦笑)。

娘のツイートがバズってうれしい悲鳴

焼き菓子は1日に5~6種類、生ケーキは4~5種類くらい出しています。今なら葡萄や栗が旬なので、「葡萄のロールケーキ」、「和栗のモンブラン」などです(※取材日は10月)。栗は茨城県の笠間市に行って仕入れてきました。気に入った食材があると買い付けに行くこともあります。

タルト、フィナンシェ、クッキーが並ぶ。閉店前に売り切れてしまうことも

冬場はショートケーキが人気で、いちごの時期を過ぎると、夏前までシュークリームを作ります。シュークリームは火の前の仕事が多いので、夏場はだんだんつらくなってきて、そうしているとそろそろ桃が出てくるので、桃やあんずを使ったケーキを作ります。

娘が「母が洋菓子店をオープンします!」とツイッターでつぶやいてくれて、娘が言うにはバズったらしいんです(笑)。バズるとか私はよくわからなかったんですけど、リツイートがすごくあって、2000リツイートくらいいったそうなんです。

私のお菓子の写真をアップしたそうで、何でバズったかはわからないんですが、「ツイッターを見て来ました!」というお客さんが結構いらして、本当にびっくりしました。そんなことあるんですね。

私は私で、SNSに「今やらないと後悔すると思うから決心しました」みたいなことを書いて。それを読んでくださって、応援したいと買いに来ていただいたり。ブログやインスタを続けていてよかったと思いました。

できないことは「できない」と言う覚悟

最近は少し落ち着きましたが、最初の頃は30人ぐらい並んでくださって、お菓子が途中でなくなってしまうこともあって。本当に申し訳ないこともありました。買えなかった方が、「今日はお母さんの誕生日なんで絶対買うつもりで来ました!」と1番に並んで買ってくださったり。

「火曜日と土曜日しか営業しないのは戦略ですか?」と聞かれたこともあります。それはまったくなくて、物理的にそれでしかできなくて。「予約できませんか?」と聞かれることもあります。でも、作業中に予約を受けると手を止めなければならず、今は受けていません。

なんだかわがままな感じですよね。夫でさえ、「もっと作ればいいじゃない」って言うくらいですから(苦笑)。でも、自分のキャパシティーを超えてしまうと、楽しんでできないし、お菓子作りがつらいものになってしまいます。それに、家のこととかもまったくできなくなってしまいます。

接客、製造をワンオペで乗り切るサイクルとは

仕入れ、仕込み、製造、陳列、販売と、 すべて1人でこなす

夫のすすめもあり、イートインの許可も取っていて、「コーヒー飲みながら、ケーキをいただきたい」とおっしゃってくださるお客さまもいらっしゃいます。でも、販売日は接客で手一杯、かといって人を雇えるほどまだ余裕がありません。

営業中は接客、それ以外は製造と、人生で今がいちばん働いていると思いますが、お給料はパートより少しいいくらい。月で波もあるので少なくなる時もあり……。

3~4月はほんとに忙しいです。いちごのショートケーキやチョコレートケーキなど、お菓子屋さんがいちばん仕事をするのは冬場から春先にかけてですからね。夏にさしかかるとぐっと落ちてくるので、作る数も減らします。

始めた分かった「夏場は売上げが下がる」

場所柄、やはり散歩の途中に来店して買っていかれる方が多いですが、暑くなると散策する人も減って、お客さまも少なくなります。それで昨年は8月はお店を休んで通販に専念しました。オープンしてから分かったことです。

でも、この休みが私にとっては救いでした。オープンからそれまで働きづめだったので、体を休めることができました。本来なら営業しなければいけないのでしょうが、私が倒れてしまってはどうにもなりません。夏場は売り上げが落ちても、1年を通して考えればいいかなと思っています。

できれば、長く働きたいと思っています。体が資本ですから、病気をするわけにはいかないので、健診なんかもまめに行こうと。

5歳上の夫は、この春に定年を迎え、延長雇用で会社員を続けています。まだまだ家計を支えるほどの収入にはなっていない私を、時に発破をかけて(笑)支えてくれています。夫には感謝しかないです。

好きなことを好きなままでいたいから

好きなことを仕事にすると、仕事になった途端に好きでいられなくなるなんて話もあるじゃないですか。仕事はやはり、大変でつらいことのほうが多いと。そういうこともあると思いますけど、そうだと好きを仕事にした意味がないですよね。

もちろん、ただ自分が作りたいものを作ればいいというものではないし、作りたいものもいろいろあるけれど、商売となるとある程度商品は絞らないといけません。お客さんの要望にもこたえたいけれど、私が例えばデコレーションケーキなどをお受けすると、火曜日と土曜日に取りに来てくださいってなってしまう。それでは、お誕生日ケーキは難しいですよね。

家賃が払えて、材料費と経費が捻出できて、自分の給料が少し出れば、それで本当に満足です。まあ、私の給料は……大手を振って言えるような額ではないですけれど(笑)。

取材・文/時政美由紀

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この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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