Be Career
働き方

飽和状態のD2Cで成功するには独自路線が必要ネットショップは売れない? 田舎暮らしならではの天然鉱石アクセサリー制作とそのブランディングでコロナの影響を受けないメソッド

ログインすると、この記事をストックできます。

ライバルひしめくネットショップの成功の鍵はブランディングとファンづくりにありました。長野県に移住し、自然の中から自分で収集した鉱石でつくったハンドメイドのアクセサリーブランド「せつ」の北嶋宏美さんに、選ばれるショップづくりに大切なことを教えてもらいました。

自然の恵みをいただいた1点ものアクセのブランディングとは?

コロナ禍に見舞われ、全てのイベントが中止になってしまったことをきっかけに、オンラインで販売をはじめたアクセサリーブランド「せつ」の北嶋宏美さん。

「展示会やクラフト市に来ることができないような、九州沖縄や北海道など遠方の方ともご縁が繋がり、お客さんの母数が大きく広がった」と言います。

元デザイナーでブランディングの仕事に携わっていた北嶋さんがどのように「せつ」のブランドづくりをしたのか聞きました。

「せつ」の商品写真
「せつ」のオリジナリティあふれるアクセサリー/本人提供

《具体化させる》 コンセプトとターゲットを紙に書き出す

ネットショップやSNSを通して商品を知っていても、顧客が商品や店に魅力を感じないことには買ってもらえません。そこで重要になるのがブランディングです。

ブランディングをすることで、他にはない商品の魅力や、作品ができるまでのストーリー、世界観やブランドイメージを効果的に訴求できます。

ブランディングにはまず、ブランドのコンセプトや方向性を決め、ターゲットに具体的な人物像を設定し、作品やブランドのイメージがブレないための軸を作ります。

北嶋さんは「コンセプトや目指したい方向性は紙に書き出して明確にした」と言います。

ターゲットは商品を購入してほしい具体的な人物像を決めますが、「せつ」の場合は「naluという大好きな唄い手さんでした。その人にプレゼントするとしたらどうか?その人が良しとするであろうものであるか?ということを常に意識して制作していました。長くやっていると段々とターゲットのことを意識しなくても、軸が揺らがないようになっていきました」

写真/Canva

《世界観》 作品とリンクさせる

「せつ」は作品、パッケージ、サイト、SNSを通して世界観が統一され、作品の魅力を一層効果的に伝えています。

世界観づくりに大事なポイントは次の3つ

写真撮影は必ず自然光で

ブランドの目指したい方向性に合ったテイストで写真を統一させます。

北嶋さんの場合、自分で撮影、レタッチをしています。「コツは、必ず自然光で撮影すること。初心者の方は、日が高くなる前の午前中の窓際で撮影をするのがおすすめです」

ロゴやパッケージを洗練されたものにする

世界観を伝える重要な要素の中で、ロゴやパッケージのデザインが見落とされがちだと言います。

ブランドのコンセプトや価値、世界観を印象とともに顧客に直接伝えることのできる要素。選ぶものによって商品の質まで低く見えてしまうこともあります。

Instagramでの発信

北嶋さんがブランディングで最も重要と話すのが、ビジュアルで伝えられるInstagramで世界観を積極的に発信し続けること。次にポイントを挙げていただきました。

《ブランディングのポイント》 Instagramでは5つに絞る

写真/Canva

Instagramを見ている人は「サムネイル画像のページが素敵かどうかで、フォローするか・しないかを決めます。逆にいうとそこさえ美しくあれば、素敵なブランドに見せることができる」と言います。

そのために北嶋さんがおこなったことは次の5つ。

ビジュアルの統一感は無彩色で

簡単なのは、写真を撮る時の背景を無彩色(白・グレー・黒)にすること。白と決めたら毎回白、グレーなら毎回同じようなグレーなど、色の濃度を毎回統一します。

やってしまいがちなのが、木の机の上などで撮ること。木は茶色なので、商品にも色があるとサムネイルになった時にごちゃつきがちなのでNGです。

撮影はスマホではなくデジカメか一眼

どんなに良い作品でも、スマホで撮るにはかなりのセンスとコツがいります。そこに自信がなければ、どんな人でも大抵は素敵に撮ることができる、デジカメや一眼レフなどで撮影することをお勧めします。クオリティが格段に上がって見えます。

2日に1回は投稿する

文章は短めでも良いので、波に乗るまでは2日に1回を目指します。長年の経験上、投稿頻度が低いと表示されにくくなってしまうためです。

投稿を増やすという意味では、一度に沢山の写真を投稿をしても、流れてしまえば2枚目以降はほぼ見られないため、良い写真ならば小分けにしたほうが効果的です。

ストーリーで露出を増やす

こまめに投稿すればしただけ、フォロワーさんの目に増える頻度が増えます。

テキストに自分の素をだす

作品にはその人の内面が必ず現れます。素敵に見せたいから自分のプライベートな事は多く語りたくない、という方もいますが、お知らせや業務的な商品説明ばかりだとつまらないものです。

人は、人間くさいところや完璧でないところに、共感したり魅力を感じて惹かれます。この人を応援したい、この人が作るものだから買いたいという気持ちにさせてくれます。

ネットショップのメリットは収入とこころの安定

オンラインでの販売をはじめた結果「売り上げが上がりましたし、自信にもつながりました」と言う北嶋さん。

メリットは他にもありました。「特に出産したばかりでイベントへの出展が負担になる今はオンラインでの販売は収入やこころの安定にもつながっています」

場所や時間を選ばず販売ができることや、リアルとオンライン両方で販売することで機会損失を少なくしています。

ネットショップのデメリットはリアル感の共有の難しさ

クラフト市などイベントや展示会でも販売をされる北嶋さんですが、ネットショップを運営するうえでのやりがいは「展示会などとちがって掛け率がないため、売り上げのほとんどが自身に入ってくることです。我が家の場合は夫婦それぞれ作家一本で生活しているため、この点はとても重要で侮れません」と言います。

実物を知ってもらえないこと

一方で困難だったことは、「認知がされない間は商品が売れないこと」「手にとって見たり試着ができない、直接対話して接客ができない分、実物がどんなに素敵でも売れないこと」だったそう。

まず知ってもらうために、クラフト市に2ヶ月に一度応募、出展。そこからギャラリーの展示の誘いを受けリアルの場でお客さんを増やす、Instagramを日々更新するなど、地道に顧客を増やしていきました。

身に付けたときのイメージの共有

さらに「”写真”で自身がつけた姿を想像させられるように整え、”文章”で制作の意図や苦労話などの、魅力となる部分をしっかりと伝える」など、丁寧に伝えることを意識していました。

販売が軌道に乗っている今はだらだらと常に売るのではなく、期間を数日に限定して販売。販売1週間ほど前からInstagramで告知をスタートさせ、作品の写真や動画、制作秘話や思いを丁寧に伝えていきます。「直前にはストーリーでカウントダウンを頻繁にするなどして、気持ちを惹きつけられるよう心がけています」

ネットショップに欠かせないことは「顧客とのコミュニケーション」

北嶋さんがネットショップを運営する上で大切なこととして挙げるのが顧客とのコミュニケーションです。「オンラインではやりとりが希薄になりがちなので、業務的なメールを送るだけではなく、手紙で文通をするような感覚で心の交流をし、親近感を持って貰えることを大切にしています」

デジタルとアナログ両方

メールやメッセージ機能を通じてこまめなやりとりをしているため「リアルの場で初めて会うお客さんでも既に長年の友人のような関係になれることも多い」のだとか。

商品の魅力や感謝を伝えることを積み重ねることが、顧客との長期的な関係づくりにつながっていました。

顧客とのやりとりが作品にも影響するのでしょうか。

需要と自分軸のバランス

「オーダーやお客さんの意見から”こういうものも需要があるんだ”と気づける事は多々あり、それが自分のやりたいこととマッチしていれば取り入れたりもします。ただ、ブランドの軸がブレてしまうため、左右はされないことが大切です」

ブレないことが大事とはいうものの、長く作品を制作したりお店を続けていると方向性や好みが変わることだってあるもの。そんな時には「思い切って舵をきってもいい」と北嶋さんは言います。変わることでファンが離れてしまうようにも思いますが、「丁寧に伝えていけば、新しい自分をよしとしてくれる素敵なお客さんが集まっていき、必ずいい結果につながっていく」のだとご自身の経験を話してくれました。

「このお店の商品を買いたい」「このお店を応援したい」そんな風に長く愛される店になるには、ブランディングによってブランド価値を高めること、コミュニケーションで顧客の信頼を得ることがカギと言えるでしょう。

商品はいいのだけどネットショップが売れないという人は参考にしてみてください。

《D2Cのおすすめの関連記事》

この記事を書いた人

溝部依里子
溝部依里子
京都府出身。大学院終了後、WEB制作会社を経てWEBディレクション業務を経験。出産を機に子育てに専念した後WEB制作を学び直し、現在はWEBデザインを軸に、ディレクション、WEB制作学習サポート、執筆に勤しむ。話すのは下手だが人と話すこと、一緒につくることは好き。自分の目で見て感じ考えて伝えることを大切にしている。

ログインすると、この記事をストックできます。

この記事をシェアする
  • LINEアイコン
  • Twitterアイコン
  • Facebookアイコン