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「日本から茶畑がなくなる」料理の力で茶農家を守れる? 社会派料理人という働き方

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日本有数のお茶の産地静岡県が直面している、存続の危機。離農が後を絶たないなか、この状況を打破するための取組のひとつ、今までにないお茶製品の開発を行っている社会派料理人について取り上げました。

静岡と言えば、日本有数のお茶の産地です。しかし今、静岡のお茶産業は存続の危機を迎えています。高齢化や後継不足に加え、茶葉の価格低迷、肥料や燃料・資材の高騰がそこに輪をかけています。

茶離れと言われますが、総務省の家計調査を見ると、世帯当たりの年間支出額に大きな変化はなく、変わったのはその比率です。リーフ茶葉(緑茶)の支出額が減った分、ペットボトルのお茶飲料の支出額は大幅に増えています。しかし、お茶飲料の茶葉は、三番茶、四番茶などのいわゆる低価格帯のもの。主力商品の一番茶が売れず、離農が後を絶たない状況です。

「茶を巡る情勢」(農林水産省/令和5年8月)

お茶農家の戸数は静岡県が一番多いのですが、減少もが著しいのが見て取れます。静岡県は中山間地かつ傾斜が15%以上の茶畑が5割を占めており、摘み取りの機械化ができません。高年齢化により作業が困難になり、後継者がおらず廃業する農家が続出しています。その結果、耕作放棄地が増えてしまっているのです。

「茶を巡る情勢」(農林水産省/令和5年8月)

そんな状況にいてもたってもいられず手を挙げたのが、社会派料理コンサルタント、小鉢ひろかさん。小鉢さんは、2022年冬に東京から静岡県に活動の拠点を移しました。

小鉢さんは静岡県出身。京都の調理師専門学校を卒業後、クッキングスクールの講師を経て上京。勤務先の青果店での新店舗の立ち上げをはじめ、2020年には個人事業主として料理を通じた小売店のコンサルティングをスタート、「捨てない料理人」として、企業や生産者からの依頼をメインに「料理の力で食品ロスをなくす」活動を行っています。

そんな小鉢さんの祖父母は、かつてお茶農家を営んでいました。小鉢さんの記憶にあるのは、当時の青々とした一面の茶畑。早起きの祖母が入れておいてくれたマグカップのお茶を飲むのが毎朝の習慣だったそうです。しかし、久しぶりに帰省した際、小鉢さんが目の当たりにしたのは「見渡す限り耕作放棄地」となった茶畑でした。

日本人であればとても身近で、今やペットボトルでいつでもどこでも飲めるお茶。そのお茶が危機にあるなんてにわかに信じられませんが、このままでは近い将来身近な飲み物ではなくなってしまうかもしれません。

現在静岡県では、この状況を打破するため、スマート農業をはじめとするさまざまな取り組みが広がっています。静岡県島田市では、中山間地の小規模茶園に「栽培管理見える化システム」を導入し、作業時間の削減をの実証実験を行っています。また、静岡県の複数のエリアで、Z世代等若い世代向けの市場調査を行うとともに、地元菓子メーカーと連携し、お茶とのペアリングに適したスイーツを開発しています。収量や品質が下がる原因となる樹齢の高い茶園の若返りをはかる改植も、少しずつ進んでいるそうです。

そして、小鉢さんが取り組んでいるのは、新たな市場を創出し、茶葉の消費拡大と価格アップにつながる、今までにないお茶製品の開発です。

これまで培ってきた社会派料理コンサルタントとしての力を故郷の茶畑再生のために使おうと決意し、2023年8月、無事に株式会社Kobachiを創業。自社ブランドの第一弾として、お茶に含まれるアミノ酸の一種であるl-テアニンに着目し、新たなお茶の楽しみ方を提案する製品を開発中です。小鉢さんは、「お茶のリラックス効果を十二分に感じていただけるものにしたい」と意気込みを語っています。

この記事を書いた人

堀中 里香
堀中 里香取材・ライティング
知りたがりのやりたがり。エンジニア→UIデザイナー→整理収納×防災備蓄とライターのダブルワーカー、ダンサー&カーラー。強み:なんでも楽しめるところ、我が道を行くところ。弱み:こう見えて人見知り、そしてちょっと理屈っぽい。座右の銘は『ひとつずつ』。

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