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副業は小遣い稼ぎではなくリスキリングが目的?定年後も働き続けるスキルの獲得

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「収入の足し」や「小遣い稼ぎ」というイメージの強い副業ですが、実はリスキリングで得た知識やスキルを実践する場としても最適です。リスキリングと副業の関係性について、調査データから読み解きます。

本業とは別に、収入を得るために行う「副業」。

2018年に厚生労働省が策定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2022年7月改定)を受け、最近では副業を解禁する企業も増えています。

副業は単に収入を得るだけでなく、リスキリングで得た知識を実践する場としても有効です。

今回はリスキリングに取り組んでいる方に向け、スキルを実践とする場としての副業の魅力を紹介します。

全体の3割 がリスキリングを目的に副業をしている

副業で身についたスキルについて行われた調査によると、リスキリングを目的に副業を行ったことがあると回答したのは、全体の27.0 %

副業経験者のおよそ3割が、リスキリングを目的に副業をしているのがわかります。

特徴的なのは、リスキリング目的での副業経験者が、年収が高くなるにつれて増加傾向にあること。

年収800万円以上の層から過半数になり、年収1,500万円以上では全体の71.4%を占めています。

画像出典:パーソルイノベーション株式会社「リスキリングを目的に副業する人が約3割!副業で身についたスキル調査」(PRTIMES)

続いて、副業に対する意識の違いを比較するために、令和2年に厚生労働省が行った調査を見てみましょう。

この調査 では、副業している理由はどの収入層でも「収入を増やしたいから」が上位になっています。

1ヶ月あたりの本業収入が40万円未満までの層は「1つの仕事だけでは収入が少なすぎて、生活自体ができないから」という理由が多いです。

一方で、本業の1ヶ月当たりの収入が60万円以上70万円未満。年収換算でおよそ720万円~840万円未満の層は、「自分で活躍できる場を広げたいから」という理由が32.6%を占めており、副業に対する意識の違いが読み取れます。

収入の差がさらに顕著に表れるのは「現在の仕事で必要な能力を活用・向上させるため」に副業をしている割合です。こちらは収入が上がるにつれて割合も上昇し、きれいな山型を描きました。

副業は稼ぐための手段と、自らのスキルを活かす場としての2つの面をもっているのがわかります。

副業で身についたスキル

「副業を通してどのようなスキル・能力が身についたか」という問いに対して、上位を占めたのは次の4つのスキルです。

  • 情報収集
  • プロジェクトマネジメント
  • コミュニケーション
  • 資料作成

副業は仕事の受注から納品まで1人で一貫して行うケースが多く、受注につなげるための情報収集も欠かせません。さらには受注した仕事を管理するプロジェクトマネジメント能力、クライアントとの円滑なコミュニケーション能力、さらに資料作成能力など。

挙げられた4つのスキルは、どれも副業で収益を得るために不可欠です。

さらに副業でのスキルアップは収益に直結しやすいため、ビジネスに欠かせないスキルを磨くのにも、副業は最適な場所といえるでしょう。

参考:パーソルイノベーション株式会社「リスキリングを目的に副業する人が約3割!副業で身についたスキル調査」

副業は本業にもポジティブな影響を与える

副業で身に付けたスキルは、本業にもポジティブな影響を与えます。

本業に対して得られた具体的な影響は、以下の4つです。

  • スキル獲得が自信につながり、メンタルヘルスが改善した
  • 自己成長が本業における挑戦に影響を与えた
  • アウトプットの質が向上した
  • 仕事の効率が向上した

いずれも副業での成功やスキル獲得が自信につながり、本業の効率を上げています。

副業は単なる収入を得るための手段だけでなく、自己肯定感を高め、仕事全体の効率を上げるきっかけにもなっているのです。

参考:パーソルイノベーション株式会社「リスキリングを目的に副業する人が約3割!副業で身についたスキル調査」

リスキリング後の「スキルを活かす場」としての副業

ここからはマイナビ転職が行った調査をもとに、リスキリングを行った後の変化について見ていきましょう。

26.8%が資格取得を達成している

リスキリングで得られるポジティヴな変化として回答されたのは、次の4つです。

  • 資格の取得ができた・・・26.8%
  • 昇給した・・・11.2%
  • 人脈が増えた・・・7.8%
  • 昇進・昇格した・・・6.4%

「資格の取得」に続いて「昇給」、「人脈の増加」、「昇進・昇格」と続きますが、「資格の取得」以外は決して高い割合ではありません。

資格取得の目標は達成しても、昇給や昇進・昇格など、直接的な効果までは得られていないケースが多いといえるでしょう。

参考:マイナビ転職「リスキリングで賃金が上がるのか?経験者の昇給は1割にとどまる」

16.8%は身に付けたスキルを生かせていないと感じている

リスキリング後の変化として挙げられた、ネガティヴな意見は次の4つです。

  • 時間確保やコストの確保が大変だった・・・18.4%
  • 身に付けたスキルを生かせていない・・・16.8%
  • 身に付けたが、もう忘れてしまった・・・14.5%
  • 途中で挫折した・・・12.0%

特に注目したいのが、全体の16.8%もの人が身に付けたスキルを生かせていない、と感じていること。

さらに14.5%の人は、「身に付けたが、もう忘れてしまった」と回答しています。

効果的なリスキリングのためには、資格やスキルを取得するだけでなく、実践し活かすための機会も必要だといえるでしょう。 

参考:マイナビ転職「リスキリングで賃金が上がるのか?経験者の昇給は1割にとどまる」

会社員が副業するときの注意点

副業は、リスキリングで得たスキルを実践する場として有効です。

しかし会社員が副業をはじめるには、守らなければならない注意事項があります。

就業規則を確認する

副業をはじめる前に、まずは会社の就業規則を確認しましょう。

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が策定され、従業員の副業に対して理解を示す企業が増える一方で、副業の可否については企業ごとに対応が異なります。

産業雇用安定センターの調査によると、何らかの形で「副業・兼業を認めている」企業は39.1%と、全体の4割以下。

副業・兼業を「認める予定はない」・「検討していない」と回答した企業は51.6%と、全体の過半数を占めています。

企業が副業・兼業を禁止するのは、情報漏洩のリスクを避けるためや、労働管理の難しさなどが主な理由です。

会社員が副業をはじめるときは、必ず雇用先の就業規則を確認し、副業についてのルールを守るようにしてください。

確定申告が必要になる

会社員は通常、勤め先の企業で源泉徴収が行われ、年末調整で1年間分の所得税を納付します。そのため住宅ローンの控除に関する申請など、特別な理由がなければ個人で確定申告をする必要はありません。

しかし1月1日~12月31日までの1年間の副業で得た所得が20万円を超えると、所得税納付のため確定申告が必要です。なおこの場合の所得とは、収入から備品購入代などの必要経費を引いた金額を表します。

副業中の会社員の確定申告については、以下のインタビュー記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

本業に影響を出さない

会社員が副業をするなら、決して本業に影響を出してはいけません。

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由である」と述べています。しかし以下にあてはまる場合に限り、企業による制限も可能です。

1.労務提供上の支障がある場合
2. 業務上の秘密が漏洩する場合
3. 競業により自社の利益が害される場合
4. 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン

副業は帰宅後や休日に行うケースが多く、休息や睡眠時間が削られて慢性的な疲労状態に陥りやすくなります。

適切な労働管理には、副業に管理ツールを取り入れるのがおすすめです。

アプリは厚生労働省のホームページからダウンロード可能で、誰でも無料で使えます。

本業に影響を出さないためにも、適切に副業の労働状況を管理しましょう。

リスキリングと進めるおすすめの副業

リスキリングで得たスキルを活かす場として、副業にもおすすめの職種は以下の3つです。

  • セミナー講師
  • キャリアコンサルタント
  • 専門記事の執筆や監修

専門家へのインタビュー記事から、それぞれの魅力を紹介します。

セミナー講師

セミナー講師は、教えてほしい人に寄り添い貢献しながら、自らのスキルも高められるやりがいのある仕事です。

「伝統芸能の道具ラボ」主宰の田村民子さんは「教えるためにより深く学んだり、刺激や気づきを得ることで、さらに造詣を深めることができる」と説きます。

インタビュー記事では、「教える仕事」の集客方法や開催場所の探し方、「教える仕事」の魅力と苦労が、田村さんの実体験を交えながら詳しく紹介されています。

キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントとは、主に職業の選び方や働き方、スキルアップに関する求職者からの相談に対して専門的な立場からの助言を行う、国家資格の1つです。

キャリアコンサルタント試験の合格率は、学科・実技試験の同時受験で45.4%(令和5年11月実施試験の結果より)と、決して高くありません。

しかしキャリアコンサルタントは、これまでのキャリアで得た経験を活かせるため、年代別の受験者も50~59歳の層が最も多いです。

キャリアコンサルタントとして活躍する渡辺清乃さんは、大手人材関連企業や編集プロダクション勤務を経て、独立4年目にキャリアコンサルタントの資格を取得。

現在は企業や自治体での研修登壇だけでなく、個人向けのカウンセリングやコンサルティングを行い、ライターとしても活動。また修験道の行者(山伏)でもあり、「身体知」への探求をも行う、多彩な経歴をもっています。

渡辺さんはキャリアコンサルタント資格の取得後も常に学び続け、そのために毎年100万円以上の投資をしているそうです。

専門記事の執筆や監修

取得した資格を活用する場に悩むなら、ライターとして専門記事の執筆や監修を行うのもよいでしょう。

たとえばファイナンシャルプランナー(FP)の資格があれば、金融に関する専門知識を生かしたライティングが可能です。

ライティングには記事を書く前に詳細なリサーチが必要とされるため、常に知識のアップデートも可能。副業としても取り組みやすい仕事のため、リスキリングで得たスキルや知識を活かす場の副業としておすすめです。

以下の記事は、実際にFPの資格を取得するマネーライターが執筆しました。副業としてのライティングにも参考になるため、ぜひご覧ください。

リスキリングや副業に踏み出せないときのアドバイス

現状を変えたいという希望はあるし、リスキリングと副業がそれぞれ効果的なのもわかった。

それでも、なかなかチャレンジする勇気が出ない――。

どうしても一歩が踏み出せない方に、背中を押してくれる専門家たちのアドバイスを紹介します。

「できること」を副業にする

プレセアコンサルティング代表取締役の高森厚太郎さんは、「自分ができると思うこと」が副業になると述べています。

高森さんによれば、副業や起業は「好きなこと」「やりたいこと」を求める風潮がありますが、大切なのは自分の「好き」にこだわらず、柔軟に自分のできるものを探すこと、といいます。

さらに今後の給料アップが見込めない人こそ、「転職」ではなく「副業」を選択して考えるべきとも説いています。

会社に振り回されずに自分で稼ぐスキルを身に付け、人生の選択肢を広げていくことが大切です。

「得意なこと」は少ない労力で最大のアウトプットが出せる

1級ファイナンシャルプランナーの花輪洋子さんは、自分の得意だと感じるものに、まずは労力を注ぐべきだといいます。特異な分野を伸ばしていけば、そこで得られた収入をもとにやりたいことや、好きなことをする時間が生まれます。

「できること」を見つけたら、まずはやってみる。

挑戦するときはついリスクを大きく考えがちですが、いざ書き出してみると、意外とリスクは少ないと花輪さんはいいます。これからは自分で動ける人が強い時代です。まずは自分の得意なことから、動き出してみましょう。

リスキリングで「学び」副業で「実践」する

リスキリングという言葉が浸透し、社会人の学び直しが注目されていますが、いざ身に付けた知識やスキルを活かす場に悩む人が多いのも現状です。

知識やスキルを活かす場に悩んだときこそ、稼ぐ手段としてだけではなく、スキルを実践し、深めていく場としての「副業」を検討しましょう。

構成・文/渡邊 真理

この記事を書いた人

I am 編集部
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「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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