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50 代女性が今のキャリアにプラスすべきスキルはコーチング・MFA・映像技術。4つめは意外にも趣味?

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リスキリングやリカレント教育など、社会人が新たなスキルを身につけるための「学び」が注目されています。人気ビジネス書作家の小山龍介さんが、セカンドキャリアに悩む人が多い50代女性の未来を切り開く四つの「+α」を伝授します。

お手本となる先輩世代がいないまま会社員人生を送ってきた50代の女性たちの多くが今、これからの人生に悩んでいます。リスキリングやリカレント教育が話題になるなか、どんなスキルを身につければセカンドキャリアを切り開くことができるのか。コンセプトクリエイターでビジネス書作家の小山龍介さんが、米国のMBAや国内の大学院、カメラ、能などさまざまな学びを積み重ねてスキルとキャリアを磨いてきた経験をもとに、50代女性が自分自身に「+α」するべき「4つの学び」について教えてくれました。

小山龍介さん。大学卒業後、広告代理店に数年勤めたあと米国のビジネススクールでMBAを取得。帰国後いくつかの企業で新規事業を立ち上げる経験を重ねたあと、京都芸術大学の大学院で修士号(MFA)を取得。現在は、コンサルティングなどを行う会社の経営、名古屋商科大学と京都芸術大学の先生、社団法人の理事をしながら、写真家、能楽師としても活躍。

目指すセカンドキャリアは「ブルーオーシャン戦略」

みなさんこんにちは。ブルームコンセプト代表の小山龍介です。今回は社会人になってからも「学び直し」を続けてきた自分自身の経験を元に、50代女性のみなさんのリスキリングやリカレント教育、そしてセカンドキャリアについてお話しさせていただきます。

僕がみなさんにおすすめしたいセカンドキャリアのあり方は、今お持ちのスキルに、何か一つ新しい要素を付け加えることで、多くのライバルがいる競争軸(レッドオーシャン)ではない新しい軸を見つけることです。僕はこれを「キャリアのブルーオーシャン戦略」と呼んでいます。

シルク・ド・ソレイユをご存じでしょうか。サーカスという業界はそれまで、「動物」や「危険な技」が売りでした。各サーカス団は「向こうがライオンを2匹出すならうちは3匹だ」「もっとスリルのある空中ブランコを見せなければ」といった競争を繰り広げてきたのです。シルク・ド・ソレイユはそこに「芸術性」という新しい競争軸を持ち込み、唯一無二の存在になりました。

もしあなたが今後、転職など新しいキャリアを考えるとしたら。みなさんが積んでこられた経験をもってしても、そのままではライバルがたくさんおり、ライオンの数や空中ブランコの高さを争うような競争にまきこまれてしまいます。

でも今のあなたに、何か一つ新しい「学び」を付け加えたら? 「+α」を手に入れたあなたは、競争相手がほとんどいないブルーオーシャンで勝負できるかもしれません。せっかくリスキリングするなら、そんな「+α」を見つけ、学んでみることをおすすめします。

「あなた+コーチング」で女性管理職に

それでは、50代女性が具体的に何を学び、どんなキャリアを目指すべきかを考えていきましょう。最初におすすめする「+α」は、「コーチング」です。

コーチングとは、コーチ役が依頼者(クライアント)と信頼関係を築き、依頼者が抱える課題を解決したり、依頼者に気づきを与えたりするための技術です。教えるというよりは、相手の課題を「聞く」ことが重視されます。現在ではいくつかの団体が資格を管理しており、全国でたくさんの教室が用意されています。開業するための資格を取るにはかなりの勉強が必要ですが、基礎的なスキルを身につけるなら60時間程度でも可能ですので、仕事のあとや週末に教室に通うことで十分に学習できます。

コーチングを学んだあなたが目指すセカンドキャリアは、「今いる会社で管理職になる」という道です。今回ご提案する中で、最も現実的でリスクが少ない選択かもしれません。なお、すでに管理職のかたは、課長なら部長、部長なら取締役など、より上位の役職を目指すと読み替えてください。

ここで、「私には管理職なんて無理」と思ったかたもいるかもしれませんが、時代は変わってきています。かつての管理職のイメージは、ぐいぐいと部下を引っ張り、ノルマを掲げて業績を追求するような「狩猟型」のリーダーでした。そのため、自らもバリバリと業績を上げてきた人が管理職に選ばれてきました。

しかしこの5年ほどで、管理職を巡る状況は劇的に変化しました。コンプライアンスへの意識が高まり、パワハラは会社にとっても大きなリスク。今求められているのは、メンバーのために尽くす「サーバント(奉仕)型」のリーダーです。

ジェンダー論で語ると怒られるかもしれませんが、古来女性は男性に比べてコミュニケーション力に長けている傾向が強いと言われています。そこにコーチングのスキルが加われば、メンバーのニーズをくみ取り、困っていることを取り除いて全員がのびのびと働ける環境を作りだすリーダーになれるでしょう。

「私は人の上に立つほどの業績をあげてこなかったから……」という遠慮は不要です。人は誰でも、強い相手に自分の弱さを見せるのは難しいものです。バリバリ業績を上げてきた人よりも、自らも悩んだ経験を持ち、コーチングスキルで相手の課題を柔らかく聞き出せる人のほうが、実は管理職に向いています。

社会全体も大きく変わりました。政府が女性の活躍推進を公約し、今や多くの企業が、「○年までに女性管理職××%」といった目標を掲げています。あなたがコーチングを学び、そのスキルを生かして管理職になりたいと手を上げれば、会社としても大歓迎のはずです。

「あなた+MFA」で新商品や新規事業開発担当に

次におすすめする「+α」は、芸術大学の大学院で学び、芸術修士(MFA)を取得することです。たとえば僕が学んだ京都芸術大学は、完全オンラインで大学院を修了でき、MFAも取得できます。短大卒のかたは大学3年からの編入も可能です。

ビジネスの世界でよく語られる、「MBAよりMFA」というエピソードがあります。いわく、「ビジネススクールを出た人はコストカットはできるけど新しいものは何も生み出せない。新しいものを生み出せるのはデザインスクールを出た人だ」と。これからの時代は生み出せる人に価値がある。業種にもよりますが、そう捉える企業が増えてきています。

芸大の大学院で身につけるのは、絵を描く技術やデザイン術といった表面的なスキルではなく、美意識や幅広いアートの教養、いわば「美のフィロソフィー(哲学)」です。今の世の中で、フィロソフィーの有無は商品の価値を決定的に差別化します。たとえば僕の商売道具の一つであるカメラの世界では、国産メーカーの高機能デジカメが20~30万円で手に入るのに対し、ドイツメーカーのライカはオートフォーカスさえ付いていないのに、レンズと合わせて250万円ほどします。機能ではなく、美に対するフィロソフィーが物の価値を決める時代なのです。

MFAを手に入れたあなたが進む道は、ズバリ「新しいものを生み出せる人」。たとえば新商品や新規事業、新規サービスの開発といった役職を求めている企業にとって、長年の会社員経験と、新たに学んだ美意識や感性を併せ持つ人材は、まさにストライクゾーンです。転職を目指すもよし、まずは今いる会社で異動希望を出してみるのもいいでしょう。

「あなた+映像技術」で映像・動画クリエイターに

次におすすめする「+α」は、写真や動画、イラストなどを含めた「映像技術」です。僕は2018年に写真を学ぶ学校に入り、カメラマンになりました。もともと仕事で文化遺産の視察をする機会が多く、写真で記録するという習慣は持っていたのですが、本格的に写真を学ぼうと思ったのはインスタグラムなど画像系SNSの急成長がきっかけでした。

これまでは著書など文章で自分の考えを伝えることが中心でしたが、ほぼ写真や動画のみで日々に潜む驚きや感動を伝えることができることに衝撃を受け、「これは文章と同じぐらい重要なことだ」と考えたのです。

いま多くの企業が動画での情報発信を試み始めています。動画撮影や動画編集のスキルを身につければ、YouTuberで食っていけるとまでは言いませんが、転職するにしてもフリーランスで稼ぐにしても、職に困るリスクはかなり少ないでしょう。僕は絵が描けないので写真を選びましたが、絵心があるかたはイラストや画像加工、アニメーション制作なども選択肢だと思います。

特に、ライターや編集者、広報など文章を書く仕事をされているかたにとっては、映像技術を身につければまさに「鬼に金棒」です。また生成系AIの登場で、「文章を書く」という仕事が今後AIに侵食される可能性もあります。文章と映像技術の両方を身につけることは、AIに負けないための備えにもなります。

「あなた+趣味」で指導者に

最後におすすめする「+α」は、「趣味の道で指導者になる」という方法です。僕は知人から宝生流の能を学び、先生の助けをいただきながら今は数人の生徒を集めて一緒に学んでいます。能に限らず、華道や茶道、舞踊、書道などは昔から師範の資格を取る仕組みがありますし、たとえば僕が学んだカメラなどは、特に資格がなくても人に教えることができます。

かつては人に教えようとするとお弟子さんを集めて、自宅に教室のためのスペースを用意して……と面倒なことも多かったのですが、今はスキルを持つ人が講義動画を撮影し、学びたい人がそれを買う「ユーデミー」(リクルートが運営)や、個人の特技を売り買いする「ココナラ」といったネット経由のサービスも広がってきました。

もちろん、生活全般をまかなえるほどの収入を得るのはなかなか大変ですが、ある程度の貯蓄と持ち家(実家を含む)があり、生活費をがっつり稼ぐ必要はないという環境のかたなら、セカンドキャリアとしてとてもステキな道だと思います。

また、趣味を学ぶことは、会社の外に新たな人脈を広げるという効果も期待できます。後編では、社外の人脈を広げることで見つかる新たなセカンドキャリアについてお話しします。

取材・文/華太郎

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