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ダブルキャリアで人脈拡大。50代女性におすすめの「投資ゼロのリスキリング」とは? 

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50代のリスキリングは、「かかった費用を回収できるのか」という費用対効果も重要です。自身も様々な学びを重ねてきたビジネス書作家の小山龍介さんが、お金をかけず最大の効果を得られる意外なリスキリングの方法を教えてくれます。

大学を出て広告代理店に入ったあと、米国のMBAや国内の大学院、カメラ、能などさまざまな学びを積み重ねてスキルとキャリアを磨いてきたコンセプトクリエイターでビジネス書作家の小山龍介さんから、50代女性のリスキリングやセカンドキャリアのポイントを聞くインタビュー。後編は、50代だからこそ求められる、費用対効果を意識したリスキリング術について聞きます。カギを握るのは、「会社以外の人脈」だといいます。

小山龍介さん。大学卒業後、広告代理店に数年勤めたあと米国のビジネススクールでMBAを取得。帰国後いくつかの企業で新規事業を立ち上げる経験を重ねたあと、京都芸術大学の大学院で修士号(MFA)を取得。現在は、コンサルティングなどを行う会社の経営、名古屋商科大学と京都芸術大学の先生、社団法人の理事をしながら、写真家としても活躍。

50代のリスキリングは「費用対効果」を意識せよ

こんにちは。ブルームコンセプト代表の小山龍介です。前編では、50代女性が身につければセカンドキャリアを切り開くのに役立つ「四つの学び」をお伝えしました。もちろんこの四つはあくまでも例です。それ以外にも、あなた自身に「+α」したいと考えるスキルが見つかったら、ぜひ積極的に学んでいただきたいと思います。

ただし、身につけようとするのが、純粋に「今後のキャリアのためのスキル」だとしたら、最初に考えなければいけないことがあります。それは、「自分が元気で働ける間に、その投資を取り戻せるのか」。つまり、費用対効果です。

20代なら、たとえばアメリカでMBAをとるのに500万円かけたとしても、その後30年働くと考えれば1年あたり約17万円、月1万4千円ほど収入がプラスになればいいわけですから、十分に回収可能でしょう。でも、50代は違います。500万円を10年間で回収するには、年間50万円、月々の収入を今より4万円以上増やす必要があります。

では、どの程度の投資なら許容できるのでしょうか。一つの目安としてほしいのは、「60歳から65歳までに得られる収入」です。60歳で定年を迎え、65歳の年金受給開始までの5年間は、何もしなければ収入ゼロです。この間に、たとえば月5万円稼げるスキルを身につけるためなら、5万円×60カ月、300万円を投資しても元が取れる計算です。65歳以降も働き続ければ、その部分がプラスになります。

お金をかけて自分自身をリスキリングする場合はこの計算式を念頭に、どの程度の投資が可能かを検討してみてください。

ただしこれは、「純粋に今後のキャリアのための投資」の場合です。「大好きな趣味を極めて指導者の資格を取る」とか、「お金のことは度外視してやりたい勉強をやる」といった場合はもちろん、費用対効果など考える必要はありません。やりたいことがあり、お金のことを気にしなくていい状況ならば、どんどんチャレンジしてください。

投資ゼロのリスキリング 「ダブリキャリア」で人脈作り

リスキリングというと、教室に行ってお金を払って……というイメージが強いですが、決してお金をかけなければできないものではありません。今回私がおすすめしたいのは、会社以外にもう一つの肩書を持つ、「ダブルキャリア」という方法です。

私は会社の代表や大学の教員といった収入を伴うお仕事以外に、「ビジネスモデルイノベーション協会」という一般社団法人の理事もやっています。このお仕事は完全に無給ですが、お金には換えられない「報酬」を得られることもあって、積極的に取り組んでいます。

その報酬とは、協会に参加している様々な業界のみなさんたちとの人脈です。会社の中の人脈は、基本的に同じ世界にいるので広がりがありません。一方、まったく別の会社や別の業界の人とつながれば、その人が持つ人脈とも間接的につながることができます。しかも、お金が絡まない関係ですから、利害関係なく付き合うことができます。

たとえば「この人と知り合えたらなぁ」「あの人に仕事を頼みたい」といったとき、人脈のなかの誰かに聞くと「その人なら僕の友だちがつながってるよ」といった形で、意中の人にショートカットできることがしばしばあります。逆に、人脈を通じて、まったく知らなかった人から私に仕事の依頼が入ったり、新しいプロジェクトが生まれたりすることもあります。

会社のなかにとどまらない、多様な人々との人脈を持つことは、今後のキャリアを切り開く大きな武器になり得ます。本業以外の人脈は、新たなスキルなのです。

誰でもできる「プロボノ」はコスパ最強のリスキリング

「いやいや、私が社団法人の理事になれるわけないでしょ」というツッコミが聞こえてきそうですね。もちろん、無理に理事になる必要だってありません。

「プロボノ」という言葉をご存じでしょうか。職業上のスキルや経験を生かして社会に貢献することを言い、「公共善のために」という意味のラテン語が語源といわれています。

世の中には、すばらしい目標を掲げ、人々の役に立つ活動をしているものの、運営に四苦八苦しているNPO法人や社団法人があふれています。会計、事務、組織作り、総務、広報、渉外……。あなたが会社で積み上げてきた経験やスキルを、のどから手が出るほど求めている組織がたくさんあります。その組織に、無償であなたの力を貸してあげるのが、プロボノです。

環境問題、子育て支援、動物愛護など、ジャンルは何でもかまいません。あなた自身が応援したい、参加したいと感じるNPO法人や社団法人を見つけて、終業後や週末に、あなたの力を役立ててみませんか。お金は得られなくても、その団体の参加者や、様々な取り組みの中で関わる他団体や自治体、企業など様々な人々との人脈ができるはずです。その多様な人脈が、あなたに新たなキャリアをもたらす重要なスキルになります。お金をかけず、大きなリターンを得られるリスキリングの手法です。

趣味のサークルだってリスキリングの場になり得る

会社以外の人脈を得られる場所は、NPOや社団法人だけではありません。社外の人々が集まる趣味のサークルだって、人脈を作るためにはとても有効な場です。

僕は先に述べたように能を習っているのですが、その先生が福島の会津地方で地域プロデューサーをやっていた関係から、文化庁が手がける「日本遺産」という事業に関わることになりました。もちろん、能を習っているのは人脈を作るためではありませんが、思いも寄らぬ新しいつながりは、趣味の活動からでも生まれることがあると気づかされました。

人脈というのは、足し算ではありません。たとえばサークルなどを主催している人は、人間関係の「ハブ」になっていることが多いもの。そういう人と知り合うことで、結果的に別の「ハブ」ともつながり、人脈が突然どーんと広がることもあります。

たとえ趣味の場であっても、近所のおつきあいであっても、積極的に交流関係を広げてみてください。「人脈は新たなスキル」なのですから。

会社員人生を表す「VSOP」 自分を磨くリスキリングを

最後に、ビジネス界で有名なお話を一つご紹介します。それは、「ビジネスパーソンの仕事人生は、『VSOP』の4文字で表せる」というものです。

20代の会社員は、「V=バイタリティー」。やる気と馬力と根性でたいがいのことを乗り越えられ、それが評価される時代です。

30代は、「S=スペシャリティー」。馬力や手数で乗り越えられた20代とは違い、専門性が求められる時期になります。

40代は、「O=オリジナリティー」。単に専門性が高いだけでなく、「この人にしかできない」という独自性も必要になる時期です。

そして、50代は「P=パーソナリティー」。仕事のスキルや業績だけでなく、「この人になら付いていきたい」とか、「この人となら一緒に仕事がしたい」と感じてもらうことが重要になる時期、ということです。

僕は、50代のリスキリングとは、単にスキルを身につけるだけではないと思っています。スキルを身につけることでパーソナリティーを磨き、「この人と一緒に仕事がしたい」と思ってもらえる人になること。それを意識してリスキリングに取り組むことが、セカンドキャリアの可能性を大きく広げるカギになるのではないでしょうか。

取材・文/華太郎

この記事を書いた人

華太郎
華太郎経済ライター
新聞社の経済記者や週刊誌の副編集長をやっていました。強み:好き嫌いがありません。弱み:節操がありません。

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