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実際に聞いてみた! 一番たいせつにするべきは「リピート客」女性に人気の「おうちサロン」。廃業率高めでも安定して稼げる人は何をしている?

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自宅で気軽に自分の得意を仕事にできる「おうちサロン」。参入障壁は低いものの、廃業率も高いです。おうちサロンを成功させるコツをうまく行っている人に聞きました!

気軽に立ち上げられる「おうちサロン」。

しかし、新たにできたサロンの6割ほどが1年で閉店するともいわれる厳しい現状があります。ここでは、おうちサロンを安定的に経営していく秘訣「適正料金にする」「顧客層を広げる」「安売りしない」について考えます。

スモールスタートが可能なおうちサロン

自分の好きなことや得意なことを生かして、内容によっては資格をとる必要もなく、かろやかに始められる「おうちサロン」。

自宅(マンション、一軒家)の一部をサロンとして開業することから、おうちサロンのほか「自宅サロン」と呼ばれることも。


ハードルの低さやスモールスタートできるところが注目され、小さなおうちサロンは全国に誕生しています。

検索すると目立つのは、エステやネイル、リラクゼーション、まつげエクステ、整体、マッサージなどの美容・健康ジャンルですが、料理教室やハンドメイド、アートなど、ものづくりに関するおうちサロンも。

おうちサロンのメリット、デメリット

写真/Canva

自宅の一部を使えることから、わざわざサロン用店舗を借りて家賃(テナント料)を払わなくてもいいことをはじめ、メリットの多そうなおうちサロン。

しかし当然ながら、メリットばかりではありません。

おうちサロンの良い点、注意点を見てみましょう。

おうちサロンのメリット1:家賃が経費に

写真/Canva

前出の通り、おうちサロンであればサロン用の家賃は発生しません。それどころか「経費にできる」点はおトクともいえます。

具体的にいうと、個人事業主や法人として登録しておけば、自宅の一部を使ってサロンワークをする場合、家賃の一部を経費として計上することもできるからです。


ただし、おうちサロンとして使おうとしている物件の契約が「居住用」となっている場合、「事業用」として利用することはできません。

おうちサロンのメリット2:光熱費が経費に

メリット1と関連しますが、水道や電気、Wi-Fiなどをはじめ、自宅にあるさまざまなリソースを使える点で、サロン運営にかかる初期費用や固定費を大幅に抑えることができます。

おうちサロンのメリット3:特化したサービス提供

一般的に、おうちサロンは店舗型のように複数の部屋を持つわけではありません。

そのため、とくに美容・健康系のおうちサロンの場合、一度の施術で迎えられるのはお客さま1組です。


お客さまにとって完全個室のプライベートな空間を提供できる点で、「ほかのお客さまと会いたくない」「ひとりで静かな時間を過ごしたい」と考える方には重宝されるといえます。

おうちサロンのデメリット1:自宅と仕事場が一緒

写真/Canva

自宅と仕事場が一緒という点で、オンオフの切り替えが難しかったり、意識的にスイッチングしなければいけなかったりすることが挙げられます。


また、急に入った予約を受け入れる場合、急いで片づけて自宅→おうちサロンへと変身させる必要もあるでしょう。

「在宅ワークに慣れている」「出勤時間がなくて時短になっていい」なんて方は、自宅兼仕事場をむしろ好もしいと感じるかもしれません。

おうちサロンのデメリット2:住所公開のリスク

サロンの公式サイトやSNS、集客媒体などに、おうちサロンの詳細な住所を公開する必要はありません。

ただし、住所の一部までは公開したり、マンションの場合はお客さまに部屋番号まで伝えたりといった対応はすることになります。


特定の人に自宅住所やプライベートが知られるリスクを踏まえ、私的な情報を出すのは控えめにするなど、対策をしておく必要はあるでしょう。

廃業率は1年で60%、3年で90%

写真/Canva

注意点を見て「大変そう」と感じた方もいるかもしれませんが、店舗を借りてサロンを始めるよりも参入障壁がはるかに低く、チャレンジしやすいと考えられるおうちサロン。

その反面、廃業率は高いです。


開業1年以内に閉店するサロンは60%、3年以内だと90%、10年以内では95%といわれています。

このデータは美容室やネイルサロン、エステサロンなど、あらゆる美容・健康系サロンの廃業率で、おうちサロン・店舗型サロンなどすべての形態を含んでいます。


エステサロンに限ったデータを紹介すると、東京商工リサーチの2019年「エステティック業倒産動向」調査によると、同年のエステティック業の倒産は73件(前年51件)に達し、2019年時点では最多記録を更新しました。

同調査では、経験・資金力に乏しい若者がエステ関連で起業するケースが多く、零細規模かつ個人経営の倒産(前年23件→2019年は35件)が倒産件数を押し上げる要因のひとつと分析されています。

負債総額も1億円未満が93.1%を占めるなど、小・零細規模の販売不振による倒産が際立っているといいます。


資金が潤沢とはいえないおうちサロンの経営が立ち行かなくなり、クローズしてしまうのは自然の流れといえるでしょう。

「価格設定」のミスが命取り?

閉店理由はいろいろありますが、特に意欲を持って始めたにもかかわらず、閉めざるを得ないおうちサロンの多くは「経営不振から事業を断念せざるを得なくなった」と考えられます。

損益分岐点の見誤り:売上げが立たないのに過剰な投資
集客力のなさ:マーケティングが上手くいかず集客ができない
顧客管理の不徹底:顧客が定着しない

などはわかりやすい例ですが、そうなる以前に資金面で行き詰まるに至った根本的な理由があります。


そのひとつを「価格設定のミス」と語るのは、おうちサロン・店舗型サロンに関わらず、自分で小さいサロンを始めた人やこれからサロンを始めたい人向けに書かれた『最新版 お客様がずっと通いたくなる小さなサロンのつくり方』(以下、ちいサロ)著者の向井邦雄さんです。

なぜ「安売りしてはいけない」のか?

サロンを始めるほとんどの人が「安価な方がお客さまが入りやすい」「技術に自信がない」「お金儲けはよくないこと」といった思い込みを持ち、適正価格よりも安く設定していると向井さんは話します。

本当はその金額の金額の1.2〜2倍にしてもいい、ともいいます。
どうして価格を高く設定しておくべきなのか? その理由は「後になって値上げするのはかなり難しい」から。極端な例ですが、通っているサロンに行ってメニュー価格が前月の倍になっていたら「えっ……!?」となってしまいませんか?

サロンを経営する向井さん自身も、昔は価格を安くしすぎてしまい、心身に相当な苦労をかけながら、適正な価格に戻していったといいます。

うまくいっているおうちサロンが「やったこと」

写真/Canva

では、うまくいっているおうちサロンのオーナーは、どのようにビジネスモデルを設計しているのでしょうか。価格設定や客単価にフォーカスしてお話を聞いてみました

Step1 100万円貯金
Step2 いざ開業!
Step3 2か月目で赤字
Step4 SNS集客するも予約0人
Step5 集客媒体の利用スタート
Step6 新規顧客獲得、リピート率88%

2022年3月に「おうちサロンIrodori(以下、Irodori)」(福岡県福岡市博多区)を開業したオーナー、セラピストの田篭まりなさんの事例が参考になりそうです。

個人経営のサロンに2年間勤めてリンパドレナージュを学び、インストラクター資格も取得した後、2021年12月にサロンが閉店。いずれは独立をと考えていましたが、勤め先が突然クローズするとは予期しておらず、開業予定が少し早まったといいます。


開業までに独立資金100万円を貯めて、いざスタート! しかし、2ヶ月目で赤字になってしまいました。
友人知人限定公開のInstagramで集客しようとしたものの、そこからの予約件数は0。友人知人という距離の近い存在だからこそ「お金を払う感覚が湧きにくい」「知っている人に身体を見られるのが恥ずかしい」といったことが要因にあったのではと田篭さんは振り返ります。


そこで踏み切ったのが集客媒体への掲載でした。広告予算はひと月数万円かかりますが、5月に「ホットペッパービューティー」に掲載したところ、ひと月で7人の新規顧客を獲得できたのです。

その後、全体(集客媒体・SNS・サイトなど全媒体)ではリピート率が88%、ホットペッパービューティーでクーポンメニューから入ってきた人のリピート率は90%と、高いリピート率を誇っています。5月以降はいい流れができ、以降は黒字化に成功しています。


田篭さんがとても勉強熱心で、新技術を常に学び続け、サロンワークに生かしていることも大きいでしょうが、それ以外にも黒字化・安定化に至る背景には大きく3つの行動がありました。


①適切な料金設定にする
②顧客の“間口”を広くする
③客数を少なくして客単価を上げる


一つひとつ見ていきましょう。

うまくいってるおうちサロンが「やらないこと」

1.安売り競争に参加しない=適正料金の設定

田篭さんのサロン、Irodoriのメニューは3,300円(税込)〜ですが、メインとなるのは13,200〜22,000円(税込)のメニューです。

高単価メニューに限り、初回限定で2,000円程度おトクに体験できるようなクーポンを用意しています。

また、初回来店の2日後にクーポン付きのメールを送っています。2週間以内に来店すると2,000円程度おトクに受けられるというクーポンです。
「お客さまがサロンを再訪するのは壁が高く、2回目に来てくださった方は、3回目、4回目と来店されやすくなるんです」


1ヶ月以内に2回もサロンに通うと、顧客もサロンオーナーも互いに親しみを抱き、3回目につながりやすくなる、というのは確かに想像できます。友人でも相当仲が良い人でないと、月に2回も会わないはずですから。


ただ、Irodoriのメニュー単価は決して安い金額ではありません。だからこそ、金銭的に余裕のある顧客が集まり、初回で気に入ってもらえたらリピートされやすくなり、経営の安定につながります。


あくまで仮の話ですが、1か月に新規顧客7人とリピート顧客10人の場合をシミュレーションしてみます。

1ヶ月に新規顧客が7人いて、3人が11,000円(税込)、4人が15,400円(税込)のクーポン付きメニューの予約をしてきた場合、売上は94,600円に(メニュー金額はIrodoriのものを参考にしています)。


《新規顧客 7人》

単価人数売上げ
11,000円3人33,000円
15,400円4人61,600円
合計94,600円

さらにリピート顧客が10人いて、5人が15,400円(税込み)、5人が22,000円(税込み)のメニューを予約すると合計187,000円の売り上げに。

《リピート顧客 10人》

単価人数売上げ
15,400円5人77,000円
22,000円5人110,000円
合計187,000円

《新規、リピートの合計》
94,600円+187,000円=281,600円

新規とリピートを合計すると281,600円となり、月30万円も目前となりますね。


先の『ちいサロ』でも顧客管理の重要性が書かれ「新規集客よりもリピートしていただくことが大事」と向井さんは強調します。

というのも、新規顧客獲得にかかるコストは、再来店を促すコストの5倍かかるといわれているからです。だからこそ「高単価でリピートしてもらう」ことが、安定したサロン運営のカギになるのです。

2.顧客を限定しない=間口を広げる

落ち着いた空間が男性にも好評なIrodori(写真提供:田篭さん)

おうちサロン・店舗型サロンに関わらず、女性主体で運営するサロンは「女性のみ受け入れ」としているところが多いです。

しかし、Irodoriでは間口を広めて「男性受け入れOK」とし、すべての人を顧客としたことが功を奏しています。
「ホットペッパービューティー内で群を抜いて多く検索されているのは『メンズにおすすめのサロン』です。このデータを見て、身体をケアしたい男性の需要を満たせたら、小規模なサロンでも勝てるのではと考え、男性OKとしました」(田篭さん、以下同)

競合にあたる楽天ビューティでも男性と女性の利用率が5:5ほどになってきている、というのは筆者が楽天の担当者から聞いた情報です。リラクゼーションや美容に関心を持つのは、これまで女性が中心だったと思われますが、今や消費行動は変わり男性もサイトで検索し、予約に至っていることがわかります。


「また、私の前職の経験から、男性はおうちサロンよりも店舗型サロンを選ぶ傾向がありますが、できればひとりのセラピストに施術を担当してもらいたい、と考える方は多いです。おうちサロンでは必ず同じセラピストがつくことになるので、そこを気に入ってくれる男性は通ってくださいます」


田篭さんの言葉から傾向とニーズを正確に見出し、サロンやメニューに落とし込む必要があるとわかります。


とはいえ、中にはサロンや女性セラピストにリスクをもたらす一部の男性がいるのも事実。田篭さんの場合は「1」にあるように適正料金を設定し、分別のある方だけに来ていただくようにしてリスクヘッジをしています。

3.客単価を下げない=客数を減らして単価を上げる

施術中の田篭さん(写真提供:田篭さん)

売上は右肩上がりですが、客数は5月のピークを境に下がっていると話す田篭さん。というのも集客媒体での露出をスタートした5月は、クーポン付きメニューをリーズナブルに展開していたため、集客がしやすかったからです。その後はクーポン付きメニューの価格を上げていきました。


客単価を下げると、目標売上を達成するには多くの顧客を入れなくてはならず、オーナー自身が疲弊してしまいます。また、安さだけを求めて集まる顧客も出てきてしまい、少しでも値上げするとそっぽを向かれてしまう可能性も。


「売上=客数×客単価×来店頻度」なので、客数が減っても客単価が上がって、来店頻度も多くなれば、少人数の顧客であっても目標とする売上に到達できます。

メニュー料金が上がっても来てくれる顧客は、メニューに満足しているだけでなく、サロンの空間や雰囲気を気に入っていたり、オーナー自身の人柄やキャラクターが好きで、応援してくれていたりすることも。


Irodoriのリピート顧客もそのような人が多く、田篭さんが「◯◯さんが今日初めてのお客さまです」と伝えると、「私が一番? それなら何時間でも施術してくれていいわよ」なんておっしゃる方もいるそう。また、クーポンをもらっても「クーポンなんか使わない。まりなさんの取り分が減っちゃうでしょ」と辞退する方もいるそうです。


田篭さんはなぜここまで顧客の心をつかんでいるのでしょうか。前出のように勉強好きで、新技術を常に学んでアップデートし、サロンワークに生かしていることも挙げられますが、顧客からの質問や相談にいつも丁寧に回答したり、顧客の情報を記憶して来店ごとの会話に生かしたりと、ホスピタリティのある対応をしているからだと思われます。

おうちサロン開業、改善に向けて準備しよう

ここまでの話から、これからおうちサロンを開業する人、今運営しているおうちサロンをより良くしたいと考える人が取り組むと良さそうな事柄をまとめてみました。


①おうちサロンのメリット、デメリットを理解して対策する
②安売りしない、適切な料金設定を慎重に考える
③新規顧客を増やすため、顧客の“間口”を広くすることも視野に入れてみる
④客数を少なくしても客単価が上がる仕組みを考える
⑤二度目があれば三度目もあるから「二度目の来店」をしてもらう施策を実施する
⑥サロンオーナーを応援してくれるリピート顧客を増やすため、自分自身を磨く

本来おうちサロンは、自分自身がオーナーとして、裁量を持って物事を判断・決定できて、自分の好きなように運営していける夢のような場所です。


そんな場所を持ち、希望を持ってサロン運営に乗り出すのですから、サロンが安定的に続く方法を考え抜いて、焦らず仕組み化していくことが何よりも重要といえそうです。

この記事を書いた人

園子池田編集者
編集プロダクション「プレスラボ」代表取締役。編集者。2009年楽天入社。2012年ライターとして独立。2016年から4年「DRESS」編集長を務める。相撲とプロレスが好きで、コンテンツ制作に携わることも。2020年2月代表交代に伴い現職。

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