Series
連載

人生を変えるI amな本ビジネスの場で天気の話をするのはNGだった!? 日本人が知らない、成果につながる「雑談」とは

ログインすると、この記事をストックできます。

世界で活躍する一流のビジネスパーソンにとって、「雑談」は単なる場の和ませではない。欧米の仕事の流儀に明るい起業家が教える、成果につながる雑談のすすめ。

日本人の雑談は「もったいない」

ポーランドで生まれ、ドイツ、オランダ、アメリカで暮らした後、来日。数社の外資系企業勤務を経て、現在は企業経営者として活躍するピョートル・フェリクス・グジバチさん。仕事柄、日本のビジネスパーソンと接する機会の多いピョートルさんですが、「非常に奇妙に感じている」ことがあるそうです。

それは「雑談」。

「今日は暑いですね」といった天気の話やSNSの話題など、ほとんどがとりとめのない会話であることを、ピョートルさんは「奇妙」と表現します。そして、こうしたスタイルの雑談は、「日本独特の習慣」であるとも、著書『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか 』(クロスメディア・パブリッシング)で指摘しています。

こう聞くと、意外に感じられるのではないでしょうか? 雑談といえば、天気や世間話が常道であると、われわれの大半は考えているでしょうから。

ピョートルさんは、それを「もったいない」と言います。

日本のビジネスマンは雑談を本題に入る前の「潤滑油」と考え、その場を和ませたり、無駄な緊張感を取り除いて、相手との距離感を縮めることを期待しています。
お互いの関係性を深めるのは大事なことですが、僕は「それだけでは、あまりにももったいない」と考えています。なぜならば、そこが「ビジネスの場」であるからです。(本書4~5pより)

海外では、ビジネスの場で雑談はしないというわけではありません。英語圏でも雑談にあたる言葉はあり、「small talk」や「chat」などと言います。ピョートルさんが以前勤めていたグーグルでも、「Let’s chat!」という言葉が頻繁に飛び交っていたそうです。

ただし、話す内容は、仕事に関わる情報交換が主体。そこには、どんな成果を目指すかという明確な意図があったのです。

雑談は信頼関係を築くためのもの

本書でピョートルさんは、世界の第一線で活躍するビジネスパーソンの雑談について、深掘りしています。

まず、彼らが日々行っている雑談は、きわめて戦略性の高いもの。商談に入る前に、得ようとするものがあって雑談を始めるのです。

では、それは何かと言えば、相手が信用できる人かを確認し、信頼・尊敬できる関係を築くこと。心理学の用語で言う「ラポール」を作ることを目指します。

ピョートルさんは、「天気の話や思いつきの世間話でラポールを作るのは、不可能に近い作業です」と言い添えます。多くの日本のビジネスパーソンは、それに気づかず、取引先との間で生み出すべき成果について損をしています。

僕にとって、人と会うことは常に「学び」のあることですが、残念ながら必ずしもそうならないこともあります。
「今日は雨が降りましたね」とか、「駅は混んでいましたか?」から始まるような無意味な雑談が延々と続くと、顔には出しませんがガッカリしてしまいます。
正直なところ、「意図がない雑談をするならば、口を開かなくて結構です」と言いたくなるのはこんな時です。(本書75pより)

辛辣な言葉ですが、意味のない雑談だと、時間が奪われ、ビジネスの可能性がなくなり、評判もなくすという3つの問題点をピョートルさんは挙げます。ここは、われわれも意識すべきことでしょう。

雑談の極意①相手の状況を見極める

では、どのような雑談が望ましいのでしょうか?

ピョートルさんは、この点についてもしく解説しています。一例を挙げれば、雑談の口火を切るのは「確認作業」です。確認する中身はいくつかありますが、例えば「相手の状況」。

相手が明らかにバタバタしているようであれば、「何かありましたか?」とか、「お疲れですか?」と聞いてみて、本題に入れるかどうかを判断します。(本書163pより)

これはピョートルさんが、「日本のビジネスマンは意外にスルーしている」点だそう。スルーというより、遠慮して言い出さないのか、単に気づかないのかもしれませんね。いずれにせよ、相手の状況を留意しないままプレゼンや商談を始めてしまうと、相手の曖昧な表情や空気感を見過ごすリスクがあります。それは、本来であれば成功したかもしれないビジネスチャンスを逃すことにつながりかねません。

雑談の極意②上下関係より対等な人間関係

もう一つ、われわれの盲点になっていることとして、「簡単に上下関係を作ってしまう」という問題を挙げています。「上下関係」とは主に、発注企業と下請け企業、営業と顧客の関係を指します。

つまり、お金を払う側が「上」、受け取る側が「下」という関係性ですが、これは互いの信頼関係が構築されないという弊害を招きます。

そうではなく、目指すべきは対等な人間関係。そのツールとして、ピョートルさんは雑談の活用をすすめるのです。

雑談の極意③自己開示で共感を得る

では、上下関係に陥らないための雑談とは、どのようなものでしょうか?

海外のデキる人が実践しているものとして、互いに「共通する体験や考え方を共有する」というのがあります。例えば、「私も何度か転勤していますが、単身赴任というのは本当に寂しいですよね」といった自己開示を伴う話し方。これは、相手に身近な存在と感じさせ、分け隔てない関係に発展しやすいとアドバイスされています。ピョートルさんも指摘していますが、「自己開示」は、日本人が苦手とするもので、ここは試行錯誤が必要となるかもしれませんね。


本書を読むと、今まで深く考えてこなかった雑談について、目からウロコの新たな認識が芽生えてきます。「もしかしたら雑談で損をしている?」と思い当たるなら、ぜひ一読してみてください。取引先と、もう一歩踏み込んだ関係を築けるはずです。

 

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

ログインすると、この記事をストックできます。

この記事をシェアする
  • LINEアイコン
  • Twitterアイコン
  • Facebookアイコン