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人生を変えるI amな本「自らをマネジメントしなければならない」知識労働者こそ、ドラッガーを知るべきワケ

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人生が変わる I am な本。今回はピーター・ドラッカーの『プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか』(ダイヤモンド社)を紹介。

ピーター・ドラッカーの名前を「聞いたことがない」という人は、少ないと思います。


でも、彼の「著作を読んだことがある」という人は、多数派ではないでしょう。「マネジメントを発明した」経営学者という肩書から、経営者・リーダーに向けた本だと思われているからです。実際、多くの著作はそうした層を念頭に書かれています。


ですが、ドラッカーが関心を持ったのはもっと広い層で、それには「知識労働者」全般が含まれます。時代とともに数を増した知識労働者は、「自らをマネジメントしなければならない」存在であり、「すべてエグゼクティブ」だからです。これは特にフリーランス・個人事業主についても言えることです。


というわけで今回は、ドラッカーを読むなら最初の 1 冊としてすすめたい『プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか』(ダイヤモンド社)を紹介しましょう。

無駄な努力にならないために自分の強みを知る

取引先や見込み客から「あなたの強みは何ですか?」と聞かれたときに、スラスラと答えられますか?


おそらくほとんどの人は、頭の中にある模範解答をもとに即座に答えられるでしょう。しかし、ドラッカーによれば、よくわかっているはずの自らの強みは、「たいていは間違っている」そうです。強みを正しく把握していなければ、キャリア構築はおぼつかないでしょうし、そもそも独立してすぐに頓挫してしまうに違いありません。


強みを知る方法としてドラッカーがあげるのは「フィードバック分析」です。


何かをすることに決めたならば、何を期待するかをただちに書きとめておく。九か月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合する。私自身、これを五〇年続けている。そのたびに驚かされている。これを行うならば、誰もが同じように驚かされる。こうして二、三年のうちに、自らの強みが明らかになる。(本書 112p より)


こうして強みが明らかになったら、それをもって注力するようアドバイスがなされています。いうまでもなく、それが成果を生み出すものだからです。同時にその強みをいっそう伸ばし、自らの悪癖を改めるよう努めなければならないとも。その上で、行っても成果の上がらないことは行わないようにします。それは単に弱みだからです。


ところで、自分の短所を克服すべきかという議論をしばしば目にします。短所を長所に転換できたら、「自分の仕事の幅が広がる」という期待がそこにあるからでしょう。ドラッカーは、この点については辛辣です―「努力しても並にしかなれない分野に無駄な時間を使わないことである」と言い切っています。そのためにエネルギーを浪費するくらいなら、自分がすでに持っている強みをさらに向上させる方が、ずっと効率的というわけです。

細切れの時間を使ってはいけない

時間管理(タイムマネジメント)は、フリーランス・個人事業主にとって大きなテーマです。どのようにして、時間というこの厄介な代物を手懐けることができるのでしょうか?


ドラッカーは、一見難しそうなこの問いに明確に答えています。第一に重要なのは「ごくわずかの成果を上げるためであっても、まとまった時間を必要とする」―この事実を認識することです。
報告書の作成に六時間から八時間を要するとする。しかし、一日に二回、十五分ずつ三週間充てても無駄である。


得られるものは、いたずら書きにすぎない。ドアにカギをかけ、電話線を抜き、まとめて数時間取り組んで初めて、下書きの手前のものつまりゼロ号案が得られる。その後、ようやく、比較的短い時間の単位に分けて、章ごとあるいは節ごと、センテンスごとに書き直し、訂正し、編集して筆を進めることができる。(本書 122p より)


本書が刊行されてから 20 年余りが経った今、報告書は AI の力を借りてチャチャッとできるかもしれません。でも、得意先から電話が来て「手がふさがっているので〜」とは言えないし、仕事仲間から相談を受けて数分で済ませることはできないでしょう。コミュニケーションは特にそうですが、文明の利器が代わりにできることは、そう多くはありません。細切れの時間をせっせと作るのではなく、まとまった時間を作ることに精魂を傾けるべきなのです。AI がどんなに発達しようとも、「時間は稀少な資源」であることに変わりはないのですから。

マルチタスクではなく一点集中

時間管理の重要性はわかっても、1日の終わりに「いつも時間が足りない。1 日が 48 時間あっても足りないくらいだ……」と反省する日々かもしれません。いったい何が間違っているのでしょうか?


ドラッカーはこう答えます―「もっとも重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない」と。脳科学的には有効性が否定されているにも関わらず、「マルチタスク」という言葉はいまだにもてはやされています。同時並行でいろいろなことをするのは、できる人のあかしのように思われていますが、この方向を目指すと、落とし穴にはまりこみます。


かえって、いかなる成果もあげられない人のほうがよく働いている。成果のあがらない人は、第一に、一つの仕事に必要な時間を過小評価する。すべてがうまくいくものと楽観する。だが、誰もが知っているようにうまくいくものなど一つもない。予期しないことが、常に起こる。(本書 138〜139p より)


また、意外と気づかれずに時間泥棒となっているものに「古くなったもの」があるかもしれません。これは、もはや生産的でもなんでもないのに、なんとなく習慣にしていることです。


これを発見するコツは「まだ行っていなかったとして、今これに手をつけるか」を自問すること。それに「イエス」と答えられなければ、さっさと捨ててしまいましょう。真に意味のある大事な仕事に取り組むのに、余分なことを抱き合わせる必要はありません。


ここまで読んでお分かりのように、本書においてドラッカーの説く内容はわかりやすくて実践的。ドラッカーに興味を持ったら、まずは本書を紐解くことから始めましょう。きっと得るものは大きいはずです。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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