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自分でできるマーケティング入門なぜ今、マーケティングが必要なのか? マーケティングとは「商売」そのもの

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好きなことを仕事にているからこそ、自分のビジネスや事業を知ってもらいたい。そのためにはマーケティングが必要。デジタルマーケティング、SNSマーケティング。でもそもそもマーケティングとは? 今さら聞けないマーケティング入門です。

なぜ毎日「マーケティングとは?」が検索されるのか?

「マーケティング」と聞いて皆さんは何を思い浮かべますでしょうか?

市場調査、4P、セグメンテーション……。色々と頭に思い浮かぶかもしれません。しかし、具体的に何なのか、どういったメリットがあるのかわからないと思われている方は多いのではないでしょうか。日本のGoogle検索ではその迷いが数字として如実に表れています。「マーケティング」という検索キーワードは毎月58,000回も検索されており、「マーケティングとは」という検索キーワードは2016年から2023年で検索ボリュームが2倍にまで増えています。

マーケティングがわかりにくい理由は、適切な日本語和訳がないからです。下記のように列挙すると、よくわかります。

アップルりんご
セールス営業
マーケティング???

この「わからない」言葉を理解しようと定義を調べても様々な団体やプロフェッショナルが、多様な定義を提唱しており「もっとわからない」「もう、いいや」となってもおかしくありません。


例えば日本マーケティング協会によるマーケティングの定義は下記になります。

「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」

また、マーケティングの父と呼ばれているフィリップ・コトラー氏は下記のように定義しています。

「マーケティングとは、個人や集団が、製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである」

やはり、どれをみても「マーケティングって、小難しくてわからない」となってしまうのです。

なぜ、今あなたにマーケティングが必要なのか

このマーケティングがよくわからないという課題に対して、ファミリーマートでマーケティングを推進されている足立光氏はインタビュー記事で下記のように述べています。

「マーケティングとは商売である」

「マーケティング = 商売」となった瞬間に自分に必要かも…と思いませんか? なぜなら本記事を読まれているビジネスオーナーや個人事業主、副業をする会社員はまさに日々「商売」をしているからです。

ちなみに商売、つまり商い (あきない) の語源は「秋の物々交換」です。

あきなふ = あき(秋)+ なふ(動詞)をつくる言葉

昔の農民が米などの収穫物や織物等を交換する商いを秋の時期に行ったことから生まれています。このことから、秋に行う「物々交換」が商いの語源とされています。

現代になっても商いの基本は同じです。事業主が製品やサービスを提供し、お客さまからお金等の「対価」と交換する。どんなお客様に、どういった製品・サービスを提供して喜んでもらい、長期的に買ってもらってビジネスを成長させていくか。この商いの工程すべてに関連のある「商いに必要なことすべて」がマーケティングなのです。だからこそ、ビジネスを成長させたいあなたにマーケティングは必要なのです。

2本の「白みりん」で理解するマーケティング

マーケティングを具体例で理解するために、写真にある2本の白みりんを例にします。わたしの出身地である千葉県・流山市。ここは1814年に白みりんが開発された場所です。ここで2本のみりんを比べることでマーケティングの理解を深めましょう。

左:古式造り 流山本みりん 720ml右:マンジョウ濃厚熟成本みりん 500ml
製造:窪田酒造製造:流山キッコーマン
容量:720ml容量:500ml
価格:1,320円価格:331円
半透明の布を被せた高級なパッケージペットボトル
限定生産
注文から数ヶ月待ち
Amazonやスーパーで
いつでも購入可能
料理研究家やインフルエンサー御用達綾瀬はるか起用のテレビCM
*流山本みりんは2022年9月1日、仕入れ価格高騰のため値上げ

読者の皆さんは、もしどちらか1つをもらえるとしたら、どちらが欲しいでしょうか? おそらくほとんどの方は、左の「古式造り 流山本みりん 720ml」が欲しいはずです。なぜでしょうか。おそらく下記のような理由が挙げられるでしょう。

  • パッケージや名前が高級そうだから
  • 値段が高いから
  • 買いにくく、手に入れにくいから
  • CM等でみんな知っているものでなく、限られた人しか知らないから

実はこの「白みりん」にこそ、皆さんのマーケティングが成功するエッセンスが詰まっているのです。

「希少性 × 高価格 × 直売 × 一点突破」が成功の方程式

流山の2本の白みりんの例を踏まえると、スモールビジネスのオーナーや個人事業主、副業を行う会社員の読者の皆さんの「マーケティング = 商い」が成功する方程式が見えてきます。

それは「希少性 × 高価格 × 直売 × 一点突破」です。具体的には、

  • 製品やサービスは唯一無二にこだわる

なぜなら大企業のような大量生産ができないから特色がないと見向きもされない。

  • 価格は高く設定する。時には値上げする

なぜなら、値下げしたら大企業や競合と価格で戦わなければいけなくなるから。

  • 購入できる販路は利益率の高い直販を中心に重要なところだけに絞る

なぜなら、手に入りやすいものの価値は下がるし、販路を広げるほど余計な時間や手間、そして膨大な中間手数料が引き抜かれて事業が儲からないから。

  • 知ってもらう経路は口コミだけの一点突破にしてお客様にお客様を読んでもらう

なぜなら、予算が潤沢にある大企業と違い、プロモーションにコストをかけられない。

なぜか。多くの場合、キッコーマンのように大量生産をして低価格で提供したり、全国のスーパーで販売したり、大規模にテレビCMを打ってプロモーションしたりすることが困難なスモールビジネスのオーナー、個人事業主、副業会社員だからです。みなさんが目指すマーケティングとは、331円のスーパーで買えるキッコーマンのみりんではなく、1,320円の手に入りにくい高級な流山本みりんなのです。

マーケティングの失敗方程式とは?

多くのビジネスオーナーへのマーケティングのサポートをする中で、上記の成功方程式と真逆のマーケティング = 商いをしており、失敗していることが多いと常々感じています。

つまり皆さんの”よくある”マーケティングの失敗方程式は「特色のない製品・サービス x 低価格/値下げ x 直販が無い x やみくもプロモーション」なのです。相談にのってほしいと懇願されて、これらの思い込みを1つ1つ解消して、少しずつ失敗から成功の方程式に切り替えていくことで、下記のようなコメントをもらうことが多いです。

  • 製品やサービスに独自のサービスを追加することで、リピート率が高くなりました。
  • 「初回の価格を思い切って2倍にしました。お客さんが減るどころか、2倍の金額が普通だとおもって2回目以降も2回分まとめて購入してくれて毎回2倍の金額でサービスを利用してくれる人が増えて、ビックリしています」
  • 自社サイトを構築し、そこから直販で販売することで1人1人のお客様とコミュニケーションに向き合ってしっかり顧客リストを管理できるようになりました。無駄な手数料も省いて販売できるようになったので利益率も大きく向上しました。
  • 口コミが貯まる仕組みづくりのおかげでGoogle Mapの評価が大幅に増え、★4.9の評価を得ています。日本人だけでなく、日本在住の外国人のお客様が増えました。

千葉のチベット・流山市が人口増加率日本一になれたワケ

この「希少性 × 高価格 × 直売 × 一点突破」という成功の方程式は、商売だけに留まりません。商いの基本が「サービスや物の交換」であるならば、自治体の運営 = 経営にもマーケティングは活かすことができます。

2003年から流山市の市長を務めている井崎義治氏は日本の自治体で唯一の『マーケティング課』を設立し、下記の施策を実施したことで知名度がなく財政危機だった「千葉のチベット」流山市は「千葉のニコタマ」へと変貌しました。

  • 待機児童率0 & 「送迎保育ステーション」という仕組みを作り、子育てに強い特色を持つ街づくりを推進。「保育の楽園」へ。
  • 人口増に伴い、直近の不動産価格は5年前の1.5倍に上昇。ショッピングセンターもハイソ化
  • つくばエクスプレスや常磐線等の電車や車で直接流山を訪問して、移住を決める。
  • プロモーションは東京駅、品川駅、秋葉原駅、大手町駅等の東京の主要ターミナル駅のみの一点突破で実施。「母になるなら、流山市。」のキャッチコピー。

2022年12月に発売された『流山がすごい』という書籍や2021年12月9日にオンエアされたカンブリア宮殿「少子化時代に喝!千葉・流山の人集め戦術」にて、上記のマーケティングの取り組みがわかります。商いだけでなく、市政においても「希少性 × 高価格 × 直売 × 一点突破」という成功の方程式は効果があるのです。もしご興味があれば、上記書籍やテレビ番組をチェックしてみてはいかがでしょうか。

次回から、1つ1つの要素の詳細を述べていきたいと思います。

おさらい「マーケティングとは?」

①マーケティングとは「商い」。ビジネスオーナーなら誰もが必要なことである
②スモールビジネスには「希少性 × 高価格 × 直売 × 一点突破」が成功の方程式

この記事を書いた人

室橋健
室橋健
顧客関係管理の外資系IT企業でマーケティングマネージャー。慶応義塾大学卒業後、リクルートとベンチャー企業でデジタルマーケティングの仕事の従事。2011年から1年間、中国・北京の清華大学に留学。ホテル暮らしで日本全国を移動しながらフルリモート勤務を続けていたが、2022年春より京都の町家に定住。顧客管理のメモ理論を実践している。

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